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26.面会
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意外な事に、その日の夜にルドヴィクはアリーチェとの時間を確保してくれたという知らせが来た。
「晩餐の後、私がこちらまでお迎えに上がります」
知らせに来てくれたのは、クロードだった。
にこやかな笑顔を浮かべる彼の言葉に、アリーチェは少し驚いた。
「晩餐は………別なのですか?」
「はい。本日は陛下は執務室で召し上がられるので、アリーチェ様もお部屋で晩餐をお召し上がり下さい」
「そう………」
当然今宵も彼と共に晩餐の席に付くと思っていたアリーチェは、思いの外自分ががっかりしていることに気がついた。
ここのところ毎日彼と晩餐を共にしていたせいで、それが当然だと思ってしまっていた事に、羞恥心を抱く。
それほどまでに、ルドヴィクと過ごすことが当たり前になりつつあるというのに、自分は未だに彼を憎み、復讐を成し遂げようと思っている事自体が自分自身でも信じられない。
仮に彼と話をして、やはり彼を許す気にならなかったとしたら、自分は彼を殺す決意をもう一度固めるのだろうか。
アリーチェはクロードと別れ、椅子へと腰掛けると、そんな答えの出ない疑問について延々と悩み続けるのだった。
晩餐を終えたタイミングを見計らっていたかのように、アリーチェの部屋の扉が叩かれ、約束どおりクロードが顔を出した。
「アリーチェ様、お迎えに上がりました」
「………ありがとうございます」
クロードに対してどう接したら良いのか分からずに、アリーチェは丁寧にお辞儀をするとクロードは少したじろいだように見えた。
「………陛下がお待ちです」
優雅な仕草でアリーチェをエスコートする姿は本当に紳士的で、何処か堅苦しさのあるルドヴィクとは違っていた。
「………陛下とは長い付き合いだと仰っていましたが………どのような仲なのですか?」
「陛下は本当に何も話していないのですね。………私は、陛下とは幼馴染で、共に騎士団に所属していた同僚でもあります。今は騎士団は退団して、陛下の補佐を仰せつかっておりますがね」
「そうだったのですね………」
クロードの返答は意外なものだった。
ルドヴィクは体格からしても、いかにも騎士、といった風の体で、大柄で鍛え上げられた肉体の持ち主だという事が一目で分かるが、クロードはどちらかと言うと線の細い、文官タイプの青年に見えた為、騎士団に所属していたという事自体信じられなかった。
「………後の事は、陛下から直接お聞き下さい」
クロードはにこりと微笑むと、重厚な扉の前で立ち止まる。
そして、扉を叩くと声を掛けた。
「陛下。姫君をお連れしました」
「………ああ」
一切の無駄を省いた返事を確認すると、クロードは扉を開けてアリーチェを中へと通した。
恐る恐る部屋の中に足を踏み入れると、薄闇の中に、ルドヴィクがひっそりと佇んでいるのが目に入った。
「晩餐の後、私がこちらまでお迎えに上がります」
知らせに来てくれたのは、クロードだった。
にこやかな笑顔を浮かべる彼の言葉に、アリーチェは少し驚いた。
「晩餐は………別なのですか?」
「はい。本日は陛下は執務室で召し上がられるので、アリーチェ様もお部屋で晩餐をお召し上がり下さい」
「そう………」
当然今宵も彼と共に晩餐の席に付くと思っていたアリーチェは、思いの外自分ががっかりしていることに気がついた。
ここのところ毎日彼と晩餐を共にしていたせいで、それが当然だと思ってしまっていた事に、羞恥心を抱く。
それほどまでに、ルドヴィクと過ごすことが当たり前になりつつあるというのに、自分は未だに彼を憎み、復讐を成し遂げようと思っている事自体が自分自身でも信じられない。
仮に彼と話をして、やはり彼を許す気にならなかったとしたら、自分は彼を殺す決意をもう一度固めるのだろうか。
アリーチェはクロードと別れ、椅子へと腰掛けると、そんな答えの出ない疑問について延々と悩み続けるのだった。
晩餐を終えたタイミングを見計らっていたかのように、アリーチェの部屋の扉が叩かれ、約束どおりクロードが顔を出した。
「アリーチェ様、お迎えに上がりました」
「………ありがとうございます」
クロードに対してどう接したら良いのか分からずに、アリーチェは丁寧にお辞儀をするとクロードは少したじろいだように見えた。
「………陛下がお待ちです」
優雅な仕草でアリーチェをエスコートする姿は本当に紳士的で、何処か堅苦しさのあるルドヴィクとは違っていた。
「………陛下とは長い付き合いだと仰っていましたが………どのような仲なのですか?」
「陛下は本当に何も話していないのですね。………私は、陛下とは幼馴染で、共に騎士団に所属していた同僚でもあります。今は騎士団は退団して、陛下の補佐を仰せつかっておりますがね」
「そうだったのですね………」
クロードの返答は意外なものだった。
ルドヴィクは体格からしても、いかにも騎士、といった風の体で、大柄で鍛え上げられた肉体の持ち主だという事が一目で分かるが、クロードはどちらかと言うと線の細い、文官タイプの青年に見えた為、騎士団に所属していたという事自体信じられなかった。
「………後の事は、陛下から直接お聞き下さい」
クロードはにこりと微笑むと、重厚な扉の前で立ち止まる。
そして、扉を叩くと声を掛けた。
「陛下。姫君をお連れしました」
「………ああ」
一切の無駄を省いた返事を確認すると、クロードは扉を開けてアリーチェを中へと通した。
恐る恐る部屋の中に足を踏み入れると、薄闇の中に、ルドヴィクがひっそりと佇んでいるのが目に入った。
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