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一緒に
しおりを挟む痛い、熱い、苦しい。
頭が真っ白になって、唇から泡が溢れる。
「リイ――――!!」
ルフィスの悲鳴を嗤うように、嗄れた低い声がした。
「闇騎士たちが無様に撒かれましたのでな。
儂が参りました。
おいたの時間はお終いです、ルフィス様」
闇の衣に包まれた老爺が、恭しく膝をつく。
「リイに何をした――!!
今すぐ止めろ!!」
ルフィスの悲鳴に、老爺が笑う。
「いやはや闇騎士を手玉に取るとは、平民の子は恐ろしい。
しかし平民の子なら、魔術の耐性はないでしょう。
ちょっとした拘束魔術です。
これ以上ルフィス様に害が及ばぬように」
「リイを放せ――――!!」
「ルフィス様が、おとなしく、その首を差し出してくださるなら」
皺の唇が、嗤う。
「だ、めだ、ルフィス――――!」
身体を取り巻く紫紺の光に抗うように叫んだリイに、老爺は目を見開いた。
「ほう、まだ喋れるか。
常人ならば、一撃で死ぬのだがのう」
いひひひひ。
嗤う声に、ルフィスは蒼碧の瞳を吊りあげた。
パリリ
ルフィスの周りを、蒼と碧の光が取り巻いて、舞いあがる。
「な、に――!?」
愕然と目を見開く老爺を睨みつけたルフィスの唇から、不思議な旋律と言葉が零れてゆく。
噴きあがる光に、世界が震えた。
「お止めください!
ルフィス様が死んでしまう!」
深夜の森を掻き分け現れた、闇鎧の青年が叫ぶ。
蒼と碧の光に舞い上がる亜麻色の髪で、ルフィスは青年を睨みつけた。
「君も一緒にね。
リイを傷つけた者は皆、死ぬがいい」
ルフィスの中から噴き上がる光が、青年と老爺を絡め取る。
「ぐぁア……!」
「悪魔の子め――!!」
ののしりに、ルフィスは唇の端を上げた。
「どちらが?」
ルフィスの蒼碧の瞳が凍てついた。
「どうせ殺されるなら、お前らを道連れに……!」
「だめだよルフィス――!
一緒に生きるって言った!」
全身に渾身の力を籠めたリイの瞳の中を、蒼銀の光が駆け抜ける。
パァアン――――!
リイを拘束していた紫紺の光が、砕け散った。
「な、何ぃ!?」
茫然とする老爺の腹に容赦なく拳を叩き込み、青年に回し蹴りを喰らわせたリイは、蒼碧の光に包まれたルフィスの手を引く。
「生きよう、ルフィス」
輝く蒼碧の瞳が揺れる。
「リイは……僕が……怖く、ないの……?」
消えてしまいそうな声に、きょとんとしたリイは、熱い頬で笑った。
「ルフィス、かっこいー!
惚れ直した!」
見開かれた蒼碧の瞳が、泣きだした。
「……リイ……っ」
ふるえるちいさな肩を抱きしめる。
「俺、もっともっと強くなって、ルフィスを守るから。
一緒に生きよう、ルフィス」
微笑んだリイは、起きあがる老爺と青年にとりあえず跳び蹴りを喰らわせた。
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