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フラッグシップの時
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ダウンタウン、ロスアンジェルス……。
ハリウッドから、この高層ビルが乱立するLAの中心を見下ろす時、オレには、大きな海に列柱(コロネード)がいくつも突き立っているように見える。でも実際に、そのビル街の中に足を踏み入れると、そこは意外にも高台に位置しているんだ、ということを実感させられるだろう。
一九二〇年代には、国内の主要銀行が軒並み高層ビルの本社を建設し、ホテルやデパートを完備していった街……。それはニューヨークよりも傑出した、カリフォルニアらしさのあるメトロポリタンだった。鉄道も整備され、ダウンタウン東にユニオンステーションが建てられる。西海岸と東海岸が、アムトラックによって結ばれた瞬間だ。
けれど、それまでダウンタウン、ロスアンジェルスのバンカーヒルに豪華な邸宅を建て、金融街を牛耳っていた人たちの生活は、車の発展とともに変化をとげることになった。
第二次世界大戦後、整備の進んでいく高速道路は、富裕層を郊外へと移動させる。銀行本社も転移せざるをえなくなってくる。そんな風に一時期低迷したダウンタウンは、車で訪れ車で去る街へと化していった。つまり人びとは、必要最低限以外の時をここで過ごさなくなってしまったわけだ。
だがスローダウンはしても、その発展は止まることはない。そして近年の再開発計画が、まず不動産業者がダウンタウンに大金を投入して、居住空間を整えることから始まった。レストラン街が作られ、公園や美術館もひとつひとつリニューアルされている。
ここウォルト・ディズニー・コンサートホールは、その中でも圧倒的に群を抜いた「凌駕(りょうが)の極みに位置するプロジェクト」と言っていいだろう。ダウンタウン、バンカーヒルの頂上に座する、まるで帆を張った船……。船上いっぱいに張られた帆は水に濡れたように銀色に輝く。ここから音が生まれ、風をはらみ、パシフィック・オーシャンへ向けて漕ぎ出して行く。
建築家フランク・ゲーリーの創り出したコンサートホールのフォルムを、人びとはセイリング・シップと評し、また波(ウェーブ)のようにも見えると言う。
はじめてフランク・ゲーリーが設計図を書いたのは、とあるレストランだった。ペーパー・ナプキンにさらさらと、落書きみたいに描いたデッサン画、――それを自分の方に差し出されたスタッフには、どうみても帆船そのものにしか見えなかった、と後で証言している。
この日オレは……、三階の屋上庭園(ルーフトップ・ガーデン)で、そびえる銀の帆に覆われながら、たった一人その風を感じていた。
入り口を彩るのは、バラの花びらの表面を静かにたわむれ流れる水……。多額の寄付をしたリリアン・ディズニー夫人に捧げられ、「リリーのためのバラ」と名付けられたオブジェは、白と青のモザイクで覆われたバラの形の噴水だ。
その横を通り過ぎ、奥の優雅に弧を描くカーヴを曲がる……。と、鳥のさえずりさえ聞こえてくるほどの静けさに包まれる。ここが都会のど真ん中で、高層ビルの群れがハイウェイの向こうに佇んでいることが信じられないような、癒される場所……。
秋にはピスターシュの葉が黄色からピンクに色づき、今、一月の庭には甘いバターの香りをしたフレグランスが遠慮がちにオレの鼻をくすぐっている。この香気の出どころを突き止めれば、それは花びらの縁を縮らせた白いアイリスから運ばれてくると気づくだろう。やがて冬が過ぎると、ピンクのトランペット・フラワーが、春の訪れを告げようとファンファーレを鳴らしにやって来るはずだ。
オレはそれより一足先に、勝利のラッパを響かせる。
ヴェネツィア・カルネヴァーレ・コンクールの最終決戦日、一月二十六日。合衆国全土から、勝ち残ったトランペット演奏者たちが、このウォルト・ディズニー・コンサートホールに集い、チューニングをしている時、屋上庭園に佇んでいたのはオレ一人だけ……。だと思っていたんだ、その音を聞くまでは。
「シャーリーン」
ヒールの音に振り向くと、庭を彩るもう一つの花がそこに立っていた。
「来てくれたんだ?」
でもこの時間って、なんか大切な授業があったんじゃなかったっけ?
「うん、来ちゃった」
いつものジーンズ姿とは全然違う。オレのスーツに合わせたのか、ドレッシーなシフォンのワンピース――コーラル・オレンジをしたドレス――の上に薄手のコートを身にまとい、ハイヒールを履いていた。
「ブルインカード(学生証)を見せてあなたの応援に来たって言ったら、中に入れてくれたの。ちょうどアンドレイニ先生もロビーにいらして、セキュリティの人に許可をもらってくださったから」
そう答えつつも、彼女はまだ銀色の壁と壁の間の細い隙間に立ち止まっていた。
「こっち来ないの?」
「集中の妨げにならない?」
「ならないよ。別に」
オレが腕を差し伸べると、彼女はしばし睫毛を伏せていた後、こっちをまっすぐ見て緊張のため息を漏らした。これじゃどっちが今日の演奏者かわからないよ。唇を噛んだ彼女を見ていると、オレは自然に笑みがこぼれてくる。
シャーリーンが歩いてくるのをじっと見つめていた。細いヒールの音を響かせながら、ゆっくり近づいてくる。不思議だ。この湾曲した壁に挟まれていると、音はこんなにも共鳴するのに、彼女がこの通路の入り口にくるまでは全く聞こえなかった。
腕を伸ばしてシャーリーンをつかまえる。や……わらかい。別に繋ぐつもりはなかったんだけど、思わず触れてしまった彼女の手……、ちっちゃくて、それなのにしなやかな感触。
あれ、オレってシャーリーンの手を握ったの初めてじゃないよね? だけど……なんか、記憶を塗り替えられていくような気がする。どうやらオレは、思ったよりも緊張していたらしい。でもその張り詰めた気持ちは、彼女の手と触れ合っている指先から、しだいに溶けていった。
シャーリーンの手を引いて歩き出した。頭上に押し迫るスチール壁のカーヴに沿って歩くと、階段の前に出た。一番上までのぼりきる。そこには、建物の端にあるのは、テラスだ。それでも銀の帆の最も高いところには全然届かないけれど、ダウンタウンのビル群が向こうに突き立っているのが見渡せる。そのずっとずっと先にあるのは、ハリウッドの丘――マルホランド・ドライブの南側だ。
風景よりももっと感動的なのは、すぐ横と後ろにそびえ立つシルバー・スチールの壁の表面に空や太陽が反射して、自分が空に浮かんでいるのか、それともまだ地上なのか……一体どこにいるのかわからなくなってくることだ。銀色の外壁上に写ったものは、遠くの飛行機雲さえ、まるで手でつかめるように思えてくるんだ。
「聞こえる?」
オレのささやきに、彼女は頷いた。
「うん、聞こえる」
目を閉じてると、自然の中に、体が調和していく……。
「初めて君にあった時、とても手の届かない人だと思ってた」
「あ、私も……」
君もって……ほんとに!?
そんなこと言われてなんか夢みたいだけど、たとえ無理かもしれなくても、諦めずにトライしてみるもんだね。ほんと挑戦しなくちゃ、結果はわからない。
その後しばらく二人は、何も話さず、ただ風を感じていた。
いつまでも……、ずっと……、永遠に……、このまま風に乗っていたいけど、そろそろ時間だ。先生が心配する前に戻らなくちゃ。もう戦いは、この建物に足を踏み入れた時からとっくに始まってる。ライバルと競い合う日でもあるが、自分の弱さにどう向き合ってパフォーマンスを成し遂げるか、オレにはむしろそっちのほうが真剣な課題だった。
建物の扉を開ける。すると、光り輝く外観に反して驚くほど温かい木の造りの内装が、外から戻ってきたオレたちを心地よく迎えてくれた。滑らかにカーヴした天井まで続く木の壁の流れ、ロビーでさえ音響を考慮したデザイン……。けれど、やがて足を踏み入れるメイン・オーディトリウムこそは、まさに息を飲む空間だ。豊田泰久の設計による音響システムは世界最高と言われ、このホールのどの席にいても、フランク・ゲーリーのデザインを堪能できるように作られている。
このメインホールで最も目を引くのは、木製パイプオルガンだろう。六一三四本ものパイプが舞台の上から天井に向けてランダムに突き抜けている。人はこれを「フレンチ・フライ」と呼ぶ。もちろんスーパーサイズのね。
会場にはもう参加者たちがいて、それぞれチューニングをしていた。ここには関係者たちが百人くらいいるだけだ。でもニューヨークやシカゴからも集まってきてる競演者(コンペティター)たちは、この二二六五席のシートが、すべて埋まっている時よりも緊張しているような、そんな張りつめた呼吸が伝わってきた。トランペット・プレイヤーは全部で十二人、オレはその8番目の演奏者。
待っているのは実はそれほど嫌いじゃない。もちろんこの順番はくじ引きで決めたんだけど、どんなコンペティションでもたいてい、シードされているパフォーマーは最後のほうに順番が回ってくる。でもあんまり最後に近くても意味がないんだ。何しろ今回は、難関とされる曲目を選んだ。アンドレイニ先生と真剣に取り組んできたコンチェルトの演奏が成功すれば、オレより後に演奏する人たちが威圧感で影響を受けるかもしれない。競合者たちと精神的な駆け引きをすることは、演奏家にとってものすごく重要なことなんだ。これはコンペティションだから、ライバルを抑止する。けれども自分は、他人の音に恐れてはならない。自分の演奏で練習の時の、いやそれ以上の最高のパフォーマンスを見せる――今日のオレはそう照準を定めている。だから音楽家には、強い鋼の精神が必要とされるんだ。
他の生徒たちは、音楽院の先生や家族と席に座っていたけど、うちの両親は仕事があって来られなくて「モネのトランペットがあなたのおまもり」とか母さんに言われ、オレは先生とシャーリーンと一緒に客席に座っていた。
偶然にもこれが、他の生徒たちから注目されていた原因だった。
カリフォルニア州の参加者も他にいたことはいたんだけどLAではオレ一人だけ。よその州から飛行機でやってくるのにガールフレンドもしくはボーイフレンドを連れてくる奴なんて、もちろん誰もいなかった。
しかも隣にいるのがハニーブロンドの可愛い子だったせいで、オレたちに時どきチラチラ視線が向けられていた。いやさすがに、シャーリーンをガン見してくる奴まではいなかったけど。親とかじゃなくて友達と来ていることが、ちょっと大人っぽく見られてたのは間違いない。だってどう見てもオレたち兄妹には、見えないからさ。
ヴェネツィアのカルネヴァーレに出演する演奏者を選ぶコンクールだったから、曲目に「ヴェニスの謝肉祭、カルネヴァレ・ド・ヴェネツィア」を選曲した生徒も何人かいた。 順番が近づいてきたオレは、ウォーミング・アップのために、プラクティス・ルームへ向かった。やがて舞台の袖で出番を待つ。中央に置かれたグランドピアノの横で、7番目のパフォーマーがたった今演奏を終えたところだった。
審査員たちが小声で話し合っている。前奏者が評価されているこの時間は、次のパフォーマーにとって最も緊張する時間だ。オレは静かに目を閉じて、全身に神経を行き渡らせる。髪の毛にまでそれを浸透させ、着ている服の感触を覚え、足が大地についているのを意識する。さっき庭園で風を感じたように。そうすることによって、集中して自分だけの世界に入っていけるから。
やがてマイクを通して、オレの名前が会場に響き渡った。観客がいないのに、不思議に隅々まで反響している。
「8番、キャメロン・コールドウエル、ユニバーシティ・オブ・カリフォルニア、ロスアンジェルス」
ゆっくり舞台中央まで進む。
木製の波打つ天井……、壁……、そしてホールを構成する客席までも、ここは音楽家が自分の演奏に自信を持つことができるよう、最良の音響効果を研究されて作られたホールだ。トランペットを構えたオレが全身で読み取ったのは、目の前にある木も壁も金属も、そして観客でさえも、ホールを構成するすべてのものからの、温かい歓迎だった。
トマゾ・アルビノーニのトランペット・コンチェルト。
ピアノ伴奏に溶け込むように流れ出したオレのトランペットの音は、柔らかく色を帯びた。
ヴェネツィアの水の音……。
水はゆっくりと闇を泳ぎ始めた。光を受けて水は動き出す。揺れながら静かに、たゆとう。
――そこで音は、意思を手に入れた。
光が……水を千の粒にちぎる。
待って! それは水に反射して映った虚像、本物はこっちだ。
ガラスが飛び散るように、音はちぎれた粒子を突き破る。
その瞬間を、つかまえた!
オレの息を帯びたとたん、音は共鳴して……、ああきっと、今ならできる。今だからできる。
カデンツァ……、指が、指が動いてる! 楽器は今、オレの体の一部になった!
ただひとつの無駄もなく、……そして、緩やかに。
フラッグシップが、銀色に濡れた帆で……、アドリア海に漕ぎいだす。
そして訪れた静寂――
演奏を終え、現実の世界に引き戻されたオレは、そこにいた人びとの熱い拍手を聞いた。
前髪をかきあげる。挑んだことをやり遂げたオレの目は、アンドレイニ先生の躍動感にあふれた嬉しそうな瞳とぶつかった。舞台からは観客席の隅まで、シャーリーンの涙で潤んだ青い目や紅潮した顔までも、とてもよく見えた。
最後の演奏者が出番を終え午後の発表を待ってる間、オレとシャーリーンは、昼食をとりにイン・アンド・アウト・バーガーに来ていた。In-N-Outっていう表記だから「イン・ネン・ァウト」みたいなリエゾンした発音。あのコンサートホールのランダムに配置された木製パイプオルガンを見ていたら、なんとなくフレンチ・フライが食べたくなったんだ。
フライドポテトもおいしいけど、なんといってもここのグリルド・オニオン・バーガーにかなうものはない。厚く輪切りにした玉ねぎを、両面カラメル色にグリルしたものをはさんでくれるんだ。甘くてジューシーな玉ねぎの味が、口いっぱいにはじけ飛ぶ。ほんとたまらない、カリフォルニア限定の味。だって、このIn-N-Outは、他の州にはないんだよね。
「午後は結果発表だけだから、食べ終わったら君を学校へ送ってくよ」
「え!」
シャーリーンの表情が固まった。
「せっかく来たんだから、最後まで一緒にいさせて」
「でも君は授業が……」
「だってもう、先生に言っちゃったんだもの。「今日は欠席させてください」って……、お願い」
青い瞳が一段と深みを増し、なんか涙で揺れそうなくらいうるうるさせて見上げてくる。そんな顔でお願いされたら、断ることができる男なんていないよ。ほんと女の子ってエンジェル……、いや心を操るデビルなんだよ。
オレは溜息をついた。
「ったく、いけない子だな」
手を伸ばして、金色の髪の毛をくしゃくしゃする。彼女の顔に緩やかな笑みが、にじむように広がっていく。頬を染めた少女は、あまりにも可憐だった。
「パパのお迎えは何時?」
「午後五時半」
「じゃ、それまでには必ずキャンパスに送り届けるから」
「ありがとう」
「いや、ありがたいのはオレのほうだよ。君が来てくれたおかげで、ずいぶん心の支えになった」
きっと君の前では、落ち着いた大人の男でいたいって無意識にそう思ってるんだろうね、シャーリーン。
タイミングのいいDing音は、ダニエルからのメッセージだった。
『おはよう、キャメロン君、コンテスト終わったら、五人でサンタモニカにでも行こうぜ。さて今回の君の指令だが、シャーリーンを誘うこと。例によって、君、もしくは君のメンバーが捕えられ、あるいは殺されても、当局は一切関知しないからそのつもりで。 なおこのメッセージは五秒後に自動的に消滅する。本日のパフォーマンス、幸運を祈る』
オレのスマホからミッション・インポッシブルみたいに煙が出てくるんじゃないかと心配で、しばらくじっと見ていたよ。
「でも五人って、だれ?」
「あ、あのね……」
『Pouf!』
ほんとに五秒後に煙の音が、ルームメイトから送られてきたぜ。
「……サラがキャンパスでアスリートの女の子に出会ってね。すっごくかっこいいお姉さんで意気投合したの。そしたら偶然にもそのローレインて人は、ダニエルのガールフレンドだったんだって」
「え、ええっ! そうなの? そういうことなの?」
「お互い、全然違うところに憧れるんですって。最近ではサラとローレインはすっかり仲良しで、ダニエルより頻繁に会ってる」
これには驚かされたよ、まったく。
ダニエルってば、ミッションを送ってくるとか、すげえあいつらしい。
とにかく、ローレインもサラも、女の子たちのうち誰か一人でも傷つけたらただじゃおかないぞって、ずっと、ずっと思ってたのに……。それを一体どういう風に、あいつに伝えたらいいんだろうというオレの悩みが、自然に解決してしまったじゃないか。さっきの煙の音とともに消え去ったぜ。ふう……。
午後のコンサートホールは、一段と緊張に満ちていた。
審査委員長の女性が、マイクを手に舞台の中央へ進んでいく。
しん……、と水を打ったように静まり返る空気……。
「第二十五回ヴェネツィア・カルナヴァーレ・コンクールの優勝者は……」
ごくり、とオレは息を飲み込んだ。
「キャメロン・コールドウエル、ユニバーシティ・オブ・カリフォルニア・ロスアンジェルス!」
わあっと歓声が上がり、嵐のような拍手が起こった。シャーリーンなんか、もう今にも泣き出しそうな顔で喜んでいる。
「アンドレイニ先生……」
「コングラチュラシオーニ、キャメロン!」
先生のガシッとした握手は、まだ信じられなくてふわふわしてたオレに「よくやった」ってエールを吹き込んで立ち上がらせてくれた。なんかこんな時でも、イタリア語って「おめでとう」の言葉さえ、音楽みたいに響くんだなって感じたのを覚えてる。
会場にいたのは、審査員や家族たちだけだ。でも、オレには割れんばかりの拍手に聞こえた。まるでこの会場いっぱいに溢れる観客が、声援を送ってくれてるみたいに。
小さなコンクールのためにも照明係はもちろんいて、スポットライトが客席のオレをとらえた。まぶしくきらめいた光に連れられるように、オレは舞台に向かって歩いていく。
それから起こった出来事は、まるで夢を見ているようで、よく覚えていない。たくさんの人とハグをして、もっとたくさんの人と握手を交わした。
ひとつだけしっかりと覚えてるのは、席に戻ってきた時シャーリーンが、ハグしてキスをくれたんだけど、ほんとはほっぺにするつもりだったのに、一瞬くちびるをかすめていったこと。あまりに短い間の出来事だったから、まわりの人は誰も気づかなかったはずだ。
でもオレたち二人は、間違いなく意識していた。だって彼女の体は、ものすごく震えていたんだから。
ハリウッドから、この高層ビルが乱立するLAの中心を見下ろす時、オレには、大きな海に列柱(コロネード)がいくつも突き立っているように見える。でも実際に、そのビル街の中に足を踏み入れると、そこは意外にも高台に位置しているんだ、ということを実感させられるだろう。
一九二〇年代には、国内の主要銀行が軒並み高層ビルの本社を建設し、ホテルやデパートを完備していった街……。それはニューヨークよりも傑出した、カリフォルニアらしさのあるメトロポリタンだった。鉄道も整備され、ダウンタウン東にユニオンステーションが建てられる。西海岸と東海岸が、アムトラックによって結ばれた瞬間だ。
けれど、それまでダウンタウン、ロスアンジェルスのバンカーヒルに豪華な邸宅を建て、金融街を牛耳っていた人たちの生活は、車の発展とともに変化をとげることになった。
第二次世界大戦後、整備の進んでいく高速道路は、富裕層を郊外へと移動させる。銀行本社も転移せざるをえなくなってくる。そんな風に一時期低迷したダウンタウンは、車で訪れ車で去る街へと化していった。つまり人びとは、必要最低限以外の時をここで過ごさなくなってしまったわけだ。
だがスローダウンはしても、その発展は止まることはない。そして近年の再開発計画が、まず不動産業者がダウンタウンに大金を投入して、居住空間を整えることから始まった。レストラン街が作られ、公園や美術館もひとつひとつリニューアルされている。
ここウォルト・ディズニー・コンサートホールは、その中でも圧倒的に群を抜いた「凌駕(りょうが)の極みに位置するプロジェクト」と言っていいだろう。ダウンタウン、バンカーヒルの頂上に座する、まるで帆を張った船……。船上いっぱいに張られた帆は水に濡れたように銀色に輝く。ここから音が生まれ、風をはらみ、パシフィック・オーシャンへ向けて漕ぎ出して行く。
建築家フランク・ゲーリーの創り出したコンサートホールのフォルムを、人びとはセイリング・シップと評し、また波(ウェーブ)のようにも見えると言う。
はじめてフランク・ゲーリーが設計図を書いたのは、とあるレストランだった。ペーパー・ナプキンにさらさらと、落書きみたいに描いたデッサン画、――それを自分の方に差し出されたスタッフには、どうみても帆船そのものにしか見えなかった、と後で証言している。
この日オレは……、三階の屋上庭園(ルーフトップ・ガーデン)で、そびえる銀の帆に覆われながら、たった一人その風を感じていた。
入り口を彩るのは、バラの花びらの表面を静かにたわむれ流れる水……。多額の寄付をしたリリアン・ディズニー夫人に捧げられ、「リリーのためのバラ」と名付けられたオブジェは、白と青のモザイクで覆われたバラの形の噴水だ。
その横を通り過ぎ、奥の優雅に弧を描くカーヴを曲がる……。と、鳥のさえずりさえ聞こえてくるほどの静けさに包まれる。ここが都会のど真ん中で、高層ビルの群れがハイウェイの向こうに佇んでいることが信じられないような、癒される場所……。
秋にはピスターシュの葉が黄色からピンクに色づき、今、一月の庭には甘いバターの香りをしたフレグランスが遠慮がちにオレの鼻をくすぐっている。この香気の出どころを突き止めれば、それは花びらの縁を縮らせた白いアイリスから運ばれてくると気づくだろう。やがて冬が過ぎると、ピンクのトランペット・フラワーが、春の訪れを告げようとファンファーレを鳴らしにやって来るはずだ。
オレはそれより一足先に、勝利のラッパを響かせる。
ヴェネツィア・カルネヴァーレ・コンクールの最終決戦日、一月二十六日。合衆国全土から、勝ち残ったトランペット演奏者たちが、このウォルト・ディズニー・コンサートホールに集い、チューニングをしている時、屋上庭園に佇んでいたのはオレ一人だけ……。だと思っていたんだ、その音を聞くまでは。
「シャーリーン」
ヒールの音に振り向くと、庭を彩るもう一つの花がそこに立っていた。
「来てくれたんだ?」
でもこの時間って、なんか大切な授業があったんじゃなかったっけ?
「うん、来ちゃった」
いつものジーンズ姿とは全然違う。オレのスーツに合わせたのか、ドレッシーなシフォンのワンピース――コーラル・オレンジをしたドレス――の上に薄手のコートを身にまとい、ハイヒールを履いていた。
「ブルインカード(学生証)を見せてあなたの応援に来たって言ったら、中に入れてくれたの。ちょうどアンドレイニ先生もロビーにいらして、セキュリティの人に許可をもらってくださったから」
そう答えつつも、彼女はまだ銀色の壁と壁の間の細い隙間に立ち止まっていた。
「こっち来ないの?」
「集中の妨げにならない?」
「ならないよ。別に」
オレが腕を差し伸べると、彼女はしばし睫毛を伏せていた後、こっちをまっすぐ見て緊張のため息を漏らした。これじゃどっちが今日の演奏者かわからないよ。唇を噛んだ彼女を見ていると、オレは自然に笑みがこぼれてくる。
シャーリーンが歩いてくるのをじっと見つめていた。細いヒールの音を響かせながら、ゆっくり近づいてくる。不思議だ。この湾曲した壁に挟まれていると、音はこんなにも共鳴するのに、彼女がこの通路の入り口にくるまでは全く聞こえなかった。
腕を伸ばしてシャーリーンをつかまえる。や……わらかい。別に繋ぐつもりはなかったんだけど、思わず触れてしまった彼女の手……、ちっちゃくて、それなのにしなやかな感触。
あれ、オレってシャーリーンの手を握ったの初めてじゃないよね? だけど……なんか、記憶を塗り替えられていくような気がする。どうやらオレは、思ったよりも緊張していたらしい。でもその張り詰めた気持ちは、彼女の手と触れ合っている指先から、しだいに溶けていった。
シャーリーンの手を引いて歩き出した。頭上に押し迫るスチール壁のカーヴに沿って歩くと、階段の前に出た。一番上までのぼりきる。そこには、建物の端にあるのは、テラスだ。それでも銀の帆の最も高いところには全然届かないけれど、ダウンタウンのビル群が向こうに突き立っているのが見渡せる。そのずっとずっと先にあるのは、ハリウッドの丘――マルホランド・ドライブの南側だ。
風景よりももっと感動的なのは、すぐ横と後ろにそびえ立つシルバー・スチールの壁の表面に空や太陽が反射して、自分が空に浮かんでいるのか、それともまだ地上なのか……一体どこにいるのかわからなくなってくることだ。銀色の外壁上に写ったものは、遠くの飛行機雲さえ、まるで手でつかめるように思えてくるんだ。
「聞こえる?」
オレのささやきに、彼女は頷いた。
「うん、聞こえる」
目を閉じてると、自然の中に、体が調和していく……。
「初めて君にあった時、とても手の届かない人だと思ってた」
「あ、私も……」
君もって……ほんとに!?
そんなこと言われてなんか夢みたいだけど、たとえ無理かもしれなくても、諦めずにトライしてみるもんだね。ほんと挑戦しなくちゃ、結果はわからない。
その後しばらく二人は、何も話さず、ただ風を感じていた。
いつまでも……、ずっと……、永遠に……、このまま風に乗っていたいけど、そろそろ時間だ。先生が心配する前に戻らなくちゃ。もう戦いは、この建物に足を踏み入れた時からとっくに始まってる。ライバルと競い合う日でもあるが、自分の弱さにどう向き合ってパフォーマンスを成し遂げるか、オレにはむしろそっちのほうが真剣な課題だった。
建物の扉を開ける。すると、光り輝く外観に反して驚くほど温かい木の造りの内装が、外から戻ってきたオレたちを心地よく迎えてくれた。滑らかにカーヴした天井まで続く木の壁の流れ、ロビーでさえ音響を考慮したデザイン……。けれど、やがて足を踏み入れるメイン・オーディトリウムこそは、まさに息を飲む空間だ。豊田泰久の設計による音響システムは世界最高と言われ、このホールのどの席にいても、フランク・ゲーリーのデザインを堪能できるように作られている。
このメインホールで最も目を引くのは、木製パイプオルガンだろう。六一三四本ものパイプが舞台の上から天井に向けてランダムに突き抜けている。人はこれを「フレンチ・フライ」と呼ぶ。もちろんスーパーサイズのね。
会場にはもう参加者たちがいて、それぞれチューニングをしていた。ここには関係者たちが百人くらいいるだけだ。でもニューヨークやシカゴからも集まってきてる競演者(コンペティター)たちは、この二二六五席のシートが、すべて埋まっている時よりも緊張しているような、そんな張りつめた呼吸が伝わってきた。トランペット・プレイヤーは全部で十二人、オレはその8番目の演奏者。
待っているのは実はそれほど嫌いじゃない。もちろんこの順番はくじ引きで決めたんだけど、どんなコンペティションでもたいてい、シードされているパフォーマーは最後のほうに順番が回ってくる。でもあんまり最後に近くても意味がないんだ。何しろ今回は、難関とされる曲目を選んだ。アンドレイニ先生と真剣に取り組んできたコンチェルトの演奏が成功すれば、オレより後に演奏する人たちが威圧感で影響を受けるかもしれない。競合者たちと精神的な駆け引きをすることは、演奏家にとってものすごく重要なことなんだ。これはコンペティションだから、ライバルを抑止する。けれども自分は、他人の音に恐れてはならない。自分の演奏で練習の時の、いやそれ以上の最高のパフォーマンスを見せる――今日のオレはそう照準を定めている。だから音楽家には、強い鋼の精神が必要とされるんだ。
他の生徒たちは、音楽院の先生や家族と席に座っていたけど、うちの両親は仕事があって来られなくて「モネのトランペットがあなたのおまもり」とか母さんに言われ、オレは先生とシャーリーンと一緒に客席に座っていた。
偶然にもこれが、他の生徒たちから注目されていた原因だった。
カリフォルニア州の参加者も他にいたことはいたんだけどLAではオレ一人だけ。よその州から飛行機でやってくるのにガールフレンドもしくはボーイフレンドを連れてくる奴なんて、もちろん誰もいなかった。
しかも隣にいるのがハニーブロンドの可愛い子だったせいで、オレたちに時どきチラチラ視線が向けられていた。いやさすがに、シャーリーンをガン見してくる奴まではいなかったけど。親とかじゃなくて友達と来ていることが、ちょっと大人っぽく見られてたのは間違いない。だってどう見てもオレたち兄妹には、見えないからさ。
ヴェネツィアのカルネヴァーレに出演する演奏者を選ぶコンクールだったから、曲目に「ヴェニスの謝肉祭、カルネヴァレ・ド・ヴェネツィア」を選曲した生徒も何人かいた。 順番が近づいてきたオレは、ウォーミング・アップのために、プラクティス・ルームへ向かった。やがて舞台の袖で出番を待つ。中央に置かれたグランドピアノの横で、7番目のパフォーマーがたった今演奏を終えたところだった。
審査員たちが小声で話し合っている。前奏者が評価されているこの時間は、次のパフォーマーにとって最も緊張する時間だ。オレは静かに目を閉じて、全身に神経を行き渡らせる。髪の毛にまでそれを浸透させ、着ている服の感触を覚え、足が大地についているのを意識する。さっき庭園で風を感じたように。そうすることによって、集中して自分だけの世界に入っていけるから。
やがてマイクを通して、オレの名前が会場に響き渡った。観客がいないのに、不思議に隅々まで反響している。
「8番、キャメロン・コールドウエル、ユニバーシティ・オブ・カリフォルニア、ロスアンジェルス」
ゆっくり舞台中央まで進む。
木製の波打つ天井……、壁……、そしてホールを構成する客席までも、ここは音楽家が自分の演奏に自信を持つことができるよう、最良の音響効果を研究されて作られたホールだ。トランペットを構えたオレが全身で読み取ったのは、目の前にある木も壁も金属も、そして観客でさえも、ホールを構成するすべてのものからの、温かい歓迎だった。
トマゾ・アルビノーニのトランペット・コンチェルト。
ピアノ伴奏に溶け込むように流れ出したオレのトランペットの音は、柔らかく色を帯びた。
ヴェネツィアの水の音……。
水はゆっくりと闇を泳ぎ始めた。光を受けて水は動き出す。揺れながら静かに、たゆとう。
――そこで音は、意思を手に入れた。
光が……水を千の粒にちぎる。
待って! それは水に反射して映った虚像、本物はこっちだ。
ガラスが飛び散るように、音はちぎれた粒子を突き破る。
その瞬間を、つかまえた!
オレの息を帯びたとたん、音は共鳴して……、ああきっと、今ならできる。今だからできる。
カデンツァ……、指が、指が動いてる! 楽器は今、オレの体の一部になった!
ただひとつの無駄もなく、……そして、緩やかに。
フラッグシップが、銀色に濡れた帆で……、アドリア海に漕ぎいだす。
そして訪れた静寂――
演奏を終え、現実の世界に引き戻されたオレは、そこにいた人びとの熱い拍手を聞いた。
前髪をかきあげる。挑んだことをやり遂げたオレの目は、アンドレイニ先生の躍動感にあふれた嬉しそうな瞳とぶつかった。舞台からは観客席の隅まで、シャーリーンの涙で潤んだ青い目や紅潮した顔までも、とてもよく見えた。
最後の演奏者が出番を終え午後の発表を待ってる間、オレとシャーリーンは、昼食をとりにイン・アンド・アウト・バーガーに来ていた。In-N-Outっていう表記だから「イン・ネン・ァウト」みたいなリエゾンした発音。あのコンサートホールのランダムに配置された木製パイプオルガンを見ていたら、なんとなくフレンチ・フライが食べたくなったんだ。
フライドポテトもおいしいけど、なんといってもここのグリルド・オニオン・バーガーにかなうものはない。厚く輪切りにした玉ねぎを、両面カラメル色にグリルしたものをはさんでくれるんだ。甘くてジューシーな玉ねぎの味が、口いっぱいにはじけ飛ぶ。ほんとたまらない、カリフォルニア限定の味。だって、このIn-N-Outは、他の州にはないんだよね。
「午後は結果発表だけだから、食べ終わったら君を学校へ送ってくよ」
「え!」
シャーリーンの表情が固まった。
「せっかく来たんだから、最後まで一緒にいさせて」
「でも君は授業が……」
「だってもう、先生に言っちゃったんだもの。「今日は欠席させてください」って……、お願い」
青い瞳が一段と深みを増し、なんか涙で揺れそうなくらいうるうるさせて見上げてくる。そんな顔でお願いされたら、断ることができる男なんていないよ。ほんと女の子ってエンジェル……、いや心を操るデビルなんだよ。
オレは溜息をついた。
「ったく、いけない子だな」
手を伸ばして、金色の髪の毛をくしゃくしゃする。彼女の顔に緩やかな笑みが、にじむように広がっていく。頬を染めた少女は、あまりにも可憐だった。
「パパのお迎えは何時?」
「午後五時半」
「じゃ、それまでには必ずキャンパスに送り届けるから」
「ありがとう」
「いや、ありがたいのはオレのほうだよ。君が来てくれたおかげで、ずいぶん心の支えになった」
きっと君の前では、落ち着いた大人の男でいたいって無意識にそう思ってるんだろうね、シャーリーン。
タイミングのいいDing音は、ダニエルからのメッセージだった。
『おはよう、キャメロン君、コンテスト終わったら、五人でサンタモニカにでも行こうぜ。さて今回の君の指令だが、シャーリーンを誘うこと。例によって、君、もしくは君のメンバーが捕えられ、あるいは殺されても、当局は一切関知しないからそのつもりで。 なおこのメッセージは五秒後に自動的に消滅する。本日のパフォーマンス、幸運を祈る』
オレのスマホからミッション・インポッシブルみたいに煙が出てくるんじゃないかと心配で、しばらくじっと見ていたよ。
「でも五人って、だれ?」
「あ、あのね……」
『Pouf!』
ほんとに五秒後に煙の音が、ルームメイトから送られてきたぜ。
「……サラがキャンパスでアスリートの女の子に出会ってね。すっごくかっこいいお姉さんで意気投合したの。そしたら偶然にもそのローレインて人は、ダニエルのガールフレンドだったんだって」
「え、ええっ! そうなの? そういうことなの?」
「お互い、全然違うところに憧れるんですって。最近ではサラとローレインはすっかり仲良しで、ダニエルより頻繁に会ってる」
これには驚かされたよ、まったく。
ダニエルってば、ミッションを送ってくるとか、すげえあいつらしい。
とにかく、ローレインもサラも、女の子たちのうち誰か一人でも傷つけたらただじゃおかないぞって、ずっと、ずっと思ってたのに……。それを一体どういう風に、あいつに伝えたらいいんだろうというオレの悩みが、自然に解決してしまったじゃないか。さっきの煙の音とともに消え去ったぜ。ふう……。
午後のコンサートホールは、一段と緊張に満ちていた。
審査委員長の女性が、マイクを手に舞台の中央へ進んでいく。
しん……、と水を打ったように静まり返る空気……。
「第二十五回ヴェネツィア・カルナヴァーレ・コンクールの優勝者は……」
ごくり、とオレは息を飲み込んだ。
「キャメロン・コールドウエル、ユニバーシティ・オブ・カリフォルニア・ロスアンジェルス!」
わあっと歓声が上がり、嵐のような拍手が起こった。シャーリーンなんか、もう今にも泣き出しそうな顔で喜んでいる。
「アンドレイニ先生……」
「コングラチュラシオーニ、キャメロン!」
先生のガシッとした握手は、まだ信じられなくてふわふわしてたオレに「よくやった」ってエールを吹き込んで立ち上がらせてくれた。なんかこんな時でも、イタリア語って「おめでとう」の言葉さえ、音楽みたいに響くんだなって感じたのを覚えてる。
会場にいたのは、審査員や家族たちだけだ。でも、オレには割れんばかりの拍手に聞こえた。まるでこの会場いっぱいに溢れる観客が、声援を送ってくれてるみたいに。
小さなコンクールのためにも照明係はもちろんいて、スポットライトが客席のオレをとらえた。まぶしくきらめいた光に連れられるように、オレは舞台に向かって歩いていく。
それから起こった出来事は、まるで夢を見ているようで、よく覚えていない。たくさんの人とハグをして、もっとたくさんの人と握手を交わした。
ひとつだけしっかりと覚えてるのは、席に戻ってきた時シャーリーンが、ハグしてキスをくれたんだけど、ほんとはほっぺにするつもりだったのに、一瞬くちびるをかすめていったこと。あまりに短い間の出来事だったから、まわりの人は誰も気づかなかったはずだ。
でもオレたち二人は、間違いなく意識していた。だって彼女の体は、ものすごく震えていたんだから。
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