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 ずいぶんと体力を取り戻し、一般的な生活が送れるようになった私は、先日、この帝国の皇太子殿下と太陽の神子である皇女殿下にお会いした。

輝かんばかりの笑顔を浮かべたアーノルド皇太子殿下を白い目で見ていたオリヴァーだったけれど、なんだかんだ言って仲は良さそうだった。

「ユーフェミア姉さま! 今日こそは観劇に行きましょう!」

「アデル様、ぜひ!」

 太陽の神子であるアデル皇女殿下は、まだ私よりも年下で幼いけれど皇族として、太陽の神子としての自分のあり方をしっかりと理解されている方。


————わたくしは、ユーフェミア姉さまにお会いすることができて嬉しいです。まるで失われた半身が戻ってきたかのようで、とても安心できます。


 アデル様と初めてお話をした時、私はそう言われた。しかし、失われた半身というのは間違った表現ではなかった。まるでずっと会えていなかった大切な存在に会ったかのように懐かしい気持ちになり、もう今度はおいて逝ったりしないと、そう思ったのだから。

 その話をオリヴァーにすると、彼は「本当のことはわからないけれど、皇女殿下と私にしかわからない絆があるのかもしれないね」と言っていた。

 そんな私たちが仲良くなるのはあっという間で、今ではお城の呼ばれることもあるし、一緒に遊びたいと護衛を撒いてこっそり出かけようとしたりと、いろいろ楽しんでいる。

「ふふ、姉さま。完璧ですわ」

 アデル様は、私があまり外の世界を知らないことを知っているので、こうして何度も外へ連れ出してくれる。わざわざ、自ら護衛の手薄になる時間を調べ上げるほどには、お忍び外出がお好きでもある。

 今日もこっそり抜け出した私たちは、街に溶け込める服装をして城下へ飛び出していた。お忍びと言っても、護衛はついてきているようなので、お忍び感覚を楽しんでいる、と言ったほうが正しい。

「アデル様、こんなにも。こんなにも……人々は明るく活気づくものなのですね」

「ええ、ユーフェミア姉さま。我がベルファス帝国は、貧困にあえぐ人々がいなくなるのを目標にしていますから」

「隣り合っている国なのに……国が違えば、違うのは当然なのですけれど……どうしても、悔しく思ってしまいます」

「姉さま……」

 城下の人々はみな、笑顔で溢れていて、市場も活気づいている。なんて素敵なのだろうと、そう思う。

「おや? アデル皇女殿下……? それに、月の愛し子様だ!」

 アデル様とのんびり市場内を歩いていると、果物を売っていた店主が私たちに気づいた。

「こんにちは」

 被っていたフードを外して笑顔で挨拶をするアデル様に、わらわらと周囲人々が集まってくる。

「皇女様!」

「本当に、月の愛し子様もいる!」

私も目深に被っていたフードを外して、引きつらないように頑張って笑みを浮かべる。すると、集まっている人々が、嬉しそうに歓声を上げてくれた。

「ユーフェミア姉さま、大丈夫」

「ありがとうございます、アデル様」

 ぎゅっと手を握ってくれるアデル様に、私は今度こそしっかりと顔を上げて笑うことができた。

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