2 / 12
02 疑念
しおりを挟む祖国で帰りを待つ人々の顔が、今や歪んで見えてくる。
そもそも今回の黒竜討伐はどのようにして始まった?
そうだ、妹が言い出したのだ。
王太子妃として暮らす妹が、ある時天啓があったと国王に伝え、そこから騎士である自分に話が回ってきた。
死を覚悟しての道行きだったが、それがまさか妹に計画されていたものとは思いもしなかった。
兄妹仲はずっと良かった。
それは彼女が王太子妃となってからも変わらない。
となれば誰かが妹に強制させたのか?
騎士階級を嫌う貴族連中ならやりかねない話だ。
疑い始めたらキリがない。
『ふふ。鎧とはこうなっているのか。なかなかどうして、ニンゲンも知恵がまわる』
黒竜が嗤う。
その間にも着々とクルトの手は鎧を外し、上着のボタンにまで手をかけている。
(こんなことがあってたまるか……!)
騎士ならば剣で最後まで戦いたかった。こんな屈辱を甘んじて受けるのなら、いっそ短剣で自分の喉をかききってやりたい。
『ふぅむ。この程度で死にたいと思うのか。それは困る』
「っ!?」
自分の思考をまるっきり読み取った黒竜の言葉に、ギョッとした。
金色の瞳が嬉しそうにニヤつく。
『このようなこと俺には造作もないぞ。ニンゲン。いや、クルトよ。
我の伴侶となってもらうからには、ここから先のことにも慣れてもらわねば』
「だれが、ドラゴンの伴侶になど、なる、ものか……っ……!」
さっきから伴侶、伴侶と聞き捨てならない言葉だ。
(そもそも俺は男だぞ……!)
女を抱くと言うならまだしも、モンスターそれもドラゴンに抱かれるなどありえない。
『ふふ。我に性別など関係ない。それに欲しいのは貴様の高潔な魂を汚すことにある』
でろり。
太く赤い舌が伸びてきて、顔や髪をなめる。
ねっとりとしたドラゴンの唾液が肌にまとわりつき、黒髪を濡らした。
垂れた唾液は脱ぎ掛けの胸元も濡らした。
ふと、腹部に見慣れぬ黒い紋章ができていた。へその下に独特な文様を描いている。
『ああ。それが我のつけた淫紋だ。貴様が射精すれば効力も弱まるぞ』
「なっ!?」
ドラゴンの前で肌をさらすのも嫌だと言うのに、この上射精など……断じてできない!
『嫌か? なら、効力をもっと上げてやろうか?』
ほれほれ、と差し出された前足の爪に先ほどの魔法陣と同じ光が宿る。
「や、やめろ! …………イケばいいのだろう!?」
やけくそ気味に吠えると、黒竜はさらにトドメの一撃を付け加える。
『ああ。無論。我の目にも見えるようにな』
「は!? 馬鹿をいうな! だれがお前の前でオナニーなど……!」
『ほう。オナニーと言うのか。一つ賢くなれたぞ。礼を言う。我が伴侶よ』
「だから俺を伴侶と呼ぶのはやめろ!」
『ではやらないのか?』
チラチラと紫の光を宿した爪が視界をよぎる。
退いても地獄、進んでも地獄とはこのことか。
10
あなたにおすすめの小説
禁断の祈祷室
土岐ゆうば(金湯叶)
BL
リュアオス神を祀る神殿の神官長であるアメデアには専用の祈祷室があった。
アメデア以外は誰も入ることが許されない部屋には、神の像と燭台そして聖典があるだけ。窓もなにもなく、出入口は木の扉一つ。扉の前には護衛が待機しており、アメデア以外は誰もいない。
それなのに祈祷が終わると、アメデアの体には情交の痕がある。アメデアの聖痕は濃く輝き、その強力な神聖力によって人々を助ける。
救済のために神は神官を抱くのか。
それとも愛したがゆえに彼を抱くのか。
神×神官の許された神秘的な夜の話。
※小説家になろう(ムーンライトノベルズ)でも掲載しています。
皇帝陛下の精子検査
雲丹はち
BL
弱冠25歳にして帝国全土の統一を果たした若き皇帝マクシミリアン。
しかし彼は政務に追われ、いまだ妃すら迎えられていなかった。
このままでは世継ぎが産まれるかどうかも分からない。
焦れた官僚たちに迫られ、マクシミリアンは世にも屈辱的な『検査』を受けさせられることに――!?
卵を産んでしまったハーピィ男子の話
志田
BL
ハーピィのヒューイは相棒の天族のディオンに片想いをしていた。ある日、卵を産めるようになったのをきっかけに、こっそりディオンの子どもを作ろうと衝動的に計画するが…。異種族×異種族。おバカ受。
「レジ袋はご利用になりますか?」
すずかけあおい
BL
仕事帰りに寄る、いつものコンビニで五十嵐 歩(いがらし あゆむ)はイヤホンをつけたまま会計をしてしまい、「――――?」なにかを聞かれたけれどきちんと聞き取れず。
「レジ袋はご利用になりますか?」だと思い、「はい」と答えたら、実際はそれは可愛い女性店員からの告白。
でも、ネームプレートを見たら『横山 天志(よこやま たかし)』…店員は男性でした。
天志は歩に「俺だけのネコになってください」と言って…。
神父様に捧げるセレナーデ
石月煤子
BL
「ところで、そろそろ厳重に閉じられたその足を開いてくれるか」
「足を開くのですか?」
「股開かないと始められないだろうが」
「そ、そうですね、その通りです」
「魔物狩りの報酬はお前自身、そうだろう?」
「…………」
■俺様最強旅人×健気美人♂神父■
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる