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第14章 2年目夏のバカンス
第101話 冷やし中華のレシピ
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確かに身体強化魔法を使うと身体が沈みやすくなる。理屈は不明だが試したところ確かにその通り。
ただ水魔法で泳ぐ方法は出来るようになるまで少し時間がかかった。他の水との抵抗を減らすため、動かす水全体を紡錘形にイメージするのがなかなか出来なかったのだ。
ただ少しでもこれらを意識すれば動ける範囲が一気に広がる。さっきは出来なかった下の岩へタッチするなんて事も楽々だ。
調子に乗ってガンガン潜りまくっていたら急にふらっと来た。まずい、何だこの感覚は。
どっちが上でどっちが下かわからない。このままでは息が出来ない。
咄嗟に移動魔法を起動する。ボートの上へ移動成功。
まだふらつくのでボートにしがみつくようにして姿勢を固定する。何なんだろうこれは。
「大丈夫ですか」
声が聞こえた。まだふらついているけれど、ナディアさんとジュリアが近くにいる事はわかる。
「大丈夫だ。ちょっとふらつくけれど」
「ちょっと待って」
ジュリアがそう言った後、すっと治療魔法の気配がした。急速にふらつきが消えていくのがわかる。
「まれにある症状。耳の奥の出血。溺れる原因にもなる。でももう問題ない」
「よく知っているな、ジュリアは」
「漁師の常識」
そうなのか。
「そうそろいい時間ですし戻りましょうか。ジュリアさんがかなり獲物をとってくれましたから」
確かに見えたペースで捕っていたら相当な量になっているよな。ジュリアも頷いたので帰るとしようか。
「帰りは私が前の船」
ジュリアが操縦して俺とナディアさんがバナナボートもどきに乗る。
船は一度沖の方へ出てから帰途に向かう。そういえばナディアさんも一度沖側を経由してここへ来たよな。
「まっすぐ帰る方向を目指さないのは理由があるんですか」
「横で波を受けると不安定になります。ですからできるだけ波は前後方向で受けるように運転するんです。最初の日にジュリアさんに教わりました」
その辺にもノウハウというか海の常識がある訳か。ジュリアがいて良かった。
最後は波に乗るような感じで砂浜へ。
「魔法でこのまま船ごと庭に持って行くから」
移動魔法で乗っている人ごと別荘の庭へと移動する。
部屋に戻ると相変わらず皆さんのたのたしていた。
「テディ大丈夫か?」
「そろそろ大丈夫です。午後は普通に遊べますわ」
だいぶ回復しているようだ。
「お昼を作るならやりましょうか」
「サラは今は休んでいてくれ。今日は俺がやるよ」
俺自身は前世も酒は苦手だったので二日酔いの経験は無い。しかし飲み会の帰りとか二日酔いの朝はラーメンが美味しいという話を聞いたことがある。
そう言えば焼きそばは作った事があるがラーメンは作った事はない。これは試してみてもいいだろう。
「今日の昼は俺が作るよ。ちょっと作ってみたいものがあってさ」
空間操作魔法を使って中央教会の時計をみるとまだ11時前。ちょっと凝ったものを作る程度の時間はある。
自在袋から財布を取り出し、小銀貨3枚をテーブルに載せる。
「日本語書物召喚、ラーメンの自作がわかりやすく記載されている本」
ちょうどいい本が出てきた。材料と生麺を用意すれば10分で作れるラーメンが多数記載された本だ。写真が多くて真似しやすそうでいい。
焼きそば用に生麺をストックしてあるから今回は製麺の必要は無い。
よし、今回はこの中から『ガスパチョ冷やし中華』を作らせて貰おう。使える材料は少し違うけれどアレンジできる範囲内だし。トマトジュースは無いけれど冷凍トマトをメインとした野菜を潰して煮立てて冷やして使えばいいな。
冷凍トマトは汁の具としても使いたいので多めに使用。醤油はいつも通りハーブを入れひと煮立ちさせた匂いの少ない魚醤を使用。
具材はある物で適当にアレンジしてやればいいか。ハムだのネギだのルッコラだので。
味見をして充分美味しいのを確認してから盛り付ける。汁は飲めるくらいたっぷりと。どうせ必要だろうから替え玉の準備もしておいてと。
「出来たぞ」
盛り付け完成状態まで作って皆に持って行って貰う。汁が多いので自分の食べる分ずつだ。
早速皆さんに食べて貰う。
「すっきりしていいですわ。でもこの麺はパスタと少し違いますね」
「焼きそば用の麺かな、これは」
「正解。あれを蒸さずに茹でて使えばこうなるんだ」
「喉に滑り込んでいく感じで美味しいな。スープもいい。身体が水分を欲している感じだからさ、吸い込む感じで入っていく」
「夏向きですよね。後でレシピを訳していただいていいですか」
確かにサラの仕事用にも使えるな。最近は焼きそばがメジャーになったようで生麺も市場で見かけるようになったし。
「ああ。今回もレシピ本を取り寄せたからさ」
「どんなレシピが載っているんですの」
「この麺を使った料理ばかりだな」
「後で読ませて下さいね」
「はいはい」
テディは活字中毒的なところもある。好物は恋愛小説だけれど字がメインの印刷物は何でも読む。その辺はナディアさんやサラ、ジュリアも同じだけれど。
「おかわりはここにある麺を入れればいいのかな」
「待ってくれ。汁まで飲んでしまったぞ」
「汁の残りもキッチンにありますよ」
「よし入れてこよう」
「僕も」
「同じく」
初めての焼きそば以外の中華麺メニューはかなり好評だったようだ。
だがそのおかげでさっき取り寄せた本を午後訳させられる事になるとは。それもレシピ部分だけで無くおまけの漫画部分まで訳させられる事になるとは。
この時の俺はまだ気づいていなかったのだった。
◇◇◇
今回召喚した本:趣味の製麺 別冊「作ろう!10分ラーメン」 私的標本
(同人誌扱いなので取り寄せについてはネット等で各自調べて下さい)
ただ水魔法で泳ぐ方法は出来るようになるまで少し時間がかかった。他の水との抵抗を減らすため、動かす水全体を紡錘形にイメージするのがなかなか出来なかったのだ。
ただ少しでもこれらを意識すれば動ける範囲が一気に広がる。さっきは出来なかった下の岩へタッチするなんて事も楽々だ。
調子に乗ってガンガン潜りまくっていたら急にふらっと来た。まずい、何だこの感覚は。
どっちが上でどっちが下かわからない。このままでは息が出来ない。
咄嗟に移動魔法を起動する。ボートの上へ移動成功。
まだふらつくのでボートにしがみつくようにして姿勢を固定する。何なんだろうこれは。
「大丈夫ですか」
声が聞こえた。まだふらついているけれど、ナディアさんとジュリアが近くにいる事はわかる。
「大丈夫だ。ちょっとふらつくけれど」
「ちょっと待って」
ジュリアがそう言った後、すっと治療魔法の気配がした。急速にふらつきが消えていくのがわかる。
「まれにある症状。耳の奥の出血。溺れる原因にもなる。でももう問題ない」
「よく知っているな、ジュリアは」
「漁師の常識」
そうなのか。
「そうそろいい時間ですし戻りましょうか。ジュリアさんがかなり獲物をとってくれましたから」
確かに見えたペースで捕っていたら相当な量になっているよな。ジュリアも頷いたので帰るとしようか。
「帰りは私が前の船」
ジュリアが操縦して俺とナディアさんがバナナボートもどきに乗る。
船は一度沖の方へ出てから帰途に向かう。そういえばナディアさんも一度沖側を経由してここへ来たよな。
「まっすぐ帰る方向を目指さないのは理由があるんですか」
「横で波を受けると不安定になります。ですからできるだけ波は前後方向で受けるように運転するんです。最初の日にジュリアさんに教わりました」
その辺にもノウハウというか海の常識がある訳か。ジュリアがいて良かった。
最後は波に乗るような感じで砂浜へ。
「魔法でこのまま船ごと庭に持って行くから」
移動魔法で乗っている人ごと別荘の庭へと移動する。
部屋に戻ると相変わらず皆さんのたのたしていた。
「テディ大丈夫か?」
「そろそろ大丈夫です。午後は普通に遊べますわ」
だいぶ回復しているようだ。
「お昼を作るならやりましょうか」
「サラは今は休んでいてくれ。今日は俺がやるよ」
俺自身は前世も酒は苦手だったので二日酔いの経験は無い。しかし飲み会の帰りとか二日酔いの朝はラーメンが美味しいという話を聞いたことがある。
そう言えば焼きそばは作った事があるがラーメンは作った事はない。これは試してみてもいいだろう。
「今日の昼は俺が作るよ。ちょっと作ってみたいものがあってさ」
空間操作魔法を使って中央教会の時計をみるとまだ11時前。ちょっと凝ったものを作る程度の時間はある。
自在袋から財布を取り出し、小銀貨3枚をテーブルに載せる。
「日本語書物召喚、ラーメンの自作がわかりやすく記載されている本」
ちょうどいい本が出てきた。材料と生麺を用意すれば10分で作れるラーメンが多数記載された本だ。写真が多くて真似しやすそうでいい。
焼きそば用に生麺をストックしてあるから今回は製麺の必要は無い。
よし、今回はこの中から『ガスパチョ冷やし中華』を作らせて貰おう。使える材料は少し違うけれどアレンジできる範囲内だし。トマトジュースは無いけれど冷凍トマトをメインとした野菜を潰して煮立てて冷やして使えばいいな。
冷凍トマトは汁の具としても使いたいので多めに使用。醤油はいつも通りハーブを入れひと煮立ちさせた匂いの少ない魚醤を使用。
具材はある物で適当にアレンジしてやればいいか。ハムだのネギだのルッコラだので。
味見をして充分美味しいのを確認してから盛り付ける。汁は飲めるくらいたっぷりと。どうせ必要だろうから替え玉の準備もしておいてと。
「出来たぞ」
盛り付け完成状態まで作って皆に持って行って貰う。汁が多いので自分の食べる分ずつだ。
早速皆さんに食べて貰う。
「すっきりしていいですわ。でもこの麺はパスタと少し違いますね」
「焼きそば用の麺かな、これは」
「正解。あれを蒸さずに茹でて使えばこうなるんだ」
「喉に滑り込んでいく感じで美味しいな。スープもいい。身体が水分を欲している感じだからさ、吸い込む感じで入っていく」
「夏向きですよね。後でレシピを訳していただいていいですか」
確かにサラの仕事用にも使えるな。最近は焼きそばがメジャーになったようで生麺も市場で見かけるようになったし。
「ああ。今回もレシピ本を取り寄せたからさ」
「どんなレシピが載っているんですの」
「この麺を使った料理ばかりだな」
「後で読ませて下さいね」
「はいはい」
テディは活字中毒的なところもある。好物は恋愛小説だけれど字がメインの印刷物は何でも読む。その辺はナディアさんやサラ、ジュリアも同じだけれど。
「おかわりはここにある麺を入れればいいのかな」
「待ってくれ。汁まで飲んでしまったぞ」
「汁の残りもキッチンにありますよ」
「よし入れてこよう」
「僕も」
「同じく」
初めての焼きそば以外の中華麺メニューはかなり好評だったようだ。
だがそのおかげでさっき取り寄せた本を午後訳させられる事になるとは。それもレシピ部分だけで無くおまけの漫画部分まで訳させられる事になるとは。
この時の俺はまだ気づいていなかったのだった。
◇◇◇
今回召喚した本:趣味の製麺 別冊「作ろう!10分ラーメン」 私的標本
(同人誌扱いなので取り寄せについてはネット等で各自調べて下さい)
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