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 貧富の差が激しく、裕福な家庭でないと学校にも通えない。学校へ通うというステータスのために借金をしてでも通わせたい、そういうことが当たり前だった、私の住んでいた聖マリアン王国。

 同じ大陸にあって、隣国という近しい関係なのに、こんなにも差がある。聖マリアン王国の実情を知っていると、王国に対して苦々しく思うのも仕方がない。何せ、あの国は王侯貴族の腐り具合がすごかった。

 私も貴族の生まれだったけれど、首都へ行けば行くほど、富裕層が目立ち、地方は貧困層が多かった。私の家も貴族とは名ばかりで、首都にいる商人家よりも貧しかったのが現状だ。

「この国は、すごいですね……教育水準は高いし。何よりも、みんなが平等に教育を
受けられるだなんて」

「聖マリアン王国はそうではなかったのですね……」

「はい。あの国は王侯貴族が腐りきっていて、お金持ちが優遇され、貧しい民が苦しむような国でした。貧困層は地方へと追いやられて、一向に豊かになれない。それどころか厳しくなる国税で、生活が厳しくなる家庭も多くありました」

「ユーフェミア様……」

「私は、地方を治める、貴族と言って良いかもわからないほど貧しい、貴族の生まれでした。それでも、一般的な家庭よりは裕福でしたが……」

 修道院で、逃げ回る生活の中で、国の現状を見せつけられた。おじいさんとおばあさんが裕福な人たちであることも、もちろん気づいていた。

「私のいた修道院は、国の管理施設なのに、明日食べるものにも困るような、そんな場所。でも、首都に行けば、同じ修道院でも全然違いました。あの国の歪んだところがよくわかりますよね」

 そして、すべての元凶を私だと声高々に叫び、痛めつけてくる権力者たち。自分たちの生活が苦しいのは私のせいだという言葉に同意する人々。

 あの国に、私の居場所など初めからなかったんだ。どうしてもっと早くに気が付けなかったのか。

「オギさん。私は、この国に連れてきてもらえて幸せです。もう、誰にも嫌われなくて済むから」

 何もしていないのに、存在しているだけで石を投げつけられるような国じゃない。それだけでも嬉しくて。

「でも、私はいい子じゃないから、聖人みたいに何でもかんでも受け入れられるような人間じゃないから……思ってしまうんです。あんな国、無くなってしまえって」

 本当はずっと思っていた。私に優しくない国、私の周囲の人に危害を加えた、許しがたい国。国民が苦しんでいるのを私のせいにして、自分たちの罪を擦り付けてくるような、そんな最低な国なんて、滅びてしまえと。

「ユーフェミア様、誰しも憎い心を持つのは当然です。その感情自体、持つことを悪と決めてしまっては、聖人でも心が死んでしまいますよ」

 オリヴァーと同じようなことを言うオギさんに、少しではあるが心が軽くなる。

「これからは、ここで幸せを取り戻していきましょうね、ユーフェミア様」

「はい、オギさん」

優しく微笑んでくれる彼女の言葉に、私は今度は大きく頷いた。
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