全てを諦めた令嬢の幸福

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上級魔法士

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  午後の実習中、シルヴィアは廊下での出来事が頭から離れなかった。


「あの、シアさん…ここって…」

「はぁ……」

   (初めて…異性から頭を撫でられました…。)

「はぁ…」

「ふぁ、、シア、さん、この術式って組んだら爆発しちゃいますか?」

   今シルヴィアの頭の大半を占めてるのは、廊下でのノルダムの手と表情だ。だからメリダとロンドが質問してもシルヴィアにはその声は届いていなかった。

   何度質問しても返ってこない返答に2人は、不思議に思い話し合い始めた。

「な、なぁ、シアさん…何かあったのか?」

「わ、わかりません…で、でも…」

「でも……?」

「時々、顔を赤らめているんということは……アレですよ~」

「アレ?…頬を赤らめる……あっ!アレか…///」

   メリダはニヤニヤした顔で言い、ロンドはメリダの言葉でわかったようで顔が真っ赤になった。メリダはそんなロンドに首を傾げながらも言った。

「…?…とにかく早く教えて貰いましょう!!私も早く学びたいです!!」

「ばっ、そ、そんなこと聞けるわけ……んっ??」

「はぁ、楽しみですぅ…」

「……なぁ、メリダ」

「はぁい?なんですか?ロンドくん」

「お前の言うアレと俺が思ってるアレは違う気がするんだけど……」

「え?」

   メリダはロンドの顔を見て「そーなの?」という表情をしていたが、変わってロンドは「これだから魔法術式バカは…」と呆れていた。

「まずな、新しい術式を開発しても普通はあんな風に顔を真っ赤にしてぼーっとしないからっ!!」

「え!?!?な、なりますよっ!!」

「ならないっ!!メリダならなるかもしれないけど、普通はならないからなっ!!」

「えー、、なりますよ。。。」

「はぁ、多分。シアさんのあの状態は……」

「状態は…ゴクリ」

「恋煩いだな…」

「コイ、ワズライ?」

   ロンドの言った「恋煩い」についてメリダはわからないようだった。それは当たり前だろう…メリダは今まで魔法と術式しか興味がなかった。つまり、恋をした事が1度もないのだ。

「……うん、ごめん。メリダにはまだ早かったな」

「な、なんですか!!そ、そんなに凄いものなんですか!?!?」

「いやー、、うん。大人になったらわかるよ」

   メリダに迫られたロンドは顔を逸らして言った。恋について一丁前に語るロンドもまたメリダと同じく恋をしたことがないのだった。

「ふぇえ?」

「今はそっとしとこう…」

「えっ、でも……」

「変に聞いてシアさんを困らせるから」

「そ、そんなにコイ、ワズライとは大変なのですか!?!?」

「んー、ま、まぁ?」

   メリダとロンド、お互いがまだ体験したことがない恋について話していると執務室の扉が開いた。

「シア、居るかい?おや…君たちは……」

   扉から顔を出したのは金髪碧眼の男。ヴェルンだった。

「ふぇ?お、王子様みたいです……」

「いやいや、メリダ。この方は間違ってなければ王太子様だよ…」

「ふぁっ!?王子様でしたかっ!!」

   2人の漫才にヴェルンはクスッと笑い自己紹介をした。

「初めまして、私はアルティス王国 王太子 ヴェルン・アルティスだ。君たちは……」

「ふぁ、私はアルティス学園の魔法科3年のメリダ・アンドラです!!」

「僕もメリダと同じくアルティス学園の魔法科所属3年 ロンド・リンべです。今は、実習制度で魔法師団で勉強しています。」

「あぁ、、例の実習制度かぁ…シアが考えたやつだね」

「ふぇっ?そうなんですか???」

「えっ…シアさんが??」

「うん。私が隣国に留学している間…シアはシアで色んなことがあったみたいだね…前の彼女ならこのような制度思いつかなかったからね。。」

   ヴェルンは一瞬寂しそうな顔をして窓辺にいるシルヴィアを見た。

   そんなヴェルンとは違い彼から聞いた話にメリダとロンドは驚いていた。まさか自分がお世話になってる人がこの制度を提案したとは思ってもいなかったからだ。

「ところで君たちに聞いていいかい?」

「「は、はい!」」

「シアの様子がおかしいのだが、、君たちは何か知っているかい?」

「ふぇ、、え、えっと、、、」

   ヴェルンが一瞬見せた瞳からは怒りが感じられた。その迫力にメリダはすくんでしまい上手く話せなかった。そんなメリダを見てロンドが代わりに答えた。

「僕達も詳しくは知らないのですが…多分、恋煩い?だと思います。」

「……恋煩い?」

「は、はい」

   笑顔で聞いてくるヴェルンの目は笑っていない。

   ヴェルンは少し考えた後、メリダとロンドに少しだけ部屋から退室するようにお願いした。もちろん、メリダとロンドは快く部屋から出ていった。




「シア……」

   ヴェルンは窓辺にいるシルヴィアに近づいて彼女の髪を梳いた。その時にやっとシルヴィアは気がついた。

「…っ!ベ、ベル?あれ?メリダさんとロンドくんは??」

「彼らには少しお願いして席を外してもらったんだ」

「そ、そうなの?」

「あぁ、それよりシア」

「?」

「ぼんやりして…どうしたんだい?」

   髪を梳きながらそう言ってくるヴェルンにシルヴィアは戸惑った。彼の目がとても悲しそうだったからだ。

   (どうして??寂しそうなの?ベル……)

   シルヴィアはヴェルンの瞳から目を離せなかった。今まではノルダムの事で頭を占めていたはずなのに、目の前にいる彼のことしか考えらなくなった。

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