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182.首飾りの真実

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「………その首飾りが、何かの手掛かりになるのですか?」

いくら魔石の首飾りとは言っても、ティルゲルやスザンナが使っていた物と同じような、姿を変えられる魔石という認識しかなかったアリーチェは、素直に疑問を口にする。
するとルドヴィクは、セヴランに剣の切っ先を突きつけたまま、再びゆっくりと頷いた。

「ああ。………これは、特別な魔石なんだ。普通の魔石の何千倍もの力を秘めた純度の高いもので、一粒で何種類もの魔法を使うことができる。………例えば、他の魔石の効果を打ち消したり、身につけている人間の身に起こった出来事を記録し、幻影として再現したりすることも出来る。………この意味が、分かるだろう?」

冷たく光る隻眼が皮肉げな色を含んで細められる。
すると、セヴランの灰色の瞳はそれとは正反対に、大きく見開かれた。

「ば、莫迦な………っ!そのような事が出来るはずがない!嘘を吐くな!!あり得ない!私は信じないぞ!」

まるで人格さえも壊れてしまったかのように矢継ぎ早にセヴランは喚き立てる。

「そうだ…………!それは私を動揺させるための嘘だな?!おい、そうなんだろう?!」

自分自身を納得させるように、ルドヴィクに近づくと、喉仏が上下する度に白銀の刃がセヴランに触れ、傷ついた皮膚から一筋の血が首を伝い落ちていく。

「嘘か真か、実際に確かめれば分かるだろう?」

口元だけを歪め、ルドヴィクが笑みを浮かべると、セヴランはびくりと肩を揺らした。
しかしルドヴィクはそんなセヴランには目もくれず、アリーチェの方を向くと気遣わしげな表情を浮かべる。

「アリーチェ姫。………クスター城の東の塔での出来事を見るのは辛いだろう。私が合図を出すまで、後ろを向いて、耳を塞いでいてくれ」

思いもよらない提案に、アリーチェは思い切り瞠目した。
このような場でも、アリーチェの心が傷つかないように配慮してくれるルドヴィクの優しさに、胸がじわりと熱くなっていくのを感じた。
だがアリーチェはにっこりと微笑むと、ルドヴィクの提案に首を振った。

「お気遣い頂きありがとうございます。………ですが、これはわたくしの問題でもありますから、最後まできちんと見届けたいのです」

僅かに伏せられたアリーチェの虹色の瞳には、強い決意が浮かんでいた。
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