14 / 38
Police! Police!(警備兵さん、こっちです!) 3
しおりを挟む
市場からかなりの距離を走ってきたので、ラチアとラヴィ、そしてパイラを加えた一行は市場の入口へ向かっていた。
ラチアたちは横に並んで歩いていて、ラヴィは常にラチアを盾にする位置取りでパイラから隠れるようにしている。
さっきのことが相当怖かったらしい。
「あらら、もしかして怖がらせちゃった? ごめんねー。あたしはパイラ。パイラ・ロードグレイ。先輩より五つ年下の十九歳だよ、よろしくね。おチビちゃんのお名前は?」
「ボ、ボク……ラヴィ」
ラヴィはラチアの後ろに隠れながら顔を半分だけ覗かせてビクビクと怯えながら挨拶をした。
「ラヴィ? 覚えやすいね! 音の感じもキュートでラブリーだよ。で、歳はいくつ?」
「四歳……か、五歳。よく知らないけど、多分」
「おっとっと、そうだった。アニオンって実年齢より早く育つんだったね。人間で言うところの八歳か十歳ってとこかぁ。あと五年くらいであたしと同じ年になるんだね!」
『その間に自分も歳をとるって計算が抜けてるだろ……』
ラチアは心の中でそう突っ込んだが、あえて口にしなかった。
彼女は怯えているラヴィの手を強引に掴んで、陽気に「握手、握手ぅー!」と手を振りながら笑っている。
ラヴィがどんなに警戒していても彼女はそんなことなんてちっとも気にせずに、あくまでもマイペースだ。
「先輩。この子首輪をしていないってことは、まだ未登記ですよね? 野良だったんですか?」
「ああ、怪我の治療をしてやったら妙に懐かれてしまってな。たまに寝惚けて俺のベッドの中に潜り込んでくるほどだ」
「先輩のベッドに……」
「……なんだ、その邪推してそうな視線は」
「先輩、この子ってオス? メス? 子供すぎてわかんないんですけど」
「メスだって言ったら?」
「幼女趣味の人なんだって軽蔑しちゃいます」
「オスだって言ったら?」
「ショタ趣味の人なんだって軽蔑しちゃいます」
「俺はどう答えればいいんだ?」
どっちで答えても変態扱いだ。正解が見あたらない。
「『パイラ、愛してるのはキミだけだよ』って、甘い声で囁いてくれるのが正解です」
「…………(フッ)」
「え? なんで黙っちゃうんですか!? てか、今鼻で笑いませんでした!?」
ラヴィは二人の会話を聞きながら『靴を仕入れてくれたおじさんとは別のパターンだけれど、パイラって人もこれはこれでラチアと仲が良いんだろうな』と思った。
「そんなことより仕事のほうはいいのか? そろそろ隊に戻らないと隊長に怒られるだろう」
「泥棒を逮捕しに行ってくるって出てきましたから平気です」
「おい、俺はいつから泥棒になったんだ?」
「あたしと初めて会った時ですね。先輩はあたしの心を瞬時に盗んじゃったんです」
うふふふ。と、身体をくねらせているパイラを見てラチアは半ば以上本気でイラッとした。
「そんな怪しげなモノなんか盗んだ覚えはない」
「それに今ではあたしが隊長なんですよ。あたしを怒ることができるのは連隊長だけです。あたし出世街道まっしぐらなんです!」
「都合の悪いことは聞こえない耳なのも、相変わらずだな」
パイラが今日はずっと自分たちについてくるつもりなのだと分かったラチアは、げんなりと肩を落としてもう一度溜息を吐いた。
この街に入ったばかりの時でさえ人の多さに感動していたラヴィだけれど、市場の中の人混みには「ひわあぁぁ……」と、改めて感嘆の声を漏らした。
二十メルク以上も幅のある道の両側に、商人たちが露店を開いて雑多な商品を売っている。
通り過ぎる買い物客を呼び込もうと大声を張り上げている売り子の声や、値切り合戦でヒートアップした客と店主の怒鳴りあい。
市場の途中途中に設けらている広場では必ず何組かの大道芸人たちがいて、口から火を噴いたり、十本ものナイフでジャグリングをしたりと、買い物客の目を愉しませてくれている。
多くの買い物客で賑わっている市場はお祭りのように活気づいていて、耳のいいラヴィには痛いほどだ。
多種多様なお店がある市場で最もラヴィの興味を惹いたのは、砂糖を練り込んだ小麦粉を油で揚げた油菓子の匂いだった。
鼻をひくひくさせて、口元から、たり……と涎を垂らしていると、
「おチビちゃん、あれが食べたいの? おっし、お近づきのしるしにお姉さんが奢っちゃうよ!」
パイラが気前よく買ってくれた。
ついさっきまでパイラを怖がっていたのに「はい、どーぞ」と熱々の油菓子を渡されたラヴィは、持たされた油菓子とパイラを交互に見て「パイラはいい人だね!」と目を輝かせた。
「もぉもぉ何よ『いい人』だなんて、恥ずかしいわねぇ。もう一回言ってくれる? 先輩の心にも届くくらいに大きな声で」
油菓子一つで簡単にパイラに懐いたラヴィを見て、ラチアはなんだか複雑な気持ちになった。
『くそっ、俺と喋るようになるまで二日かかったくせに……』
市場の熱気と喧噪を楽しみながら(若干一名凹み気味)奥へ奥へと進んでゆくと、やがて他の場所とは明らかに雰囲気の違う広場に出た。
「なに……ここ……?」
ラヴィは一度どこかで感じたことのある黒い意思の流れを感じて体中の毛が逆立った。
その広場に集まった人間たちは、目をギラつかせて広場の奥にある半円状のステージを凝視している。
そこは楽しげな声など無く「五千二百F!」「五千三百F!」と競り値を重ねていく陰々とした雰囲気が凝り固まっていた。
「奴隷市場だよ」
「奴隷市場?」
「市民にとって奴隷は労働力であり財産。富がある人間は多くの奴隷を買って農場での労働力にしたり、私兵として抱えたりしてるの。ここはそんな奴隷を売買するところ」
ラヴィは目の前の光景に息を呑んだ。
競りに集まった人々の肩ほどの高さにあるステージの上には、手錠をかけられた狼タイプのアニオンが引き出されていて、周囲の人間たちが欲に汚れた目で値踏みをしながら買い取りの値段を大声で伝えている。
「六千F以上はいませんかぁー? 狼タイプ六歳のオス。労働力としても、兵士としても使える使い勝手のいいアニオンですよぉ!」
ステージの横で進行役を勤めている人間が商品となっている奴隷の説明を繰り返して買い手たちの様子を見いる。
暫くの間を置いても新しい声が上がらなかったので、トンと木槌を鳴らして落札を宣言した。
「では六千Fで落札。出品番号四十二はアルバンド商会さんに」
会場からパラパラとまばらな拍手が起きて、ステージにいた狼は虎タイプの屈強そうなアニオンに手錠を引かれてステージを降ろされた。
ステージを下ろされた狼の顔にはほとんど感情がなく、目は死んだ魚ように光を失っていた。
「すごく……悲しそう……」
見たままの感想を口にすると横にいたラチアが吐き捨てるように言った。
「当然だ。奴隷は自由を奪われて、命尽きるまで主人のために働かなければならない。そこに生き甲斐を見つけられる奴なんているはずがない」
「ラチア……もしかして、ボクも?」
自分もこれからそうしなきゃいけないのかと考えたラヴィは急に怖くなってきた。
奴隷市場の剣呑な空気も怖かったけれど、そこで値踏みをしている人間たちの目が、自分をこっぴどく殴りつけて追いかけ回してきた村人たちの雰囲気と似ているのが怖かった。
「違う、俺がオマエを売ったりするものか。昨日言っただろ? アニオンが人間の中で暮らすには主人を持たなければならない決まりになっているって」
「……えっと?」
覚えてなかった。可愛く首をかしげるラヴィにラチアがため息をつく。
「ったく……。昨日だけじゃなく、オマエが山を下りてくるたびにいつも言っていただろう。アニオンは奴隷。奴隷は商品。それが人間社会の共通の価値観だと。人里へ下りてくるなと言っていたのはこういう事情があったからだ」
ラヴィは目の前で行われている奴隷売買の光景を見て初めて、奴隷になるということがどういうことかをようやく実感した。
「ボク、あの時捕まってたら、あんなふうに売られてたんだ……」
ラヴィの顔から血の気が失せて真っ青になった。
不安そうに怯えているラヴィを見てラチアはポンとラヴィの頭に手を置く。
「そういうことだ。だが、心配するな。俺はオマエを奴隷扱いなんてしないし、他の誰かの奴隷にするつもりもない。だから今日、オマエの奴隷登記をするんだ」
「ふへ?……どいういこと?」
話の前後が微妙に繋がっていない気がして、ラヴィはもう一度不思議そう首をかしげた。
「えっとねぇ、わかりやすく言うなら、奴隷登記されていないアニオンって、川の中を泳いでいるお魚みたいなものなの。川の中のお魚は誰のモノでもなくって、それを釣り上げた人のモノ。で、おチビちゃんは釣り人がたくさんいる場所でふらふら泳いでいたお魚」
「ボク、お魚じゃないよ?」
「例え話だよ。そう考えるとわかりやすいでしょ?」
「う、うん……」
「先輩はそんなおチビちゃんが危なっかしくって見ていられなくなった。んで、先輩は考えた。『だったら、他の釣り人に釣られる前に自分で釣り上げよう。自分の魚籠に入れておけば、もう他の奴に釣られる心配はない』ってね。でしょ? 先輩」
「まるで今までの俺たちを見ていたかのような口ぶりだな」
「先輩の性格を知っていて、これまでの会話を聞いていたら簡単に想像できましたよ、先輩ってけっこう単純ですからねぇ。うふふふ」
全く悪気のない笑顔で『単純』と言い切るパイラにラチアは顔をしかめたが、自分でもそれが否定できない性格だと分かっているので何も言い返さなかった。
「……ふん、登記申請してくる。それまでラヴィを頼めるか?」
「もちろん。いってらっしゃーい!」
ラチアはラヴィたちをその場に残して、ステージの横にある大きな建物の中に入っていった。
ラチアたちは横に並んで歩いていて、ラヴィは常にラチアを盾にする位置取りでパイラから隠れるようにしている。
さっきのことが相当怖かったらしい。
「あらら、もしかして怖がらせちゃった? ごめんねー。あたしはパイラ。パイラ・ロードグレイ。先輩より五つ年下の十九歳だよ、よろしくね。おチビちゃんのお名前は?」
「ボ、ボク……ラヴィ」
ラヴィはラチアの後ろに隠れながら顔を半分だけ覗かせてビクビクと怯えながら挨拶をした。
「ラヴィ? 覚えやすいね! 音の感じもキュートでラブリーだよ。で、歳はいくつ?」
「四歳……か、五歳。よく知らないけど、多分」
「おっとっと、そうだった。アニオンって実年齢より早く育つんだったね。人間で言うところの八歳か十歳ってとこかぁ。あと五年くらいであたしと同じ年になるんだね!」
『その間に自分も歳をとるって計算が抜けてるだろ……』
ラチアは心の中でそう突っ込んだが、あえて口にしなかった。
彼女は怯えているラヴィの手を強引に掴んで、陽気に「握手、握手ぅー!」と手を振りながら笑っている。
ラヴィがどんなに警戒していても彼女はそんなことなんてちっとも気にせずに、あくまでもマイペースだ。
「先輩。この子首輪をしていないってことは、まだ未登記ですよね? 野良だったんですか?」
「ああ、怪我の治療をしてやったら妙に懐かれてしまってな。たまに寝惚けて俺のベッドの中に潜り込んでくるほどだ」
「先輩のベッドに……」
「……なんだ、その邪推してそうな視線は」
「先輩、この子ってオス? メス? 子供すぎてわかんないんですけど」
「メスだって言ったら?」
「幼女趣味の人なんだって軽蔑しちゃいます」
「オスだって言ったら?」
「ショタ趣味の人なんだって軽蔑しちゃいます」
「俺はどう答えればいいんだ?」
どっちで答えても変態扱いだ。正解が見あたらない。
「『パイラ、愛してるのはキミだけだよ』って、甘い声で囁いてくれるのが正解です」
「…………(フッ)」
「え? なんで黙っちゃうんですか!? てか、今鼻で笑いませんでした!?」
ラヴィは二人の会話を聞きながら『靴を仕入れてくれたおじさんとは別のパターンだけれど、パイラって人もこれはこれでラチアと仲が良いんだろうな』と思った。
「そんなことより仕事のほうはいいのか? そろそろ隊に戻らないと隊長に怒られるだろう」
「泥棒を逮捕しに行ってくるって出てきましたから平気です」
「おい、俺はいつから泥棒になったんだ?」
「あたしと初めて会った時ですね。先輩はあたしの心を瞬時に盗んじゃったんです」
うふふふ。と、身体をくねらせているパイラを見てラチアは半ば以上本気でイラッとした。
「そんな怪しげなモノなんか盗んだ覚えはない」
「それに今ではあたしが隊長なんですよ。あたしを怒ることができるのは連隊長だけです。あたし出世街道まっしぐらなんです!」
「都合の悪いことは聞こえない耳なのも、相変わらずだな」
パイラが今日はずっと自分たちについてくるつもりなのだと分かったラチアは、げんなりと肩を落としてもう一度溜息を吐いた。
この街に入ったばかりの時でさえ人の多さに感動していたラヴィだけれど、市場の中の人混みには「ひわあぁぁ……」と、改めて感嘆の声を漏らした。
二十メルク以上も幅のある道の両側に、商人たちが露店を開いて雑多な商品を売っている。
通り過ぎる買い物客を呼び込もうと大声を張り上げている売り子の声や、値切り合戦でヒートアップした客と店主の怒鳴りあい。
市場の途中途中に設けらている広場では必ず何組かの大道芸人たちがいて、口から火を噴いたり、十本ものナイフでジャグリングをしたりと、買い物客の目を愉しませてくれている。
多くの買い物客で賑わっている市場はお祭りのように活気づいていて、耳のいいラヴィには痛いほどだ。
多種多様なお店がある市場で最もラヴィの興味を惹いたのは、砂糖を練り込んだ小麦粉を油で揚げた油菓子の匂いだった。
鼻をひくひくさせて、口元から、たり……と涎を垂らしていると、
「おチビちゃん、あれが食べたいの? おっし、お近づきのしるしにお姉さんが奢っちゃうよ!」
パイラが気前よく買ってくれた。
ついさっきまでパイラを怖がっていたのに「はい、どーぞ」と熱々の油菓子を渡されたラヴィは、持たされた油菓子とパイラを交互に見て「パイラはいい人だね!」と目を輝かせた。
「もぉもぉ何よ『いい人』だなんて、恥ずかしいわねぇ。もう一回言ってくれる? 先輩の心にも届くくらいに大きな声で」
油菓子一つで簡単にパイラに懐いたラヴィを見て、ラチアはなんだか複雑な気持ちになった。
『くそっ、俺と喋るようになるまで二日かかったくせに……』
市場の熱気と喧噪を楽しみながら(若干一名凹み気味)奥へ奥へと進んでゆくと、やがて他の場所とは明らかに雰囲気の違う広場に出た。
「なに……ここ……?」
ラヴィは一度どこかで感じたことのある黒い意思の流れを感じて体中の毛が逆立った。
その広場に集まった人間たちは、目をギラつかせて広場の奥にある半円状のステージを凝視している。
そこは楽しげな声など無く「五千二百F!」「五千三百F!」と競り値を重ねていく陰々とした雰囲気が凝り固まっていた。
「奴隷市場だよ」
「奴隷市場?」
「市民にとって奴隷は労働力であり財産。富がある人間は多くの奴隷を買って農場での労働力にしたり、私兵として抱えたりしてるの。ここはそんな奴隷を売買するところ」
ラヴィは目の前の光景に息を呑んだ。
競りに集まった人々の肩ほどの高さにあるステージの上には、手錠をかけられた狼タイプのアニオンが引き出されていて、周囲の人間たちが欲に汚れた目で値踏みをしながら買い取りの値段を大声で伝えている。
「六千F以上はいませんかぁー? 狼タイプ六歳のオス。労働力としても、兵士としても使える使い勝手のいいアニオンですよぉ!」
ステージの横で進行役を勤めている人間が商品となっている奴隷の説明を繰り返して買い手たちの様子を見いる。
暫くの間を置いても新しい声が上がらなかったので、トンと木槌を鳴らして落札を宣言した。
「では六千Fで落札。出品番号四十二はアルバンド商会さんに」
会場からパラパラとまばらな拍手が起きて、ステージにいた狼は虎タイプの屈強そうなアニオンに手錠を引かれてステージを降ろされた。
ステージを下ろされた狼の顔にはほとんど感情がなく、目は死んだ魚ように光を失っていた。
「すごく……悲しそう……」
見たままの感想を口にすると横にいたラチアが吐き捨てるように言った。
「当然だ。奴隷は自由を奪われて、命尽きるまで主人のために働かなければならない。そこに生き甲斐を見つけられる奴なんているはずがない」
「ラチア……もしかして、ボクも?」
自分もこれからそうしなきゃいけないのかと考えたラヴィは急に怖くなってきた。
奴隷市場の剣呑な空気も怖かったけれど、そこで値踏みをしている人間たちの目が、自分をこっぴどく殴りつけて追いかけ回してきた村人たちの雰囲気と似ているのが怖かった。
「違う、俺がオマエを売ったりするものか。昨日言っただろ? アニオンが人間の中で暮らすには主人を持たなければならない決まりになっているって」
「……えっと?」
覚えてなかった。可愛く首をかしげるラヴィにラチアがため息をつく。
「ったく……。昨日だけじゃなく、オマエが山を下りてくるたびにいつも言っていただろう。アニオンは奴隷。奴隷は商品。それが人間社会の共通の価値観だと。人里へ下りてくるなと言っていたのはこういう事情があったからだ」
ラヴィは目の前で行われている奴隷売買の光景を見て初めて、奴隷になるということがどういうことかをようやく実感した。
「ボク、あの時捕まってたら、あんなふうに売られてたんだ……」
ラヴィの顔から血の気が失せて真っ青になった。
不安そうに怯えているラヴィを見てラチアはポンとラヴィの頭に手を置く。
「そういうことだ。だが、心配するな。俺はオマエを奴隷扱いなんてしないし、他の誰かの奴隷にするつもりもない。だから今日、オマエの奴隷登記をするんだ」
「ふへ?……どいういこと?」
話の前後が微妙に繋がっていない気がして、ラヴィはもう一度不思議そう首をかしげた。
「えっとねぇ、わかりやすく言うなら、奴隷登記されていないアニオンって、川の中を泳いでいるお魚みたいなものなの。川の中のお魚は誰のモノでもなくって、それを釣り上げた人のモノ。で、おチビちゃんは釣り人がたくさんいる場所でふらふら泳いでいたお魚」
「ボク、お魚じゃないよ?」
「例え話だよ。そう考えるとわかりやすいでしょ?」
「う、うん……」
「先輩はそんなおチビちゃんが危なっかしくって見ていられなくなった。んで、先輩は考えた。『だったら、他の釣り人に釣られる前に自分で釣り上げよう。自分の魚籠に入れておけば、もう他の奴に釣られる心配はない』ってね。でしょ? 先輩」
「まるで今までの俺たちを見ていたかのような口ぶりだな」
「先輩の性格を知っていて、これまでの会話を聞いていたら簡単に想像できましたよ、先輩ってけっこう単純ですからねぇ。うふふふ」
全く悪気のない笑顔で『単純』と言い切るパイラにラチアは顔をしかめたが、自分でもそれが否定できない性格だと分かっているので何も言い返さなかった。
「……ふん、登記申請してくる。それまでラヴィを頼めるか?」
「もちろん。いってらっしゃーい!」
ラチアはラヴィたちをその場に残して、ステージの横にある大きな建物の中に入っていった。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
皆様ありがとう!今日で王妃、やめます!〜十三歳で王妃に、十八歳でこのたび離縁いたしました〜
百門一新
恋愛
セレスティーヌは、たった十三歳という年齢でアルフレッド・デュガウスと結婚し、国王と王妃になった。彼が王になる多には必要な結婚だった――それから五年、ようやく吉報がきた。
「君には苦労をかけた。王妃にする相手が決まった」
ということは……もうつらい仕事はしなくていいのねっ? 夫婦だと偽装する日々からも解放されるのね!?
ありがとうアルフレッド様! さすが私のことよく分かってるわ! セレスティーヌは離縁を大喜びで受け入れてバカンスに出かけたのだが、夫、いや元夫の様子が少しおかしいようで……?
サクッと読める読み切りの短編となっていります!お楽しみいただけましたら嬉しく思います!
※他サイト様にも掲載
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
【12月末日公開終了】これは裏切りですか?
たぬきち25番
恋愛
転生してすぐに婚約破棄をされたアリシアは、嫁ぎ先を失い、実家に戻ることになった。
だが、実家戻ると『婚約破棄をされた娘』と噂され、家族の迷惑になっているので出て行く必要がある。
そんな時、母から住み込みの仕事を紹介されたアリシアは……?
そのご寵愛、理由が分かりません
秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。
幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに——
「君との婚約はなかったことに」
卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り!
え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー!
領地に帰ってスローライフしよう!
そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて——
「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」
……は???
お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!?
刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり——
気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。
でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……?
夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー!
理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。
※毎朝6時、夕方18時更新!
※他のサイトにも掲載しています。
幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない
しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる