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リリアーナ編
83.マリカ
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翌日。
「お嬢様。お支度のお手伝いに参りました」
泊まらせて貰った王宮の客室に姿を見せたのはマリカだった。
訪ねてきたのがラファエロでなかった事に、リリアーナは落胆を隠せなかった。
「………殿下は今陛下と共に居られますが、お嬢様のお支度が整った所でお越しになるそうですよ」
身支度の手伝いをしながらマリカが微笑むと、リリアーナは少し慌てた。
「そ………そうでしたのね………っ」
ラファエロもマリカも、読心術の心得でもあるのだろうかと思うくらいに、リリアーナの心の動きを察している。
家族や使用人達に『猫被り』と言われる程度には感情を隠すのは得意だと思っていたが、ラファエロとマリカの前ではそれは全く通用しないようだった。
「ですから、申し上げましたでしょう?お嬢様は殿下にとって特別だと………」
ふわりと微笑むと、マリカは何食わぬ顔でリリアーナに化粧を施し、器用な手付きで髪を結い上げていく。
「………ラファエロ様の侍女をなさっているとは思えない位に髪結いも上手ですわね」
何と返答すればいいのか分からず、リリアーナは話題を変えた。
昨日の手当もそうだったが、彼女がかなり有能であることは間違いなかった。
だからこそラファエロの侍女を務めているのだろう。
「お褒めに与り、光栄です。殿下は身の回りの事は殆どご自身でなさるので、普段の私の侍女としての大したことはしていません。ですからお嬢様のお世話が出来て、私も楽しいです」
侍女としての仕事、という言葉にやけに力が入っているように聞こえた。
侍女といえば、リディアも侍女兼護衛としてクラリーチェに付いているのだと聞いた。
「………まさか、あなたも………?」
無駄のない身の熟しや隙のなさ、そして何でも器用にやってのけるマリカが只の侍女であろう筈がない。
「やはり、簡単なヒントを出すだけですぐに気が付かれるのですね」
やはりあの言葉は彼女が、意図的に発したものだったようだ。
「私は、リディアの従姉妹なのです。私の母がコルシーニ伯爵の姉なのですよ」
「道理で雰囲気や容姿が似ている訳ですわね」
漸く疑問が解消し、納得したようにリリアーナは大きく頷いた。
「出来上がりました。………如何ですか?」
促されるままに鏡を見ると、落ち着いた深い緑のドレスを纏った完璧な淑女がそこに佇んでいた。
「素敵………!」
エラのセンスもなかなかだが、それとはまた違った趣の装いに、リリアーナは感嘆の溜息を零すのだった。
「お嬢様。お支度のお手伝いに参りました」
泊まらせて貰った王宮の客室に姿を見せたのはマリカだった。
訪ねてきたのがラファエロでなかった事に、リリアーナは落胆を隠せなかった。
「………殿下は今陛下と共に居られますが、お嬢様のお支度が整った所でお越しになるそうですよ」
身支度の手伝いをしながらマリカが微笑むと、リリアーナは少し慌てた。
「そ………そうでしたのね………っ」
ラファエロもマリカも、読心術の心得でもあるのだろうかと思うくらいに、リリアーナの心の動きを察している。
家族や使用人達に『猫被り』と言われる程度には感情を隠すのは得意だと思っていたが、ラファエロとマリカの前ではそれは全く通用しないようだった。
「ですから、申し上げましたでしょう?お嬢様は殿下にとって特別だと………」
ふわりと微笑むと、マリカは何食わぬ顔でリリアーナに化粧を施し、器用な手付きで髪を結い上げていく。
「………ラファエロ様の侍女をなさっているとは思えない位に髪結いも上手ですわね」
何と返答すればいいのか分からず、リリアーナは話題を変えた。
昨日の手当もそうだったが、彼女がかなり有能であることは間違いなかった。
だからこそラファエロの侍女を務めているのだろう。
「お褒めに与り、光栄です。殿下は身の回りの事は殆どご自身でなさるので、普段の私の侍女としての大したことはしていません。ですからお嬢様のお世話が出来て、私も楽しいです」
侍女としての仕事、という言葉にやけに力が入っているように聞こえた。
侍女といえば、リディアも侍女兼護衛としてクラリーチェに付いているのだと聞いた。
「………まさか、あなたも………?」
無駄のない身の熟しや隙のなさ、そして何でも器用にやってのけるマリカが只の侍女であろう筈がない。
「やはり、簡単なヒントを出すだけですぐに気が付かれるのですね」
やはりあの言葉は彼女が、意図的に発したものだったようだ。
「私は、リディアの従姉妹なのです。私の母がコルシーニ伯爵の姉なのですよ」
「道理で雰囲気や容姿が似ている訳ですわね」
漸く疑問が解消し、納得したようにリリアーナは大きく頷いた。
「出来上がりました。………如何ですか?」
促されるままに鏡を見ると、落ち着いた深い緑のドレスを纏った完璧な淑女がそこに佇んでいた。
「素敵………!」
エラのセンスもなかなかだが、それとはまた違った趣の装いに、リリアーナは感嘆の溜息を零すのだった。
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