14 / 14
13.ユーリス・セントヘレナという男(2)
しおりを挟む「どうでしたか?婚約者は。」
リリアとの初対面は終わり、執事のテオが紅茶を持ってくる。
あの女についてはいろいろな悪い噂を聞いているし、実際見たところもかなり…傲慢そうに見えた。
侍女たちからも世話に苦労しているとの報告も受けている。
「どうでしたもなにも、服はあれしかないのか。貴族の娘だろう?」
さらにあの女は夫との面会なのに子爵の娘が着るような薄い生地のドレスで現れた。
エルレルト家ではどのような教育をされてきたのだろうか。
「知りませんよ。俺も着替えずにそのまま行くっていうもんだからびっくりしました。ユーリス様のことを馬鹿にしているのでしょうか?」
「俺は所詮北方の伯爵だからな。帝都の公爵家の娘からしたら下の身分なのだろう。」
「それでも夫を軽蔑するなんて、礼儀作法からどうにかする必要がありそうです。」
テオは口を曲げて苦言を呈する。
しかしどうせこれは『白い婚約』だ。
いつか解消されるだろうから今は辛抱すればいい。
「しっかり城の帳簿は管理しておいてくれ。あの女のせいでセントヘレナが窮地に陥っては困る。」
「そうですね。あとは女中にも城内の監視を怠らないように言っておきます。あ、それと」
テオは椅子に深く座りなおして言う。
「あのおん…こほん、リリア様は最近外出されることが多いのです。」
「どこに行っている?」
「それは分かりません。馬も使っていないようですし、そこまで遠くには行っていないと思います。」
なら城下町で遊んでいるというところか。
帝都に比べてこの辺りの娯楽は少ない。
そんな場所で男好きと言われる彼女が何をするかは一目瞭然だろう。
「好きにさせておけ。きっと愛人でも作っているんだろ。」
「なんでそう思うんです?」
「俺が『お前を愛することはない。』と言った時、リリアはかなり嬉しそうにしていた。テオの話を聞いて今あの表情の意味に繋がった。」
あの発言をしたときは、もっと悲壮な顔をすると思っていた。
だが彼女は逆にどこか嬉しそうな顔をしていたのだった。
それはきっと街に愛人でもできたからだろう。
お金と生活を保障してくれる場所に住んで、夫が愛してくれないから街の者と好き勝手恋愛をする。
いい生活じゃないか。
「不貞の証拠を早急に集めましょうか?そうすれば」
「いや、別に構わない。」
「どうしてです?こんなのあんまりじゃないですか!」
俺だってああいういわくつきな女には関わりたくない。
しかし、彼女がいることで助かっている面もある。
「俺もお飾りの婚約者がいると助かる。」
「あ、あぁブリッツ様のことですか…。」
ブリッツ子爵の一人娘、ビビアンは許嫁だったが、父が発狂した際に婚約を打ち切って、それからというもの交流は一切ない。
「この手紙の量を見てくれ…。」
「うわっ…すごいですね…。」
見ての通り、ビビアンはずっと俺に執着していて手紙が毎週のように送られてくるのだ。
最近は俺とリリアが婚約したことを聞きつけたようで、手紙が送られてくることが少なくなってきているので心労が一つ減った気分なのだ。
彼女は次のちゃんとした妻を見つけるまでは女避けとして使えそうだ。
申し訳ない気持ちもあるが利用させてもらうぞ。
148
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(2件)
あなたにおすすめの小説
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*不定期連載です。
〖完結〗旦那様には出て行っていただきます。どうか平民の愛人とお幸せに·····
藍川みいな
恋愛
「セリアさん、単刀直入に言いますね。ルーカス様と別れてください。」
……これは一体、どういう事でしょう?
いきなり現れたルーカスの愛人に、別れて欲しいと言われたセリア。
ルーカスはセリアと結婚し、スペクター侯爵家に婿入りしたが、セリアとの結婚前から愛人がいて、その愛人と侯爵家を乗っ取るつもりだと愛人は話した……
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
全6話で完結になります。
【本編完結】処刑台の元婚約者は無実でした~聖女に騙された元王太子が幸せになるまで~
TOY
BL
【本編完結・後日譚更新中】
公開処刑のその日、王太子メルドは元婚約者で“稀代の悪女”とされたレイチェルの最期を見届けようとしていた。
しかし「最後のお別れの挨拶」で現婚約者候補の“聖女”アリアの裏の顔を、偶然にも暴いてしまい……!?
王位継承権、婚約、信頼、すべてを失った王子のもとに残ったのは、幼馴染であり護衛騎士のケイ。
これは、聖女に騙され全てを失った王子と、その護衛騎士のちょっとズレた恋の物語。
※別で投稿している作品、
『物語によくいる「ざまぁされる王子」に転生したら』の全年齢版です。
設定と後半の展開が少し変わっています。
※後日譚を追加しました。
後日譚① レイチェル視点→メルド視点
後日譚② 王弟→王→ケイ視点
後日譚③ メルド視点
王命で第二王子と婚姻だそうです(王子目線追加)
かのこkanoko
BL
第二王子と婚姻せよ。
はい?
自分、末端貴族の冴えない魔法使いですが?
しかも、男なんですが?
BL初挑戦!
ヌルイです。
王子目線追加しました。
沢山の方に読んでいただき、感謝します!!
6月3日、BL部門日間1位になりました。
ありがとうございます!!!
虐げられた令息の第二の人生はスローライフ
りまり
BL
僕の生まれたこの世界は魔法があり魔物が出没する。
僕は由緒正しい公爵家に生まれながらも魔法の才能はなく剣術も全くダメで頭も下から数えたほうがいい方だと思う。
だから僕は家族にも公爵家の使用人にも馬鹿にされ食事もまともにもらえない。
救いだったのは僕を不憫に思った王妃様が僕を殿下の従者に指名してくれたことで、少しはまともな食事ができるようになった事だ。
お家に帰る事なくお城にいていいと言うので僕は頑張ってみたいです。
婚約破棄されたので四大精霊と国を出ます
今川幸乃
ファンタジー
公爵令嬢である私シルア・アリュシオンはアドラント王国第一王子クリストフと政略婚約していたが、私だけが精霊と会話をすることが出来るのを、あろうことか悪魔と話しているという言いがかりをつけられて婚約破棄される。
しかもクリストフはアイリスという女にデレデレしている。
王宮を追い出された私だったが、地水火風を司る四大精霊も私についてきてくれたので、精霊の力を借りた私は強力な魔法を使えるようになった。
そして隣国マナライト王国の王子アルツリヒトの招待を受けた。
一方、精霊の加護を失った王国には次々と災厄が訪れるのだった。
※「小説家になろう」「カクヨム」から転載
※3/8~ 改稿中
【完結】『妹の結婚の邪魔になる』と家族に殺されかけた妖精の愛し子の令嬢は、森の奥で引きこもり魔術師と出会いました。
夏灯みかん
恋愛
メリルはアジュール王国侯爵家の長女。幼いころから妖精の声が聞こえるということで、家族から気味悪がられ、屋敷から出ずにひっそりと暮らしていた。しかし、花の妖精の異名を持つ美しい妹アネッサが王太子と婚約したことで、両親はメリルを一族の恥と思い、人知れず殺そうとした。
妖精たちの助けで屋敷を出たメリルは、時間の止まったような不思議な森の奥の一軒家で暮らす魔術師のアルヴィンと出会い、一緒に暮らすことになった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
面白かったです。
続きを楽しみにしています。
すごく面白かったです!
叶うならば続きが読みたいです...
幸せになってほしいです