めちゃくちゃ過保護な姉たちがチート過ぎて勇者の俺は実戦童貞

マルシラガ

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プロローグ

いっぱい出せたね。えらいぞ♡

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「うわぁ……白いのがいっぱい出てる……」

「一度にこれだけの量が出せるなんて……やっぱり勇者様って、すごい……」

 息苦しさに喘いでいる女の子たちが俺の見事な放出だしっぷりに恍惚とした声を漏らした。

 俺の半径五十メートル内に五十人以上の女の子たちがいるのだが全員びしょ濡れだ。

 これだけ大勢の女の子の中で男が俺だけってシチュエーションはかなり気恥ずかしいのだけれど今はそんなの気にしている場合じゃない。

「勇者様! こっちにも出して! 早く出してぇー!」

 限界に近い状態の子があえぎながら涙目になって俺に懇願こんがんする。

「わかった、今出してやる!」

 俺は握りしめた棒をシゴキ上げて先端から白くて粘性の高いドロドロしたもの思いっきりぶちまけた。

 そんな俺の雄姿に再び周囲から「わぁ!」と称賛の感嘆符が湧き上がる。

「くっ……」

 まずい。今の放出でかなり消耗してしまったのか体に力が入らなくなった。
 軽いくらみを感じて足をもつれさせると俺の背中をやぁーらかいモノが支えてくれた。

「すごいね。いっぱい出せたね。よしよしエライぞぉ」

 肩越しに振り返ると後ろから俺を抱きしめていたシャズナ姉ちゃんがとろけてしまいそうなくらい甘々な笑顔で俺の頭をナデナデしている。

「普通の人なら二、三回出しただけでフニャフニャになって役立たずになるのにイーノッはまだ全然元気ね。ヤれる? まだイケそう? でも辛かったらもう休んでいいのよ? あとはお姉ちゃんに任せて。ね?」

 少しでも隙があれば全力で俺の事を甘やかそうとしてくるシャズナ姉ちゃんの誘惑に俺は一瞬『じゃあもう、これくらいでいいかな……』なんて思ったりしたけど周囲の女の子たちが一人の例外も無くずぶ濡れで、まだ辛そうにしているのを見ると『ダメだ、俺がなんとかしなきゃ!』という使命感が湧き上がってくる。

「大丈夫だよシャズナ姉ちゃん、俺はまだまだヤれるよ! なんたって俺は『勇者』なんだから!」

 先端から糸をひいている棒を再び力強く握りしめて俺は背中に感じるお姉ちゃんの柔らかくて暖かい温もりから離れた。

 俺は頭を上げて空を見上げる。まるで敵を睨むように、いや、違う。敵は『空』そのものだ。もっと詳しく言うなら三日前から降り続いているこの雨雲が俺たちの敵なのだ。

「勇者様ぁー! こっちがもうヤバいです、助けてください!」

 雨で修道服がびしょ濡れになっている修学生が涙目になりながら俺に助けを求めてくる。

 彼女が指し示した堰からは増水した川の水が溢れ始めていた。

 シスターたちが頑張って土嚢どのうを積み上げているけれど間に合いそうにない。

「わかった! 危ないからみんなよけて!」

 俺は愛用の武器『祝福されし棒ブレストロッド』をを握って掌に馴染ませるようにシゴキ上げた。

「我が愛をかてつど原初げんしょの白きしずくよ!」

 俺はロッドに魔力を送り込みながら召喚術式を唱える。

 ごっそり喰われた魔力と引き換えにロッドの先端から飛び出したのは白いスライム。

 白濁したネバネバの液状モンスターは崩れかけた堰に当たって、水に触れた途端に灰色に変色してコンクリートのように固まった。

 俺が今召喚したのは『ホワイトスライム』。

 名前の通りただの白いスライムだが、このスライムは水が弱点で水に触れただけで仮死状態になって硬化する。俺はその性質を利用して堤防の補強を行っていた。

「硬化したスライムは一時間ほどで崩れます! 今のうちに土嚢を積み増して下さい!」
「はい!」

 俺が指示を出している一方、後ろに控えているシャズナ姉ちゃんが敷地の見取図にスライムを射出した場所と数を書きこんでいる。

 水に濡れたホワイトスライムは仮死状態になるけれど完全には死なない。
 水が引いて乾燥すればすぐに体が再生して作物に害を与えるようになるので、そうなる前にスライムの本体と言うべき核を回収しなければならないのだ。

 核の回収だけなら全く危険はないので俺がまたここに来る必要はない。
 核の個数とおおよその位置さえわかっていれば、この修道院のシスターたちが処理してくれるだろう。

 前髪を伝って落ちてくる雨粒を指先で払いながら俺は再び空を見上げた。

 川の上流方向の空にはチラチラと星が見えている。もう向こうは晴れているのだからあと何時間か耐え切れば徐々に水位は下がるはず。

 俺はロッドを握り直して土嚢が崩れそうな場所に次々とスライムをぶち撒いた。

 スライムを召喚するたびに俺の体内から魔力が抜けていくのを実感する。

 疲労が溜まって体が重い。

 少しだけでも休憩したいという欲求に駆られるけれど俺よりもずっと小さな女の子たちでさえ頑張っているのだからここで弱音は吐けないし、吐きたくもない。

 麻袋に土を詰め込んだ土嚢を運んでいるのはこの修道院に寄宿している見習いシスターたちだ。

 一番幼そうな子は十歳くらい。小さな子は土嚢を運ぶ力がないけれど、空の麻袋に土を詰める作業を頑張っている。

 男手があればもっと楽に作業が出来るのだけれど、この修道院には男子禁制の戒律があるのでこのような緊急の力仕事でも全て女性の手だけでやらなければいけない。
 王城から救援として派遣され工兵の一団を院長が鬼の形相で追い返しているほどにその戒律は徹底している。

 何もこんな時にまで男子禁制の決まりを守らなくてもいいのに……。

 俺はそう思うのだが、歴史のある宗教施設だと些細な決まり事を変更するだけでもかなり大変な事らしい。

 そういう俺も本来ならこの修道院の敷地には入れないのだけれど、この修道院の上位教会に在籍しているシャズナ姉ちゃんが、百年以上も前に定められた『魔王の襲来など、努力のみでは回避できない危機が訪れた場合にのみ、神託によって選ばれた勇者に限って当該敷地への立ち入りを許可する』という、ほとんどの人が忘れていた特別条項を持ち出して俺をここに引き入れたのだ。

「勇者様! こっちもお願いします!」
「了解だ!」

 俺は魔力回復ポーションを水代わりのように飲みながらホワイトスライムを召喚しまくった。

 昨日の夕方にここへ連れてこられて以来ずっと召喚しまくり、東の空が白々と明るくなった頃になってようやく川の水位が下がり始めた。

「た、助かった……。もう(魔力が)スッカラカンで粉も出せねぇ……」

 俺はロッドにしがみついた姿勢でズルズルと腰を落として泥化した地面に膝を着いた。お尻がとても冷たいけれど立ち上がる気力が無い。

 そんな俺を柔らかくて甘い匂いのするシャズナ姉ちゃんが背後から再びハグしてきた。

「お疲れさま。偉いねイーノック。こんなにいっぱい白い液をどぴゅどぴゅ出せるなんてお姉ちゃんビックリだよ」
「白い液じゃない……ホワイトスライムだよシャズナ姉ちゃん……」

 そう言って訂正してもシャズナ姉ちゃんは全然聞いてない。

 愛犬を抱きしめるような感じで俺の頭を胸に抱え込んで「んー、よしよしよしよぉーし。良い子だねー」って撫でまくっている。

 シャズナ姉ちゃんが全力を挙げて俺を甘やかそうとするのはいつものことなので今さら注意する気も起きないのだけれど、できればこういうことは家の中だけにしてほしい。

 ほら、さっきまで俺の事を尊敬とか憧れみたいな目で見ていた女の子たちの目が段々と冷ややかなモノになっちゃってるよ。

「え? あの人たち姉弟だよね?」
「ちょっと……普通じゃないよね……」
「もしかして、そういう感じの関係?」

 そんなヒソヒソとした囁きが堰の向こうを流れる水音に混じって聞こえてくる。

 なんでこうなるんだよ……。

 シャズナ姉ちゃんは周囲のシスターたちがドン引きしているのを全く気にしていない。むしろ眼中にない。蕩けるような笑顔で真っ直ぐに俺だけを見つめている。

 愛情過多のシャズナ姉ちゃんによしよしされながら俺はやるせない気持ちでいっぱいになった。

 この修道院の救援に呼ばれたときは不謹慎ながらも俺は少しだけ思ったんだ。

 もしかして男子禁制の女の園で活躍すれば可愛い女の子と特別な関係になれちゃうきっかけみたいなのができちゃったりなんかしちゃったりして?
 ひょんなことからラブラブチュッチュな展開になる可能性だってなきにしもあらず?

 なぁんて、ちょっとだけ浮かれていたのだけど、シャズナ姉ちゃんが普段よりもべったりと俺に引っ付いてきたせいでその期待は儚く消えた。

 今や俺を見る彼女たちの視線の冷たさは度し難い変態を見るときのそれに等しい。

「あれ? イーノック震えている? あぁそっか、ずっと雨に濡れてたせいで体が冷えているんだね。よぉし、今日は久しぶりにお姉ちゃんと一緒にお風呂に入ろうか。うん、そうしよう!」

 魔力を出し切り、体力は限界で、精神的にも疲れきって、疲労の極致にあった俺は抵抗する気力も無くて、シャズナ姉ちゃんに腕を掴まれてズルズルと引きずられながら修道院を出た。



 ちなみに『お姉ちゃんと一緒にお風呂』イベントは全力で断らせてもらった。
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