黒焔公爵と春の姫〜役立たず聖女の伯爵令嬢が最恐将軍に嫁いだら〜

玉響

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番外編9 護衛騎士の恋心 (6 ドミニク視点)

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黒焔公爵様が奥方様と一緒にいる時はエブリンさんと共に控えている事が多く、自然に彼女との距離は縮まっていった。

「私の知っている騎士様は、どちらかというと無愛想な方が多かったんですよ。でも、ドミニク様は気さくだし、気取っていなくてとても親しみやすいです」
「そう言って貰えると、嬉しいです。俺、平民から剣の腕だけしか能が無いから…………」
「あら、それは立派なことじゃないですか!」

彼女との会話はどうしてこんなにも楽しくて、彼女が俺に向ける笑顔が、きらきらとしていて眩しいんだろう。
気を抜くとついうっとりとエブリンさんを見つめてしまう。

「………でも、討伐に行くことになれば………ドミニク様だって怪我をされたり、するのですよね」
「あ…………それは、まあ仕事ですからね。多少の怪我くらいなら、包帯でも巻いておけば治りますし」

そう言った途端にエブリンさんの表情が曇った気がした。
やはり、貴族の女性にあまり血腥い話を聞かせるのは良くないのか?

「…………ドミニク様が、怪我をされるのは嫌です」

ポツリと落とされたエブリンさんの言葉に、俺は目を瞠った。

「怪我だけではありません。危険な目に遭うのは…………嫌ですわ」

ほんの少し俯いたエブリンさんの表情は悲しさと不安を含んでいるように見えた。
もしかして…………、いや、もしかしなくても、心配してくれているのだろうか?
それに気がついた瞬間、俺は天にも昇る気持ちになった。
だって、エブリンさんが俺のことを心配してくれているんだ。嬉しくない訳がない。
もし、本当に怪我したらエブリンさんが手当したり看病したりしてくれるんだろうか、なんていう不謹慎な考えまで浮かんできてしまう。

「でも、この地に住まう人々の命を守るのが、俺達騎士の仕事ですから」

邪な考えが浮かんだことは隠して、俺はエブリンさんに笑顔を向ける。
それは、エブリンさんによく思われたいとかそういう感情は抜きにした、俺の本心。
流石に黒焔公爵様程の力は持ち合わせていないけれど、それでも俺が戦う事で誰かの幸せを守れたらいいと思って騎士を志したのは事実だ。

すると、エブリンさんは少し驚いたように目を見開き、そしてふわりと微笑んだ。

「………自分の身の危険も顧みず、誰かを助ける為に動けるって、誰にも出来ることではありません。やはり、ドミニク様は凄いですわ」

エブリンさんの、尊敬の念の籠もった視線が向けられると、俺は嬉しいような、気恥ずかしいようなむず痒さを感じて、自分の髪を右手でくしゃくしゃにしながら、照れ隠しの笑顔を浮かべた。
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