婚約破棄から始める真実の愛の見つけ方

本編

第十四話

「それは、つまり男女の契りを結んだということで間違いないか？偽りの言葉は許されないことと思え」

陛下が厳しい顔をなさる。

「………はい。間違いございません」
「そのとおりですぅ」

アーロン様はともかく、ボニータ嬢はそれが意味するところを理解されていないようね。

「処罰は決まった。アーロン・ジャーマンダー並びにボニータ・ビッテルハイム。そなたらを石打の刑に処す」
「そんな！」
「ひ、ひどいですぅ」

石打の刑。それは、滞在を犯した者に対して行われる処刑で、下半身を地面に埋めた状態にした罪人に、大衆が石を投げつけるという極刑。処刑の中では苦痛が大きく、残酷な部類に入りますわね。
確かに姦通罪は我が国を始めとした多くの国で重罪ですけれど。

「アーロン・ジャーマンダー。そなたは婚約者がある身でありながらの不義密通による姦通罪並びに不敬罪・・・。誠に許しがたい行為である。そして、ボニータ・ビッテルハイム。そなたは婚約者こそおらぬが、不特定多数の子息やその使用人との姦通罪、また、エリーゼ・マロウから嫌がらせを受けたとの虚言により、エリーゼ・マロウの名誉を傷付けた侮辱罪により石打の刑が妥当であろう。異議のあるものはいるか？」
「お、お待ち下さい！」

真っ先に声を上げたのはアーロン様だ。

「何故、不敬罪が適用されるのですか！それに刑が重すぎます！」

いや、自分のしでかした事を棚に上げ過ぎですわ。それに不敬罪は当然でしょう。

「ジャーマンダー公爵令息。昨日の今日で、私の事を忘れたとは言わんだろうな？」

かつん、と甲高い靴音が響き、玉座の隣にジェイド・エルカリオン殿下が姿を現した。

「ひっ！」
「黙って聞いていれば………昨日の会場での立ち振舞も最低だったが、今日も中々に酷い話ばかりだったな。全く、そなたらは生きている価値も無い。そう判断したのだよ」

殿下は、表情一つ動かさず、冷たい視線だけをお二人に移す。

「それに、ジャーマンダー公爵令息は何の非も無いエリーゼ嬢に暴力を振るったではないか。理由なき暴力は、神の教えに反する振る舞いではないのか？」

そう言えば、顔の怪我のことは聞かれもしなかったし、話題にも登らなかったから、すっかり忘れていたわ。