不死王はスローライフを希望します

小狐丸

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二百四十七話 増える行き来

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 冒険者用の村が完成したが、今はまだ準備段階だ。ダーヴィッド君が魔王国へ、新たに草原地帯に派遣する兵士の要請を出したり、冒険者ギルドの支部長グランツが、村に造った冒険者ギルド支部で働く職員の人選をしたり、竜人族の長老が魔王国に在る各集落から追加の人員を要請したり。それに加えて宿を任せるリタイアした冒険者のスカウトとかとか。

 お陰でこのところ森の拠点から、ほぼ毎日アウロラに通っている。ミルとララは、孤児院のお友達と遊べるから喜んでいるけどね。


 今日はセブールと城の周辺をどうするか、相談しながら周辺の確認だ。

 アウロラから東側に農地が拡がり、移住して来た人達の生活も安定してきた。

 アウロラから東側へは、一本の道が真っ直ぐに伸びていて、俺が調子に乗って岩山ごと創った城が聳えている。

 以前に一度、草原地帯を縄張りとする騎馬民族っぽい蛮族達が、城を我が物にしようと襲撃して来た事もあったが、今ではそんな奴らは居なくなった。

 草原地帯で真面目に暮らしていた遊牧民も現在では、アウロラかその東側の農地で定住し、それを襲う蛮族どもは、この草原地帯で生きていけなくなったと言える。

 そんな馬鹿達は、西方諸国連合へと流れて盗賊行為を続ける者と、執拗にアウロラや東側の農地区画を襲おうとする馬鹿に分かれたが、どちらも辿る運命は一緒だったみたいだな。

「城なぁ~。無駄に立派に造っちゃったから、このまま放置も勿体ないしな」
「現状、旦那様の眷属であるゴーレムしか居ませんから、勿体ないと言われればその通りかと」
「だよなぁ」

 岩山へは正面から九十九折りの階段で登るが、大変だろうから北側にエレベーターまで設置してある。

 俺やセブール、リーファは飛べばいいし、それこそ俺は転移すれば一瞬だけど、眷属であるゴーレム達の為にエレベーターを設置してあるんだ。まぁ、ゴーレムだから階段を登っても疲れないんだけどな。

 この城を今すぐにどうこうする必要もないのだけど、アウロラまで足を運ぶ商人が増えると、当然そこから東側に見える城が気になると思うんだよな。調子に乗って岩山なんて創らなけりゃよかった。高さがあるから目立つんだよな。

「アウロラからは、良く見えますから」
「そこまで近くはないんだけど」
「大きな岩山の上に聳え建っていますから」

 アウロラから岩山の城までは、約三十キロメートル。道も俺がキレイに整備してあるので、遠いっていう距離でもない。

 しかも、この世界の人って視力が良いんだよな。城の事を知っている住民やダーヴィッド君達は別にして、初めて訪れた人なんかは間違いなく「あの城は何だ」と騒ぎになる。

「将来的には、あの城を中心に都市を建設するのも面白いでしょうが、旦那様的にはこれ以上アウロラ周辺に有象無象が寄り付くのは避けたいのですね?」
「まぁ、竜人族と茶葉を交易したり、魔王国や商業ギルドを除く各ギルドと森の素材を取り引きしたり、多少人の行き来が増えるのは仕方ないと思うよ」
「その為に冒険者用の村まで造りましたからね」

 無秩序に住民を増やすつもりなんてサラサラない。今の住民が、困窮する親類や知り合いを呼びたいって話もあるから、少しずつ増えてはいるんだけどな。

 もともと孤児院を造りたいってのからスタートした城塞都市とかその他諸々だし、貧困国からの移住者なんかも受け入れたから、強欲な奴らや悪意ある奴らは歓迎したくないんだよな。

 まあ、そうは言っても集まって来るのが、そんな奴らなんだけどな。ほんとハエみたいな奴らだよ。

「アウロラから徐々に。本当に少しずつ東へ開発するくらいか」
「それが無難ですな。アスラに東側の巡回を強化するよう伝えておきます」

 深淵の森でもトップクラスのアスラが、草原地帯を巡回するだけで、ほとんどの魔物は草原地帯には近付かない。ただ虫系の魔物は本能が強いからなのか、匂いや気配で魔物を避ける事は少ないんだよな。

「ああ、頼む。森と草原地帯の境界に、何か工夫が必要かな」
「虫ども対策ですな」
「ああ。本能が強いなら、虫除けの魔道具なんて作れないかな」
「可能性はありますな」

 森から出て来る魔物を結界で防ぐ事は可能だろう。ただ俺の眷属以外を全て通れなくするってのも不味い。

 孤児院の子供達は眷属じゃないから通れなくなる。現状、子供達へのパワーレベリングは必要だからな。本当は、そんな事しなくても平和に暮らせる環境だといいんだが、今のところ道は険しそうだ。

 そこで虫系のみに効く虫除けのような魔道具なら作れる可能性は高い。本能が勝ちがちな虫系だけに、嫌な匂いや波長、魔力を発する道具で、草原地帯に近寄らないように出来るかもしれない。

「色々と実験してみるか。成功したら農地区画の安全も高くなるしな」
「そうですね。もともと魔力濃度の高い場所に棲息する魔物は、餌でもない限り草原地帯に出て来る事は少ないですから。嫌なモノを我慢してまで近寄らないでしょう」
「簡単な虫除けでも効果があったら、錬金術師や薬師の仕事に出来そうだしな」
「おお! それはいいアイデアですね」

 多分、深淵の森なら虫除けになる草や花もあるだろう。それを使って魔道具じゃなくても、シンプルに虫除けも作れるかもしれないな。それなら錬金術師や薬師でも作れるだろう。






 冒険者用の村に造った宿屋や雑貨屋、鍛治の工房で働く者は比較的早く見つかった。

 ダーヴィッド君や冒険者ギルドの支部長グランツが頑張ってくれた。

 宿屋で働く元冒険者と下働きは、グランツ支部長が慎重に人選をした事もあり、セブールのお眼鏡にも適ったようだ。

 鍛治の工房を任せる職人は、なんとドワーフの鍛治師夫婦が手を挙げたらしい。頑固だが人柄は間違いないらしい。まあ、エルフがいるんだからドワーフもいるか。

 治安維持に関しては、俺がアイアンゴーレムを二体派遣し、竜人族の長老から派遣されたメンバーと、ダーヴィッド君が魔王国の武官長イグリスに連絡し、急遽選出し派遣された者達と力を合わせてあたる。

 イグリスの部下は、俺やセブール、アスラやクグノチを知っているので、草原地帯で悪さをするような奴はいない。そもそも古竜であるオオ爺サマのお膝元で馬鹿な事を考える奴は少ないだろうがな。


 虫系の魔物が嫌がる魔道具は、まだ実験中だが、クグノチやトム達元ウッドゴーレムの協力もあり、森の草花から虫除けは完成した。それなりの効果はあるので、早速錬金術師ギルドと薬師ギルドがレシピを買って、冒険者用の村に追加で建てられた、それぞれの工房で作り始めている。

 この虫除け、魔物だけじゃなく普通の害虫にも効果があるので、錬金術師ギルドも薬師ギルドも喜んでレシピを買ってくれた。

 虫除けとしては優秀だから魔王国に加え、西方諸国全域で需要ある。基本頑強な魔族や竜人族以外は、この世界でも蚊なんかは脅威なんだ。


 虫除けが口コミで拡がり、益々個人のガッツある商人が来るようになった。それ以外にも、ローズ商会は余り間をおかず商隊を送り、魔石を中心に合同買取所から色々と購入していった。

 深淵の森の素材で人気があるのは、稀少なポーションの原料になる薬草やキノコ。高ランクの魔物の毛皮や爪や牙。ただ、今一番売れているのは魔石なのだそうだ。

 深淵の森の魔物から得られる魔石は、小さくとも内包する魔力が多く、西方諸国で得られる魔石とは品質が違う。とはいえ値段は商業ギルドを挟まない為、少し高い程度なので、魔石を目当ての商人が増えている。


 この日はミルとララの付き添いで合同買取所に来ていた。

「査定お願いします!」
「私のもお願い!」
「は、はい。ミルーラ様、ララーナ様、いつもありがとうございます」

 冒険者ギルドの職員が、もはや顔馴染みとなりつつあるミルとララを笑顔で迎える。

 ミルとララがザラザラと自分達のマジックバッグから魔石を取り出す。

「今日はまた大量ですね」
「うん! 今日は魔石以外に皮と骨もあるよ!」
「あっ、トカゲの肝もある! クスリになるんでしょう!」
「そ、それはありがとうございます」

 大量の魔石に驚くギルド職員。そこにミルとララが、今日は他の素材も持って来ているというと焦り始める。

 ララがトカゲの肝と言った物は、貴重な回復薬の原料になる物だと知っているからだ。

 俺達の認識としては、ちょっと大きなトカゲだが、世間的には劣化竜らしい。とはいえオオ爺サマからすれば、紛れもなくトカゲらしい。ただ、再生能力が高く、その肝は非常に効果の高い回復薬の素材になる。

「大量ですまんな」
「いえ、シグムンド様達が持ち込まれるのは、解体済みの物が多いので助かっています。私達がするのは査定だけですから」

 大量の魔物肉はアウロラや農地の住民にほぼタダのような値で分けられ、竜人族も茶葉と交換するので常に需要は高く、現状極少数しか外には売られていない。

 ただ、俺が造った魔道具は、ほぼ魔石の交換が必要がない。魔石の魔力が無くなっても、魔力が少ない普通の人が補充できるからな。しかもこの辺りは魔力が濃い土地なので、俺の魔道具には周辺の魔力から補充する仕組みを組み込んである。なので基本的に、魔石はアウロラや農地の家庭ではほぼ買う必要がないんだ。

 大量にある魔石に目を付けた商人が、買い付けに来るのも当然だな。西方諸国では魔石の需要は多いようで、幾らでも売れると聞いている。



 魔石や素材を売ってルンルンのミルとララ。

「これでまた買い物に行けるね」
「何買おうかなぁ」
「高価な宝飾品でも余裕で買えてしまいますね」

 スキップしながら楽しそうな二人に、今日の付き添いのリーファがボソリと呟く。

「そうかぁ。お金の価値も勉強させなきゃな」
「はい。間違いなくボルクスさんよりも稼いでいますから」
「……絶対、ボルクスさんに言うなよ」

 分かってはいた事だが、ミルとララの手持ちのお金がとんでもない額になっているらしい。それこそ出稼ぎに出ている父親のボルクスさんよりもお金を持っているみたいだ。出稼ぎって……

 お願いだからボルクスさんには秘密にしてあげて。泣いちゃうから。


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