102 / 109
連載
二百四十八話 異端の国
しおりを挟む
それは西方諸国連合の中でも一際お国柄が変わった国。
戦いこそ命だった暴力の化身、魔王国の先代魔王のバールが、大陸中を相手取って起こした大乱。その戦争で西方諸国連合は一致団結し抗ったのだが、ただ一つの国だけは様子が違った。
どの国も自然災害のような圧倒的な暴力である先代魔王バールに対して、只々嵐が過ぎ去るのをジッと我慢するように身を硬くする中、その国だけは嬉々として戦場へと赴いた。
自国の防衛だけではなく、近隣国の戦場にも同盟国だからと嬉々として参戦する戦闘狂国家。
その国の名は『獣王国』。西方諸国連合の中でも国民のほぼ全てが獣人族で構成された異端の国。
しかも数ある獣人種の中でも戦闘向きの種族が国民である獣王国は、以前の魔王国のように「力こそ全て」という価値観の国だった。
ある意味、先代魔王バールと思考が近い国だと言える。
その国民総戦士である獣王国を統べるのが、獅子王レオニダス。
獣王国の王は、魔王国と同じくその時に一番強い者が王となる。そんな国でレオニダスは、長きにわたり王であり続けている強き獣王だ。
レオニダスは、バールに何度も挑み負け続け、結局一度も勝てはしなかったものの、全ての戦いに生還してみせた。そして次こそはバールに勝つと、己を鍛え諦めなかった。
ただ、そんな高過ぎる壁であったバールも、実の息子ヴァンダードにより排除され、目標を失ったレオニダスだが、バールを超える努力はやめなかった。
大陸中に吹き荒れた戦乱の嵐もそれにより鎮まり、獣王国とジーラッド聖国を除いた西方諸国連合は新魔王ヴァンダードを歓迎し、レオニダスにとっては平穏で退屈な十年が過ぎた。
そんなレオニダスに転機が訪れる。
城の広場で、二メートルを超える巨体の男が、両腕に一本ずつ巨大な棍棒を持ち振り回している。
この筋骨隆々の巨体を誇る獅子の獣人が、獣王国の王レオニダスだ。
半裸の上半身には、大小多くの傷が刻まれている。どれもバールに敗北した時の傷だ。よく何度も生還したものだ。人族を遥かに超えるタフさを誇る獣人族。その中でも力ある獅子の獣人故だろうか。
人が近付いて来る気配を察知したレオニダスが、最後に渾身の一撃を振るって素振り用の超重量級の棍棒をピタリと止める。
「ディーガ、お前も鍛錬か?」
「いえ、陛下にご報告があります」
現れたのは、顔に大きな傷がある巨躯の男。ディーガと呼ばれたその男は、白地にグレーの縞模様、虎獣人の中でも希少種であるホワイトタイガーの獣人だ。
ディーガは、レオニダスの右腕で魔王国との戦争にも何度も出陣し、レオニダスと共に最前線で戦い続けた武人である。とはいえ獣王国には武人しか居ないと言っても差し障りはないのだが、その武人の中でも上澄みに立つ強き戦士だ。
汗を拭ったレオニダスが、広場の端に設置された四阿にドカリと座る。
「で?」
「出入りの商人の話では、草原地帯が開発されているのは事実のようです」
「……先代魔王、暴力の化身のようなバールでさえ手を出せなかったあの地をか?」
ディーガの報せに、信じられないといった驚きの表情になるレオニダス。それも仕方ないだろう。あの自分をして勝てなかったバールが、決して手を出せなかったのが草原地帯なのだ。
勿論、草原地帯に棲息する魔物だけならバールの敵ではない。しかしその草原地帯の北には、決して足を踏み入れてはならない魔境、深淵の森がある。
草原地帯に人が多く集まると、その餌を目当てに森から魔物が出て来る。それは外縁部に棲息する魔物ならまだ何とかなるかもしれないが、中層の魔物が出現すれば、それはバールであっても死を意味する。草原地帯とはそんな地なのだ。
シグムンドが城塞都市を造ってからそれなりになるが、大陸の西の端に位置する獣王国までは、草原地帯の情報が届くのは時間が掛かったようだ。それが合同買取所が設置され、商業ギルドを除く各種ギルドが活発に動き始めたので、獣王国にも報せが届くようになった。
「草原地帯の入り口付近に、砦のような竜人族の集落が。その奥に城塞都市が在るのは間違いない情報です」
「そんなものいつの間に……」
「どちらも深淵の森の支配者の仕業という話です」
「深淵の森の支配者。俄には信じられんな」
「ただ、これは魔王国や幾つかの西方諸国連合に属する国が確認しているので確かかと」
草原地帯に砦のような集落や城塞都市が在るなど、側近から聞かされたとしても俄には信じられないレオニダス。ただ、ディーガは真っ直ぐな武人なので、嘘を吐くようの人間ではない事はレオニダスも理解していた。
それよりも深淵の森の支配者というワードは、獣王レオニダスにとって先代魔王バール以上の衝撃だった。
深淵の森。レオニダスが若かりし頃、武者修行として冒険者活動をしていた時、無謀にも深淵の森に挑戦した事があった。
結果は、ほんの数十メートル足を踏み入れた所で逃げ帰っている。外縁部の魔物ですら群れとなると手に負えない。あの魔境全域を含めた支配者など、どれ程強大な存在なのだろう。
「話はまだあります」
「まだあるのか?」
「信じられない話ですが、草原地帯の城塞都市には、あの神の使いである古竜様が滞在されているそうです。これは幾つもの筋からの確実な話で、入り口付近の竜人族の集落も、古竜様を信仰する竜人族が、古竜様詣りをする為の拠点らしいですぞ」
「……古竜など、御伽噺の存在ではないか」
草原地帯に古竜(黄金竜)が滞在している事は、草原地帯に近い西方諸国なら知る情報だった。ただ神話で語られる存在をどうこうしようとする者が居ないだけだ。いや、何処ぞの聖王やとあるリッチロードは未だ諦めていないようだが。
ただレオニダスも相手が強大だからといって尻尾を巻くような男ではなかった。一番強い者が王となる国、獣王国の玉座に長年座ってきた男だ。沸々と挑戦したい気持ちが燃え上がる。
「深淵の森の支配者に古竜か。相手に取って不足はないな」
「さすが陛下。ならばもう少し詳しく探らせてみます。国を空けるにも準備は必要ですからな」
「ああ、草原地帯となると遠いからな」
レオニダスとディーガの中では、強大な存在へ挑戦する事は決定事項のようだ。先代魔王バールに勝てない時点で、シグムンドやオオ爺サマに挑むなど、無謀……いや、それ以前の問題なのだが、そんな理性的な判断が獣王国でなされる事はない。バトルジャンキーの集団国家なのだから。
ディーガは、レオニダスの草原地帯行きを決めると、供をする者の選出に入る。決定方法は勿論、バトルロイヤル方式の武闘会。そこに参加させろと若い声が上がる。
「親父! 俺も連れて行け!」
「ふん。なら己が力で示してみせよ」
「ああ! 直ぐに親父も超えてみせる!」
レオニダスの息子マグヌスが吼える。
レオニダスと同じ獅子の獣人であるマグヌス。その潜在能力は高い。ただ、レオニダスから見るとまだまだヒヨッコ、経験不足は否めない。
獣王国には二つのダンジョンが在り、そこで国民の食糧を確保している。だからマグヌスも子供の頃から、ダンジョンでの戦闘経験を積んではいる。
ただ、ダンジョンで戦うのと戦争では、同じ戦いでも質が違う。
それに西方諸国に在るダンジョンは、シグムンドが最初に潜った深淵の森にあったダンジョンとは難易度が大きく違う。
深淵の森と西方諸国の魔力濃度の差もあるが、片方は創造神が叛逆した神の首魁を封印する為に造ったものだ。差があるのは当然で、西方諸国の国々にとってダンジョンとは資源という扱いなのだから。
我こそはと思う戦士が広い闘技場に集まり大乱闘が始まった。その中に勿論、マグヌスの他レオニダスやディーガの姿もある。
「フンッ!」
ドガッ!!
「ドリャッ!」
バキッ!!
「沈めっ!」
ドンッ!
スピード特化の狼獣人。スピードとパワーのバランスタイプの虎獣人。圧倒的なパワーでゴリ押す熊獣人。そんな中でもやはりレオニダスは圧倒的だった。
最終的に残ったのは、当然ながらレオニダスとディーガ。それに獣王国一の巨体を誇る熊獣人のグズル。黒豹の獣人レーバー。そしてギリギリマグヌスが滑り込んだ。
たった五人だが、獣王国でも精鋭中の精鋭の戦士。軍を引き連れては行けないので、なら五人でも問題ないとレオニダスが決めた。
「各自、怪我を治し体調を整え鍛錬を怠るなよ」
「出発は春。自分の荷物は自分で用意し持つように」
レオニダスとディーガから決まったメンバーに声が掛けられる。
レオニダスとディーガは、それ程目立つ怪我はないようだが、マグヌスなどはギリギリ残っただけあり、それなりにボロボロになっている。身体を休めて体調を整える時間は必要だろう。
それに今は冬真っ只中だ。頑丈な獣人族とはいえ真冬の長距離移動はつらい。野営も温かくなってからの方が断然楽だ。
西方諸国連合の中でも異端の国。バトルジャンキー達が戦いを求めて草原地帯へ。そこで何を起こすのか……
戦いこそ命だった暴力の化身、魔王国の先代魔王のバールが、大陸中を相手取って起こした大乱。その戦争で西方諸国連合は一致団結し抗ったのだが、ただ一つの国だけは様子が違った。
どの国も自然災害のような圧倒的な暴力である先代魔王バールに対して、只々嵐が過ぎ去るのをジッと我慢するように身を硬くする中、その国だけは嬉々として戦場へと赴いた。
自国の防衛だけではなく、近隣国の戦場にも同盟国だからと嬉々として参戦する戦闘狂国家。
その国の名は『獣王国』。西方諸国連合の中でも国民のほぼ全てが獣人族で構成された異端の国。
しかも数ある獣人種の中でも戦闘向きの種族が国民である獣王国は、以前の魔王国のように「力こそ全て」という価値観の国だった。
ある意味、先代魔王バールと思考が近い国だと言える。
その国民総戦士である獣王国を統べるのが、獅子王レオニダス。
獣王国の王は、魔王国と同じくその時に一番強い者が王となる。そんな国でレオニダスは、長きにわたり王であり続けている強き獣王だ。
レオニダスは、バールに何度も挑み負け続け、結局一度も勝てはしなかったものの、全ての戦いに生還してみせた。そして次こそはバールに勝つと、己を鍛え諦めなかった。
ただ、そんな高過ぎる壁であったバールも、実の息子ヴァンダードにより排除され、目標を失ったレオニダスだが、バールを超える努力はやめなかった。
大陸中に吹き荒れた戦乱の嵐もそれにより鎮まり、獣王国とジーラッド聖国を除いた西方諸国連合は新魔王ヴァンダードを歓迎し、レオニダスにとっては平穏で退屈な十年が過ぎた。
そんなレオニダスに転機が訪れる。
城の広場で、二メートルを超える巨体の男が、両腕に一本ずつ巨大な棍棒を持ち振り回している。
この筋骨隆々の巨体を誇る獅子の獣人が、獣王国の王レオニダスだ。
半裸の上半身には、大小多くの傷が刻まれている。どれもバールに敗北した時の傷だ。よく何度も生還したものだ。人族を遥かに超えるタフさを誇る獣人族。その中でも力ある獅子の獣人故だろうか。
人が近付いて来る気配を察知したレオニダスが、最後に渾身の一撃を振るって素振り用の超重量級の棍棒をピタリと止める。
「ディーガ、お前も鍛錬か?」
「いえ、陛下にご報告があります」
現れたのは、顔に大きな傷がある巨躯の男。ディーガと呼ばれたその男は、白地にグレーの縞模様、虎獣人の中でも希少種であるホワイトタイガーの獣人だ。
ディーガは、レオニダスの右腕で魔王国との戦争にも何度も出陣し、レオニダスと共に最前線で戦い続けた武人である。とはいえ獣王国には武人しか居ないと言っても差し障りはないのだが、その武人の中でも上澄みに立つ強き戦士だ。
汗を拭ったレオニダスが、広場の端に設置された四阿にドカリと座る。
「で?」
「出入りの商人の話では、草原地帯が開発されているのは事実のようです」
「……先代魔王、暴力の化身のようなバールでさえ手を出せなかったあの地をか?」
ディーガの報せに、信じられないといった驚きの表情になるレオニダス。それも仕方ないだろう。あの自分をして勝てなかったバールが、決して手を出せなかったのが草原地帯なのだ。
勿論、草原地帯に棲息する魔物だけならバールの敵ではない。しかしその草原地帯の北には、決して足を踏み入れてはならない魔境、深淵の森がある。
草原地帯に人が多く集まると、その餌を目当てに森から魔物が出て来る。それは外縁部に棲息する魔物ならまだ何とかなるかもしれないが、中層の魔物が出現すれば、それはバールであっても死を意味する。草原地帯とはそんな地なのだ。
シグムンドが城塞都市を造ってからそれなりになるが、大陸の西の端に位置する獣王国までは、草原地帯の情報が届くのは時間が掛かったようだ。それが合同買取所が設置され、商業ギルドを除く各種ギルドが活発に動き始めたので、獣王国にも報せが届くようになった。
「草原地帯の入り口付近に、砦のような竜人族の集落が。その奥に城塞都市が在るのは間違いない情報です」
「そんなものいつの間に……」
「どちらも深淵の森の支配者の仕業という話です」
「深淵の森の支配者。俄には信じられんな」
「ただ、これは魔王国や幾つかの西方諸国連合に属する国が確認しているので確かかと」
草原地帯に砦のような集落や城塞都市が在るなど、側近から聞かされたとしても俄には信じられないレオニダス。ただ、ディーガは真っ直ぐな武人なので、嘘を吐くようの人間ではない事はレオニダスも理解していた。
それよりも深淵の森の支配者というワードは、獣王レオニダスにとって先代魔王バール以上の衝撃だった。
深淵の森。レオニダスが若かりし頃、武者修行として冒険者活動をしていた時、無謀にも深淵の森に挑戦した事があった。
結果は、ほんの数十メートル足を踏み入れた所で逃げ帰っている。外縁部の魔物ですら群れとなると手に負えない。あの魔境全域を含めた支配者など、どれ程強大な存在なのだろう。
「話はまだあります」
「まだあるのか?」
「信じられない話ですが、草原地帯の城塞都市には、あの神の使いである古竜様が滞在されているそうです。これは幾つもの筋からの確実な話で、入り口付近の竜人族の集落も、古竜様を信仰する竜人族が、古竜様詣りをする為の拠点らしいですぞ」
「……古竜など、御伽噺の存在ではないか」
草原地帯に古竜(黄金竜)が滞在している事は、草原地帯に近い西方諸国なら知る情報だった。ただ神話で語られる存在をどうこうしようとする者が居ないだけだ。いや、何処ぞの聖王やとあるリッチロードは未だ諦めていないようだが。
ただレオニダスも相手が強大だからといって尻尾を巻くような男ではなかった。一番強い者が王となる国、獣王国の玉座に長年座ってきた男だ。沸々と挑戦したい気持ちが燃え上がる。
「深淵の森の支配者に古竜か。相手に取って不足はないな」
「さすが陛下。ならばもう少し詳しく探らせてみます。国を空けるにも準備は必要ですからな」
「ああ、草原地帯となると遠いからな」
レオニダスとディーガの中では、強大な存在へ挑戦する事は決定事項のようだ。先代魔王バールに勝てない時点で、シグムンドやオオ爺サマに挑むなど、無謀……いや、それ以前の問題なのだが、そんな理性的な判断が獣王国でなされる事はない。バトルジャンキーの集団国家なのだから。
ディーガは、レオニダスの草原地帯行きを決めると、供をする者の選出に入る。決定方法は勿論、バトルロイヤル方式の武闘会。そこに参加させろと若い声が上がる。
「親父! 俺も連れて行け!」
「ふん。なら己が力で示してみせよ」
「ああ! 直ぐに親父も超えてみせる!」
レオニダスの息子マグヌスが吼える。
レオニダスと同じ獅子の獣人であるマグヌス。その潜在能力は高い。ただ、レオニダスから見るとまだまだヒヨッコ、経験不足は否めない。
獣王国には二つのダンジョンが在り、そこで国民の食糧を確保している。だからマグヌスも子供の頃から、ダンジョンでの戦闘経験を積んではいる。
ただ、ダンジョンで戦うのと戦争では、同じ戦いでも質が違う。
それに西方諸国に在るダンジョンは、シグムンドが最初に潜った深淵の森にあったダンジョンとは難易度が大きく違う。
深淵の森と西方諸国の魔力濃度の差もあるが、片方は創造神が叛逆した神の首魁を封印する為に造ったものだ。差があるのは当然で、西方諸国の国々にとってダンジョンとは資源という扱いなのだから。
我こそはと思う戦士が広い闘技場に集まり大乱闘が始まった。その中に勿論、マグヌスの他レオニダスやディーガの姿もある。
「フンッ!」
ドガッ!!
「ドリャッ!」
バキッ!!
「沈めっ!」
ドンッ!
スピード特化の狼獣人。スピードとパワーのバランスタイプの虎獣人。圧倒的なパワーでゴリ押す熊獣人。そんな中でもやはりレオニダスは圧倒的だった。
最終的に残ったのは、当然ながらレオニダスとディーガ。それに獣王国一の巨体を誇る熊獣人のグズル。黒豹の獣人レーバー。そしてギリギリマグヌスが滑り込んだ。
たった五人だが、獣王国でも精鋭中の精鋭の戦士。軍を引き連れては行けないので、なら五人でも問題ないとレオニダスが決めた。
「各自、怪我を治し体調を整え鍛錬を怠るなよ」
「出発は春。自分の荷物は自分で用意し持つように」
レオニダスとディーガから決まったメンバーに声が掛けられる。
レオニダスとディーガは、それ程目立つ怪我はないようだが、マグヌスなどはギリギリ残っただけあり、それなりにボロボロになっている。身体を休めて体調を整える時間は必要だろう。
それに今は冬真っ只中だ。頑丈な獣人族とはいえ真冬の長距離移動はつらい。野営も温かくなってからの方が断然楽だ。
西方諸国連合の中でも異端の国。バトルジャンキー達が戦いを求めて草原地帯へ。そこで何を起こすのか……
2,895
あなたにおすすめの小説
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
悪役令嬢が処刑されたあとの世界で
重田いの
ファンタジー
悪役令嬢が処刑されたあとの世界で、人々の間に静かな困惑が広がる。
魔術師は事態を把握するため使用人に聞き取りを始める。
案外、普段踏まれている側の人々の方が真実を理解しているものである。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。