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二百五十話 闘技場
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草原地帯の冬は、大陸の南側なのでそれ程厳しくない。とはいえ偶に数センチ雪が積もる事もある。ミルとララに雪遊びをさせたくて、森の拠点に大量の雪を魔法で用意したのを思い出す。
「あれからもう一年経ったんだなぁ。身近に小さな子供が居ると、時間が経つのが早いな」
「そうですね。旦那様や私たちは、老いや寿命から解き放たれた存在ですから。歳月の経過には鈍感になりがちですから」
「そう言えば俺の眷属は、寿命が長いか存在しない者達だもんな」
身近に子供が居て、その成長を見守っていれるって、俺達にとって得難い貴重な時間なんだと改めて思う。
草原地帯に冬が訪れても、俺が造った街道は多少の雪ならば残らず溶けるので、西方諸国や魔王国との行き来が途切れる事もない。
合同買取所に商業ギルドが参加していないので、わざわざアウロラまで買い付けに来るのは、中小の商会になる。大店が満足する量を仕入れられるか分からないからな。
基本的に、俺と竜人族との交易。その次に魔王国との交易。そして冒険者ギルドと錬金術師ギルド、薬師ギルドが横並びって感じか。
とはいえ教会やアウロラの商店と個人的に商売するのは禁じていない。ローズ商会も教会が造っているエールを買っていくしな。
ただ、そんなんじゃ満足できないんだろうな。強欲な商人達は。
で、そんな冬のある日、俺はダーヴィッド君から相談を受けた。
「ふ~ん。ケンカねぇ」
「はい。冒険者用の村だけあって、滞在するのは、商人の護衛で訪れた冒険者がほとんどになります。さすがに以前のような、盗賊と兼業しているような冒険者はほぼ居ませんが、それでも冒険者が集まると……」
「酒を呑んで暴れないよう、酒を提供する店は少なかったと思うんだけどなぁ」
「そうなのですが。それもストレスになっているかもしれませんね。それにお酒に関しては、自分達で安酒を持ち込んでくる者達も居ますから」
「持ち込みまで禁止出来ないもんな。呑んでもダメ。呑まなくてもダメって事か」
冒険者にケンカは付きものらしい。基本的に冒険者同士のケンカは御法度と決まっているが、それも冒険者ギルドの中でという話。外でケンカするのをいちいち冒険者ギルドは感知しない。勿論、殺人や回復が不可能な怪我を負わせた場合は罪に問われるが、初級ポーションで回復する程度なら口煩く言わないのが慣例らしい。
「いっそ闘技場でも造るか」
「闘技場ですか?」
「ああ、ケンカしたい奴は、そこで気が済むまでやらせればいい」
「それは、さすがに死人も出るのでは?」
「そこは俺が上手く結界を張るよ。ダメージが一定以上になると、闘技場の外に弾き出すようにすればいい。中級のポーションで回復可能なダメージを目安にすればいいかな。さすがに上級ポーションじゃ払える奴は居なさそうだしな。破産する奴が大量に出ると、草原地帯への護衛依頼を受ける者も居なくなりそうだ」
俺が提案したのは闘技場の建設。
魔道具で死ぬような攻撃のダメージをカットするようにしておけば、ポーションで回復できる。護衛の仕事も問題なく続けられるって仕組みだ。
「初級ポーションと中級ポーションが売れて、錬金術師ギルドと薬師ギルドは儲かるし、冒険者ギルドも依頼の失敗に繋がらないなら文句はないだろう。それに錬金術師ギルドや薬師ギルドも、深淵の森で採れた薬草なんかで作るポーションの効果を試せる」
「ポーションの効果を試すのはいいのですが、初級ポーションはともかく、中級ポーションとなると結構な値段しますよ」
「そこは冒険者ギルドで借金させればいい。ある程度痛い目見なきゃ反省しないだろう」
冒険者のガス抜きが出来て、尚且つ錬金術師ギルドと薬師ギルドにも利がある。それと深淵の森固有の薬草類を使ったポーションのテストにもなるしな。
「そうですね。グランツ支部長も交えて話し合いますか」
「だな」
「では、私が呼んで来ましょう」
冒険者の事だからと冒険者ギルドのグランツ支部長も交えて話し合いをとダーヴィッド君が言うと、静かに控えていたセブールが呼んで来ると部屋を出て行った。
「セッ、セブール殿、居たんですね」
「セブールも意地が悪いよな。気配を消して控えてたんだよ。あれ、ダーヴィッド君が気付くか試されてたんだぜ」
「……城の家庭教師や父上よりも厳しい先生ですから」
「まあ、慣れだよ慣れ。頑張って」
セブールが同じ部屋に居た事に驚くダーヴィッド君。ダーヴィッド君の技量で、気付かれるかどうかってギリギリのラインを試しているいやらしさよ。セブールにとってダーヴィッド君は元祖国の王子だからな。そんな事もあって、セブールはダーヴィッド君に対してどうしても厳しめだ。これもダーヴィッド君に期待しているからだけどな。
少ししてセブールがグランツ支部長を連れて来た。
「森神様、ダーヴィッド殿下、冒険者供の事で煩わせて申し訳ない」
「いや、冒険者用の村を造るのを進めたのも決めたのも俺達だからな」
「いえ、子供達の目に触れる事がないのが幸いだが、魔王国の衛兵や竜人族の兵にも迷惑をかけているからな」
グランツ支部長は、部屋に入るなり俺とダーヴィッド君に頭を下げ謝罪した。ケンカした冒険者を取り締まっているのが、魔王国が派遣している衛兵と竜人族の戦士だから、迷惑をかけている申し訳なさがあるんだろう。
「本来なら護衛依頼途中の冒険者が、他の冒険者とケンカなどあってはならない事なんだがな」
「そう言われればそうだな。あいつら依頼途中だもんな」
「うちの兵士や竜人族の戦士は、治安維持が仕事なので構わないのですが、あの村に暮らしている者には夫婦や親子も居ますから。放置も出来ません」
依頼途中の冒険者が、ケンカで怪我して護衛に影響が出れば、冒険者ギルドとしても見逃せない。それより俺は、せっかくこんな何も無い草原地帯に来てくれた、宿屋や雑貨屋、鍛治師の家族に危害が及ばないようにしないといけない。
「それで俺から提案なんだけど、冒険者用の村に隣接して闘技場を造ろうと思うんだ」
「……闘技場ですか」
さっそく闘技場の建設を提案してみると、グランツは考え込む。
「ああ、冒険者って、ギルドでも決闘とかで揉め事を収めるらしいじゃないか。俺が闘技場に、死ぬ事がないよう特殊な結界を張る。怪我はするだろうが、薬師ギルドと錬金術師ギルドから初級ポーションか中級ポーションを買えば、護衛依頼に差し障りがないよう上手く結界を調節するよ。冒険者はガス抜きできて、冒険者ギルドや薬師ギルド、錬金術師ギルドも儲かる。良い案だと思うけどな」
「闘技場ですか。……その初級ポーション又は中級ポーションで回復可能なダメージにとどめるって出来るんですかい?」
「ああ、それは任せてくれ」
俺が護衛依頼に差し障りが出そうなダメージをカットする結界を張ると言うと、驚きながらも本当に可能なのか確認してきたが、俺が大丈夫だと自信満々に言うと納得してくれた。
「闘技場での決闘で賭けの胴元もギルドでするか」
「いいんじゃないか。その上がりがあれば職員も増員できるしな」
「なら魔王国も噛ませてください。駐屯の兵を維持する費用の足しにしましょう」
話し合いの結果、闘技場の運営は冒険者ギルドと魔王国が共同で行う事になった。アウロラに住む人達の娯楽にもなればいいんだけどな。
「よし! 森神様。闘技場の建設と結界はお任せしていいんだな」
「ああ。ちゃっちゃと造るさ」
「なら、冒険者用の村での揉め事は、闘技場での決闘で解決するよう通達をだそう」
さて、グランツ支部長の賛同も得られた。ダーヴィッド君も手伝ってくれると言うし、俺はちゃっちゃと闘技場を建設してしまおう。
結界に関しては、オオ爺サマに相談してみるのもありだな。
さっそく翌日、俺は冒険者用の村がある直ぐ南側に来ていた。
広さは適当に、草を排除し地面を固め基礎工事を手早く済ませる。
城の時、岩山を創造したように造る事も出来るが、今回は後々結界を張りやすいよう、深淵の森のダンジョンから採掘した石材を使用する。
影収納から大量の石材を取り出し、俺の魔力で覆うと一気に造り上げる。
次の瞬間、大きさはずっと小さいが、ローマのコロッセオを真似た建造物が目の前に現れる。
「ほぉ。さすがシグムンド殿、見事な闘技場じゃの」
「さすが旦那様。お仕事が早い」
「……何と言うか、シグムンド殿はでたらめだな」
一先ず出来上がった闘技場を前に、オオ爺サマとセブールが感嘆の声を上げる。オオ爺サマに護衛なんて必要ないが、一応着いて来ていた従者である竜人のギータの表情は呆れ気味だ。
「……セブール殿、森神様ってデタラメだな」
「今更なにを。アウロラもその東にある岩山の城も旦那様自らお創りになったのですよ。普通な訳がないではないですか」
「まぁ、そりゃそうか。そもそも深淵の森の奥に住んでんだもんな」
冒険者ギルドの支部長グランツが顎を外しそうなくらい驚いているが、セブールから言わせれば、アウロラという城塞都市や岩山の城と比べれば、俺からしたら犬小屋を造るのと変わらない。
「さて、一応チェックしてから結界だな」
「楽しみじゃの。ワシも複雑な結界は興味あるからの」
「まぁ、オオ爺サマは、邪神を封じる強力な結界を何千年も維持し続けてたもんな。こんなちゃっちい繊細な結界なんて考えた事もないだろう。俺だって、わざわざダメージを一定量通す結界なんて、こんな事がなければ試そうとも思わなかったしな」
「……セブール殿。邪神を封じる結界とか聞こえたんだが」
「ハッハッ。もう終わった事ですから」
「イヤイヤイヤ」
建物のチェックが済んだら、問題の結界に取り掛かる。その為にオオ爺サマにも来てもらったんだ。オオ爺サマも楽しみにしてくれている。
そもそもオオ爺サマ達は、神から邪神の封印を護るよう創られた存在だ。強力な結界を永年維持してきただけあり、ある意味結界のスペシャリストと言える。ただ、俺もそうだけど、物理魔法問わず、どんな攻撃も通さない結界なら簡単なんだ。結界の強度を上げればいいだけだからな。俺や古竜の結界を壊せる奴なんて居ないだろう。
今回、張るのはダメージゼロではダメなんだ。丁度死なない上手い塩梅のダメージで済ませる結界。これがなかなかに難題だったりする。その分、面白いんだけどな。
邪神というワードに過剰な反応をみせるグランツ支部長は置いておいて、俺はオオ爺サマと闘技場の中へと向かう。
「ほぉ、観覧席があるのだな」
「まぁ、こんな辺境まで仕事で来るんだからストレスも溜まるだろうし娯楽も必要かと思ってね」
闘技場の舞台から周りを見渡したオオ爺サマが感嘆の声を上げる。闘技場はローマのコロッセオを真似ただけあり、観客席も備えてある。こっちではお金を取るかどうか決めていないので、一応今は観覧席と呼んでおく。
「この決闘の舞台となる場所を結界で覆うのだな」
「ああ。外から余計なちょっかいをかけられないようにと、闘いの余波が観覧席にまで及ばないようにする結界だな」
一つ目の結界はシンプルで難しくない。只々、強力な結界を施せばいいだけだ。
さて、問題はもう一つの結界だ。
「死なぬよう。しかし完全にダメージを無くすのもいかんのじゃろ?」
「そうなんですよね。その辺の加減が難しそうで、オオ爺サマの意見も聞きたかったんですよね」
「まぁ、ワシは永く生きておるし、ある意味結界の専門家じゃからの。とはいえ完全に防ぐのではなく、加減をしてダメージが通る結界など初めてじゃからな」
「ですよねぇ。普通は防げはOKですもん」
結界を魔道具に落とし込んだ場合、使う魔石の質によって結界の強度に制限がでるのは仕方ない。この闘技場も俺が張る結界が決まったら、それを魔道具にするつもりだしな。ただ、俺やオオ爺サマが本気で結界を張ると、それこそ結界が自然に無くなるまで何百年とかいう話になってしまう。そこまでの結界となると、魔道具に出来なくもないが、こんな闘技場に使うのも勿体ないしな。
「先ずは防御結界の強度を決めますか。これも魔道具にするから、強度を上げ過ぎてもね」
「魔石ならワシも手持ちが有るが、ここを運営する冒険者ギルドや魔王国で入手できるレベルにした方がいいじゃろうからな」
「ですよね。ギータ、頼めるかな?」
「お任せください」
ごちゃごちゃ考えていても進まないので、取り敢えず防御結界の性能試験をしたいと思う。俺はギータにお願いする。
ギータが闘技場の舞台の真ん中まで行くと、右腕をグッと引く。するとギータの右腕が竜化し、更に炎を纏う。
「ハッ!」
ドォォォォンーーッ!!
「ふむ。属性竜の一撃には耐えるみたいじゃのう」
「だけど十回は保ちそうにないな」
ギータの攻撃を結界は防ぎきり、それを見て俺とオオ爺サマは検証する。
「なっ!? セブール殿、彼女は竜人族だよな? 竜人族ってのは、あんな事が出来るのか?」
「ギータ嬢は竜人の始祖ですから。その力は属性竜と変わりません。今の竜人族とは別ものとお考えください」
グランツ支部長がギータの攻撃に驚いて、セブールに竜人族はあんな事が可能なのかと聞いているが、今の竜人族と一括りにしたらギータ達に失礼だな。ギータ達は、人の姿をした竜だからな。
結界の強度をどうしようか考えていると、さっきまで置き物のように立っていたダーヴィッド君が躊躇いがちに口を開く。
「シグムンド殿、竜の攻撃に十回程度耐えれれば十分だと思われますが」
「そう?」
「は、はい。我が国の精鋭が全力で攻撃しても、竜の一撃には到底及びませんから」
「ふむ。ならこの程度でいいのではないか?」
「そうだな。この程度なら魔道具にした時の魔石も長持ちするか」
ダーヴィッド君曰く、ジータの攻撃は人間基準で規格外だったらしい。この程度の結界強度でいいのなら魔道具にした時に魔石の保ちもいい。
「なら次は、内側の結界だな」
「どれ、こんな感じかの?」
「!?」
オオ爺サマが試しにと結界を張る。グランツ支部長は、それを見て唖然としているが、俺には何に驚いているのかは分からない。余りに簡単に結界を張ったのに驚いたのか。それとも無詠唱だった事に驚いたのか。まあ、もともと古竜なんだから無詠唱なのは当たり前なんだけどな。
それはさておき、オオ爺サマが張った結界を確認する。
「ん~。ちょっとダメージをカットし過ぎかも」
「そうですな。これでは勝負がつきませんな」
オオ爺サマの結界は強過ぎて、これじゃかすり傷程度しか負わないんじゃなかろうか。セブールも俺の意見に同意する。
「ふむ。ならこのくらいか」
「う~ん。これじゃ死んじゃうかも?」
「人間とは脆弱なのだな」
俺とセブールが強過ぎると言うと、直ぐに強度を弱めて張り直すが、今度は弱過ぎて死人がでるかもしれない。オオ爺サマが言うように、人間って脆弱だからな。
「一定量以上のダメージを受けると、舞台から救護室に転移される感じで……、こんな感じか」
「ほぉ、なる程のう。シグムンド殿は器用じゃの」
「まあ、オオ爺サマは、人型に慣れていないから仕方ないさ。俺は最弱スタートだから力の加減はある程度得意なんだ」
オオ爺サマの結界を参考に、俺が結界を張り直してみると、そこそこいい感じなんじゃないかな。オオ爺サマから器用だと誉められるも、俺はこの世界では最弱の部類であるゴーストとして転生しているからな。弱い時代がそれなりの期間あったから、古竜として創られたオオ爺サマと比べれば上手いのは当然だと思う。
「旦那様。転移はやり過ぎかと」
「そうだぜ森神様。転移なんて、世間じゃ伝説級の魔法だぜ」
「そう? なら……うん、これで魔道具に置き換えてもそんなに大きな魔石は必要なさそうだな」
これでOKと思ったが、セブールとグランツ支部長から待ったが掛かる。転移がダメらしい。そう言えば、転移の魔法って俺以外で余り見ないな。ちょちょっと修正すると、魔力の消費量がガクッと下がった。アドバイスは聞くものだな。
「さて、ダーヴィッド君、テスト要員はどうなっている?」
「直ぐに連れて来させます」
俺は結界の調整用要員をダーヴィッド君に頼んでいた。ダーヴィッド君は、部下に連れて来るよう指示を出す。
「グランツ支部長。テスト要員はどういう扱い?」
「冒険者資格は剥奪。盗み、誘拐に殺し。西方諸国のほぼ全ての国で極刑だな」
「なら問題ないか」
死亡判定のダメージをカットする結界。その調整には実際に試してみるしかない。で、そのテスト要員が必要になる。で、アウロラの治安維持に兵士を駐屯させている魔王国が牢に捕らえているのを使おうって話だ。
実はアウロラや草原地帯の入り口付近にある竜人族の集落で犯罪者を捕らえた場合、その犯罪者をどうするかってのが面倒だったりする。
俺やセブールは、人知れず始末しているけれど、魔王国の兵士が捕まえた犯罪者に関しては手を出していなかった。
魔王国としても、草原地帯は俺の治める地という認識なので、魔王国がこの場所で裁き難い。そこでいちいち俺やセブールにお伺いを立てて、犯罪者の罪に応じた形を執行していた。極形から鉱山送り、百叩きまで、刑罰の軽重はあるけどな。
今回のテスト要員は、最悪即死のダメージを受ける可能性もあるので、俺とセブールなら即処分するような奴だ。
やがて魔王国の兵士に連れられやって来た五人の男達。どいつも嫌な目をしているな。普段ならそれだけでイラッとして処分してしまいそうな奴らだ。
せいぜい皆んなの役に立ってもらおうか。
「あれからもう一年経ったんだなぁ。身近に小さな子供が居ると、時間が経つのが早いな」
「そうですね。旦那様や私たちは、老いや寿命から解き放たれた存在ですから。歳月の経過には鈍感になりがちですから」
「そう言えば俺の眷属は、寿命が長いか存在しない者達だもんな」
身近に子供が居て、その成長を見守っていれるって、俺達にとって得難い貴重な時間なんだと改めて思う。
草原地帯に冬が訪れても、俺が造った街道は多少の雪ならば残らず溶けるので、西方諸国や魔王国との行き来が途切れる事もない。
合同買取所に商業ギルドが参加していないので、わざわざアウロラまで買い付けに来るのは、中小の商会になる。大店が満足する量を仕入れられるか分からないからな。
基本的に、俺と竜人族との交易。その次に魔王国との交易。そして冒険者ギルドと錬金術師ギルド、薬師ギルドが横並びって感じか。
とはいえ教会やアウロラの商店と個人的に商売するのは禁じていない。ローズ商会も教会が造っているエールを買っていくしな。
ただ、そんなんじゃ満足できないんだろうな。強欲な商人達は。
で、そんな冬のある日、俺はダーヴィッド君から相談を受けた。
「ふ~ん。ケンカねぇ」
「はい。冒険者用の村だけあって、滞在するのは、商人の護衛で訪れた冒険者がほとんどになります。さすがに以前のような、盗賊と兼業しているような冒険者はほぼ居ませんが、それでも冒険者が集まると……」
「酒を呑んで暴れないよう、酒を提供する店は少なかったと思うんだけどなぁ」
「そうなのですが。それもストレスになっているかもしれませんね。それにお酒に関しては、自分達で安酒を持ち込んでくる者達も居ますから」
「持ち込みまで禁止出来ないもんな。呑んでもダメ。呑まなくてもダメって事か」
冒険者にケンカは付きものらしい。基本的に冒険者同士のケンカは御法度と決まっているが、それも冒険者ギルドの中でという話。外でケンカするのをいちいち冒険者ギルドは感知しない。勿論、殺人や回復が不可能な怪我を負わせた場合は罪に問われるが、初級ポーションで回復する程度なら口煩く言わないのが慣例らしい。
「いっそ闘技場でも造るか」
「闘技場ですか?」
「ああ、ケンカしたい奴は、そこで気が済むまでやらせればいい」
「それは、さすがに死人も出るのでは?」
「そこは俺が上手く結界を張るよ。ダメージが一定以上になると、闘技場の外に弾き出すようにすればいい。中級のポーションで回復可能なダメージを目安にすればいいかな。さすがに上級ポーションじゃ払える奴は居なさそうだしな。破産する奴が大量に出ると、草原地帯への護衛依頼を受ける者も居なくなりそうだ」
俺が提案したのは闘技場の建設。
魔道具で死ぬような攻撃のダメージをカットするようにしておけば、ポーションで回復できる。護衛の仕事も問題なく続けられるって仕組みだ。
「初級ポーションと中級ポーションが売れて、錬金術師ギルドと薬師ギルドは儲かるし、冒険者ギルドも依頼の失敗に繋がらないなら文句はないだろう。それに錬金術師ギルドや薬師ギルドも、深淵の森で採れた薬草なんかで作るポーションの効果を試せる」
「ポーションの効果を試すのはいいのですが、初級ポーションはともかく、中級ポーションとなると結構な値段しますよ」
「そこは冒険者ギルドで借金させればいい。ある程度痛い目見なきゃ反省しないだろう」
冒険者のガス抜きが出来て、尚且つ錬金術師ギルドと薬師ギルドにも利がある。それと深淵の森固有の薬草類を使ったポーションのテストにもなるしな。
「そうですね。グランツ支部長も交えて話し合いますか」
「だな」
「では、私が呼んで来ましょう」
冒険者の事だからと冒険者ギルドのグランツ支部長も交えて話し合いをとダーヴィッド君が言うと、静かに控えていたセブールが呼んで来ると部屋を出て行った。
「セッ、セブール殿、居たんですね」
「セブールも意地が悪いよな。気配を消して控えてたんだよ。あれ、ダーヴィッド君が気付くか試されてたんだぜ」
「……城の家庭教師や父上よりも厳しい先生ですから」
「まあ、慣れだよ慣れ。頑張って」
セブールが同じ部屋に居た事に驚くダーヴィッド君。ダーヴィッド君の技量で、気付かれるかどうかってギリギリのラインを試しているいやらしさよ。セブールにとってダーヴィッド君は元祖国の王子だからな。そんな事もあって、セブールはダーヴィッド君に対してどうしても厳しめだ。これもダーヴィッド君に期待しているからだけどな。
少ししてセブールがグランツ支部長を連れて来た。
「森神様、ダーヴィッド殿下、冒険者供の事で煩わせて申し訳ない」
「いや、冒険者用の村を造るのを進めたのも決めたのも俺達だからな」
「いえ、子供達の目に触れる事がないのが幸いだが、魔王国の衛兵や竜人族の兵にも迷惑をかけているからな」
グランツ支部長は、部屋に入るなり俺とダーヴィッド君に頭を下げ謝罪した。ケンカした冒険者を取り締まっているのが、魔王国が派遣している衛兵と竜人族の戦士だから、迷惑をかけている申し訳なさがあるんだろう。
「本来なら護衛依頼途中の冒険者が、他の冒険者とケンカなどあってはならない事なんだがな」
「そう言われればそうだな。あいつら依頼途中だもんな」
「うちの兵士や竜人族の戦士は、治安維持が仕事なので構わないのですが、あの村に暮らしている者には夫婦や親子も居ますから。放置も出来ません」
依頼途中の冒険者が、ケンカで怪我して護衛に影響が出れば、冒険者ギルドとしても見逃せない。それより俺は、せっかくこんな何も無い草原地帯に来てくれた、宿屋や雑貨屋、鍛治師の家族に危害が及ばないようにしないといけない。
「それで俺から提案なんだけど、冒険者用の村に隣接して闘技場を造ろうと思うんだ」
「……闘技場ですか」
さっそく闘技場の建設を提案してみると、グランツは考え込む。
「ああ、冒険者って、ギルドでも決闘とかで揉め事を収めるらしいじゃないか。俺が闘技場に、死ぬ事がないよう特殊な結界を張る。怪我はするだろうが、薬師ギルドと錬金術師ギルドから初級ポーションか中級ポーションを買えば、護衛依頼に差し障りがないよう上手く結界を調節するよ。冒険者はガス抜きできて、冒険者ギルドや薬師ギルド、錬金術師ギルドも儲かる。良い案だと思うけどな」
「闘技場ですか。……その初級ポーション又は中級ポーションで回復可能なダメージにとどめるって出来るんですかい?」
「ああ、それは任せてくれ」
俺が護衛依頼に差し障りが出そうなダメージをカットする結界を張ると言うと、驚きながらも本当に可能なのか確認してきたが、俺が大丈夫だと自信満々に言うと納得してくれた。
「闘技場での決闘で賭けの胴元もギルドでするか」
「いいんじゃないか。その上がりがあれば職員も増員できるしな」
「なら魔王国も噛ませてください。駐屯の兵を維持する費用の足しにしましょう」
話し合いの結果、闘技場の運営は冒険者ギルドと魔王国が共同で行う事になった。アウロラに住む人達の娯楽にもなればいいんだけどな。
「よし! 森神様。闘技場の建設と結界はお任せしていいんだな」
「ああ。ちゃっちゃと造るさ」
「なら、冒険者用の村での揉め事は、闘技場での決闘で解決するよう通達をだそう」
さて、グランツ支部長の賛同も得られた。ダーヴィッド君も手伝ってくれると言うし、俺はちゃっちゃと闘技場を建設してしまおう。
結界に関しては、オオ爺サマに相談してみるのもありだな。
さっそく翌日、俺は冒険者用の村がある直ぐ南側に来ていた。
広さは適当に、草を排除し地面を固め基礎工事を手早く済ませる。
城の時、岩山を創造したように造る事も出来るが、今回は後々結界を張りやすいよう、深淵の森のダンジョンから採掘した石材を使用する。
影収納から大量の石材を取り出し、俺の魔力で覆うと一気に造り上げる。
次の瞬間、大きさはずっと小さいが、ローマのコロッセオを真似た建造物が目の前に現れる。
「ほぉ。さすがシグムンド殿、見事な闘技場じゃの」
「さすが旦那様。お仕事が早い」
「……何と言うか、シグムンド殿はでたらめだな」
一先ず出来上がった闘技場を前に、オオ爺サマとセブールが感嘆の声を上げる。オオ爺サマに護衛なんて必要ないが、一応着いて来ていた従者である竜人のギータの表情は呆れ気味だ。
「……セブール殿、森神様ってデタラメだな」
「今更なにを。アウロラもその東にある岩山の城も旦那様自らお創りになったのですよ。普通な訳がないではないですか」
「まぁ、そりゃそうか。そもそも深淵の森の奥に住んでんだもんな」
冒険者ギルドの支部長グランツが顎を外しそうなくらい驚いているが、セブールから言わせれば、アウロラという城塞都市や岩山の城と比べれば、俺からしたら犬小屋を造るのと変わらない。
「さて、一応チェックしてから結界だな」
「楽しみじゃの。ワシも複雑な結界は興味あるからの」
「まぁ、オオ爺サマは、邪神を封じる強力な結界を何千年も維持し続けてたもんな。こんなちゃっちい繊細な結界なんて考えた事もないだろう。俺だって、わざわざダメージを一定量通す結界なんて、こんな事がなければ試そうとも思わなかったしな」
「……セブール殿。邪神を封じる結界とか聞こえたんだが」
「ハッハッ。もう終わった事ですから」
「イヤイヤイヤ」
建物のチェックが済んだら、問題の結界に取り掛かる。その為にオオ爺サマにも来てもらったんだ。オオ爺サマも楽しみにしてくれている。
そもそもオオ爺サマ達は、神から邪神の封印を護るよう創られた存在だ。強力な結界を永年維持してきただけあり、ある意味結界のスペシャリストと言える。ただ、俺もそうだけど、物理魔法問わず、どんな攻撃も通さない結界なら簡単なんだ。結界の強度を上げればいいだけだからな。俺や古竜の結界を壊せる奴なんて居ないだろう。
今回、張るのはダメージゼロではダメなんだ。丁度死なない上手い塩梅のダメージで済ませる結界。これがなかなかに難題だったりする。その分、面白いんだけどな。
邪神というワードに過剰な反応をみせるグランツ支部長は置いておいて、俺はオオ爺サマと闘技場の中へと向かう。
「ほぉ、観覧席があるのだな」
「まぁ、こんな辺境まで仕事で来るんだからストレスも溜まるだろうし娯楽も必要かと思ってね」
闘技場の舞台から周りを見渡したオオ爺サマが感嘆の声を上げる。闘技場はローマのコロッセオを真似ただけあり、観客席も備えてある。こっちではお金を取るかどうか決めていないので、一応今は観覧席と呼んでおく。
「この決闘の舞台となる場所を結界で覆うのだな」
「ああ。外から余計なちょっかいをかけられないようにと、闘いの余波が観覧席にまで及ばないようにする結界だな」
一つ目の結界はシンプルで難しくない。只々、強力な結界を施せばいいだけだ。
さて、問題はもう一つの結界だ。
「死なぬよう。しかし完全にダメージを無くすのもいかんのじゃろ?」
「そうなんですよね。その辺の加減が難しそうで、オオ爺サマの意見も聞きたかったんですよね」
「まぁ、ワシは永く生きておるし、ある意味結界の専門家じゃからの。とはいえ完全に防ぐのではなく、加減をしてダメージが通る結界など初めてじゃからな」
「ですよねぇ。普通は防げはOKですもん」
結界を魔道具に落とし込んだ場合、使う魔石の質によって結界の強度に制限がでるのは仕方ない。この闘技場も俺が張る結界が決まったら、それを魔道具にするつもりだしな。ただ、俺やオオ爺サマが本気で結界を張ると、それこそ結界が自然に無くなるまで何百年とかいう話になってしまう。そこまでの結界となると、魔道具に出来なくもないが、こんな闘技場に使うのも勿体ないしな。
「先ずは防御結界の強度を決めますか。これも魔道具にするから、強度を上げ過ぎてもね」
「魔石ならワシも手持ちが有るが、ここを運営する冒険者ギルドや魔王国で入手できるレベルにした方がいいじゃろうからな」
「ですよね。ギータ、頼めるかな?」
「お任せください」
ごちゃごちゃ考えていても進まないので、取り敢えず防御結界の性能試験をしたいと思う。俺はギータにお願いする。
ギータが闘技場の舞台の真ん中まで行くと、右腕をグッと引く。するとギータの右腕が竜化し、更に炎を纏う。
「ハッ!」
ドォォォォンーーッ!!
「ふむ。属性竜の一撃には耐えるみたいじゃのう」
「だけど十回は保ちそうにないな」
ギータの攻撃を結界は防ぎきり、それを見て俺とオオ爺サマは検証する。
「なっ!? セブール殿、彼女は竜人族だよな? 竜人族ってのは、あんな事が出来るのか?」
「ギータ嬢は竜人の始祖ですから。その力は属性竜と変わりません。今の竜人族とは別ものとお考えください」
グランツ支部長がギータの攻撃に驚いて、セブールに竜人族はあんな事が可能なのかと聞いているが、今の竜人族と一括りにしたらギータ達に失礼だな。ギータ達は、人の姿をした竜だからな。
結界の強度をどうしようか考えていると、さっきまで置き物のように立っていたダーヴィッド君が躊躇いがちに口を開く。
「シグムンド殿、竜の攻撃に十回程度耐えれれば十分だと思われますが」
「そう?」
「は、はい。我が国の精鋭が全力で攻撃しても、竜の一撃には到底及びませんから」
「ふむ。ならこの程度でいいのではないか?」
「そうだな。この程度なら魔道具にした時の魔石も長持ちするか」
ダーヴィッド君曰く、ジータの攻撃は人間基準で規格外だったらしい。この程度の結界強度でいいのなら魔道具にした時に魔石の保ちもいい。
「なら次は、内側の結界だな」
「どれ、こんな感じかの?」
「!?」
オオ爺サマが試しにと結界を張る。グランツ支部長は、それを見て唖然としているが、俺には何に驚いているのかは分からない。余りに簡単に結界を張ったのに驚いたのか。それとも無詠唱だった事に驚いたのか。まあ、もともと古竜なんだから無詠唱なのは当たり前なんだけどな。
それはさておき、オオ爺サマが張った結界を確認する。
「ん~。ちょっとダメージをカットし過ぎかも」
「そうですな。これでは勝負がつきませんな」
オオ爺サマの結界は強過ぎて、これじゃかすり傷程度しか負わないんじゃなかろうか。セブールも俺の意見に同意する。
「ふむ。ならこのくらいか」
「う~ん。これじゃ死んじゃうかも?」
「人間とは脆弱なのだな」
俺とセブールが強過ぎると言うと、直ぐに強度を弱めて張り直すが、今度は弱過ぎて死人がでるかもしれない。オオ爺サマが言うように、人間って脆弱だからな。
「一定量以上のダメージを受けると、舞台から救護室に転移される感じで……、こんな感じか」
「ほぉ、なる程のう。シグムンド殿は器用じゃの」
「まあ、オオ爺サマは、人型に慣れていないから仕方ないさ。俺は最弱スタートだから力の加減はある程度得意なんだ」
オオ爺サマの結界を参考に、俺が結界を張り直してみると、そこそこいい感じなんじゃないかな。オオ爺サマから器用だと誉められるも、俺はこの世界では最弱の部類であるゴーストとして転生しているからな。弱い時代がそれなりの期間あったから、古竜として創られたオオ爺サマと比べれば上手いのは当然だと思う。
「旦那様。転移はやり過ぎかと」
「そうだぜ森神様。転移なんて、世間じゃ伝説級の魔法だぜ」
「そう? なら……うん、これで魔道具に置き換えてもそんなに大きな魔石は必要なさそうだな」
これでOKと思ったが、セブールとグランツ支部長から待ったが掛かる。転移がダメらしい。そう言えば、転移の魔法って俺以外で余り見ないな。ちょちょっと修正すると、魔力の消費量がガクッと下がった。アドバイスは聞くものだな。
「さて、ダーヴィッド君、テスト要員はどうなっている?」
「直ぐに連れて来させます」
俺は結界の調整用要員をダーヴィッド君に頼んでいた。ダーヴィッド君は、部下に連れて来るよう指示を出す。
「グランツ支部長。テスト要員はどういう扱い?」
「冒険者資格は剥奪。盗み、誘拐に殺し。西方諸国のほぼ全ての国で極刑だな」
「なら問題ないか」
死亡判定のダメージをカットする結界。その調整には実際に試してみるしかない。で、そのテスト要員が必要になる。で、アウロラの治安維持に兵士を駐屯させている魔王国が牢に捕らえているのを使おうって話だ。
実はアウロラや草原地帯の入り口付近にある竜人族の集落で犯罪者を捕らえた場合、その犯罪者をどうするかってのが面倒だったりする。
俺やセブールは、人知れず始末しているけれど、魔王国の兵士が捕まえた犯罪者に関しては手を出していなかった。
魔王国としても、草原地帯は俺の治める地という認識なので、魔王国がこの場所で裁き難い。そこでいちいち俺やセブールにお伺いを立てて、犯罪者の罪に応じた形を執行していた。極形から鉱山送り、百叩きまで、刑罰の軽重はあるけどな。
今回のテスト要員は、最悪即死のダメージを受ける可能性もあるので、俺とセブールなら即処分するような奴だ。
やがて魔王国の兵士に連れられやって来た五人の男達。どいつも嫌な目をしているな。普段ならそれだけでイラッとして処分してしまいそうな奴らだ。
せいぜい皆んなの役に立ってもらおうか。
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