2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~

青ムギ

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カーテンの隙間から眩しい光が差し込み俺は顔をしかめた。いつの間にかリビングのソファで眠ってしまっており、欠伸をしながら携帯画面を開く。着信履歴もメールの受信も昨日のまま返信が無かった。

「会社の準備しよ…」
余計な事は考えないようソファから立ち上がると自室に行き身支度を整える。本棚の奥に隠してある鍵付きの箱から薬を何個か取り出すとスーツの胸ポケットに入れる。もしもの時の為に持っておこう。

パタン

自室の扉を閉めると静かな部屋に反響する。朝は何かを食べないと頭が働かないと聞いた事があるが食欲が無いうえに体が少しだけ重い。いつもの事だ…と言い聞かせ靴を履く。そして、玄関の扉を開けようとドアノブに手を掛けた時、ガチャッと向こう側から扉が開いた。

「もう仕事の時間なのか?」秀次がちょうど仕事終わりなのか帰ってきた。匂いは……相変わらず女物の香水。少し匂いがきつく気分が悪くなりそうな嫌な匂い。それにほんの少しだけ酒の匂い。
「まだ時間じゃないけど、コンビニで何か朝ごはん買おうかなと思って…」

「じゃぁ、コレやるよ」ゴソゴソと鞄の中から取りだしたのは潰れたおにぎり。鞄の一番下に入っていたのだろうか。

「ありがとう!朝ご飯何食べようか迷ってたから助かったよ!」

「昨日の昼買ったやつだから味は大丈夫だと思う」

「うん!行ってきます」秀次から何かを貰うのはいつぶりだろう。不格好なおにぎりでも嬉しく感じてしまう俺は変だろうか?……ううん。きっと変じゃない。嬉しそうに微笑んだ俺を見て秀次は欠伸をしながら部屋の中へ入っていった。
仕事で疲れたのかなと心配になりながらも俺は時計を見て走り出した。





「おはようございます」
会社の入口のタイムカードにカードを差し込み各々の部署へ散っていく社員。俺は企画部に入ると社員の方々に挨拶をし自分のデスクへ座る。

「蓮見、おはよう!」席に座ったタイミングで隣のデスクの同僚・伊崎に話しかけられた。

「おはよう。伊崎」

「昨日一昨日の有給は何に使ったんだ?恋人か?」冗談交じりに言う伊崎に俺は軽く「秘密」と返した。

「あ、それから明後日締切の提出資料を作ったんだが…部長は…」

「部長さっきまで来てたんだけどな……社長にでも呼ばれてるんじゃないのか?」

「そっか」後で渡せばいいかと思い、俺は秀次に貰った朝ごはんのおにぎりを袋から取りだし1口かじりついた。噛んでいる間変な味が口内に広がり俺は一瞬で腐っていると感じた。ご飯はパラパラと固く匂いはあんまりしなかった。だが臭い匂いは一瞬で広がった。
おにぎりをデスクの上に置くと、そのまま俺はトイレに駆け込み個室に入った。
「ぅえ……ゴホッゴホッ」口の中の異物を取り出そうと必死に嘔吐くが中々出てこない。歯に挟まっているのだろうか。朝から続く体の重たさと口内に広がる嫌な感触は気持ち悪さを加速させる。暫くの間、嫌な感触が消えるまで繰り返し嘔吐く。


コンコンコン

「大丈夫ですか……?」
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