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再会
しおりを挟む光騎士の大切な任務は、お茶くみとお菓子のお供だ。
噛み締めると泣きそうになるから、考えない!
常に気を張って不測の事態に備えるけれど、香り高いお茶を淹れ、主のすきなお菓子をそろえ、政財界のあらゆる議題に精通し、お茶の時間の歓談のお供をするのが光騎士の勤めだ。
――……迷宮だよね?
確認したくなるようなレイサリア王宮の混沌たる造りと、衛士、騎士、光騎士の配備を覚えるのが基本中の基本と言われただけでも、目が回る。
更に最低限必要なのが、王侯貴族の顔と名前と爵位、経歴を覚え、政財界の基礎知識を身につけることだと言われたら、涙目だ。
数多の貴族の顔と爵位を覚えるだけでも吐きそうなのに、レイサリア光国の歴史と地理、属国の名産品から敵国情勢まで詰め込んだら破裂する。
父ちゃんが教えてくれたのは簡単な字だったので、難しい字は読めない。
積みあがる資料の山に、轟沈する。
――あの至光騎士戦は何だったんだ!
叫びたくなる日もあるけれど、猛勉強のくまを目の下にくっつけて、リイは新人光騎士の日々を過ごしている。
勉強苦手だよ。
前世でもこんなに勉強したことないよ。たぶん。
勿論、衛士や騎士仲間に声を掛けてルフィス探索も行っている!
…………まだ何の成果もなくて、本気で号泣しそうだ。
終始涙目のリイに、ザインは溜め息をつく。
「涙目にそんなに磨きを掛けなくていいんだぞ。
同僚まで落とすな!!」
周りでぽけっとしている光騎士たちを指されたリイは、ぷくりと膨れた。
「理不尽な叱責は止めてください!
パワハラ反対!」
拳を握って上目遣いで睨んだら、ザインがさっと目を逸らす。
「だから俺に可愛い顔をするな!!」
きょとんとしたリイに、コルタがお腹を抱えて笑った。
「リイ!」
張りのある低い声が、春の朝日に輝く王宮の廊下を祓う。
振り向いたリイは、微笑んだ。
「キール殿。
お元気そうで何よりです」
光国議会殿前の月光石の白がまばゆい廊下に、短い赤銅の髪に鳶色の瞳、長身で逞しいキールはよく映える。
至光騎士戦、決勝戦で戦った、ドルガ緋爵のご子息だ。
レイサリア光国の爵位は、主に色で分けられているんだよ。
『珠』が1番、硝子の『璃』が2番、レイサリアの国の色の『藍』が3番、『碧』が4番、『緋』が5番目だ。
勉強したよ、涙目で!
爵位としての序列はあるけれど、功績や税収によって力関係は爵位通りじゃないし、見合った爵位へ上がったり下がったりする。
誰がどう上がって、どう下がってきたかまで覚えないといけないので、勉強する方は涙しかない。
ドルガ緋爵は騎士を数多輩出する名門貴族だ。
武勲を立てた騎士の一代限りの騎士爵から始まって、毎代騎士爵を更新し続けたため緋爵を賜った経緯があった……と思う。
だから爵位は緋爵だけど、レイサリア光国の尊敬と憧れを集める貴族だ。
…………たぶん!
至光騎士戦で、キールに女性の歓声がめちゃくちゃ飛んでたのは、そういう理由みたいだよ。
「来年はその衣を俺が着る!」
指を掲げて宣言するキールに、春風に髪を揺らしてリイは笑った。
「お待ちしてます。
首、大丈夫ですか」
「気絶するなど、初めてだ」
ため息をついたキールが、リイの肩を叩く。
「敬語は要らん。キールでいい」
ともすれば尊大に見える、体格のいいキールの懐の深さに驚いた。
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はじめましての方、いつも見てくださる方、しおりを挟んでくださる方、お気に入りに入れてくださる方、エールをくださる方、投票してくださった方、心からありがとうございます!
いつも感謝の気持ちでいっぱいです。
これから少し字数を増やして、できる限り毎日更新できたらいいなと思います。
ひとつひとつのエールや投票の応援してくださるお気持ちが、涙が出るくらいうれしいです。
ほんとうに、ほんとうにありがとうございます。
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