中の御所奮闘記~大賢者が異世界転生

小狐丸

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東国は複雑怪奇

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 元亀二年(1571年)二月 伊勢国  桑名城

 源太郎は拡がりすぎた領地の経営に腐心していた。

 伊勢と畿内は問題ないが、西の毛利は臣従したとしても直ぐに信を置くには怖い。

 何と言っても謀神、毛利元就だ。

 そろそろ寿命的に亡くなるだろうと考えているが、毛利元就は息子に恵まれている。

 そうそう裏切りはしないだろうが、警戒はしておく必要がある。

 その為にも姫路城はあの地域で重要な楔になり得る。

「しかし、東北は魑魅魍魎蠢く土地ですな」
「そうですな」
「ああ、いっその事関わらずに出来ればと思う程にな」

 半兵衛が広く集めた東北方面からの情報を見て、ため息混じりにそう言う。それに十兵衛もしみじみと頷く。
 源太郎も日ノ本を統一して戦をなくし、外国勢力に負けない国を創る目標がなければ、手を出したくない土地だった。

 東北地方の国人衆や豪族は、それが生き残る為に必要だったのだろうが、複雑に血縁で結ばれている。

 そしてその血縁同士で時には戦い、時には手を組みを繰り返す。

「調略なんて面倒は辞めて、全部戦で潰したくなるな」
「同感ですね」
「ええ、無駄に名門を気取る家も多いですからな」

 伊達は藤原氏の末裔、南部は武田氏の一族、最上は足利氏の流れを汲む士族、相馬氏は平将門を先祖に持つ氏族、坂上田村麻呂を祖先に持つ田村氏、他にも蘆名氏や大崎氏など、少し上げるだけで、気位の高い厄介な血筋の家ばかりだ。

 源太郎のうろ覚えな知識では、蘆名氏、最上氏、伊達氏を何とか出来ればと思うも、こちらが北畠でも素直に下るとは思えなかった。

「まあ、今は関東も手付かずだからな。徳川殿もじり貧のようだしな」
「織田殿は信濃から甲斐へはもう少し時間が必要でしょうしね」
「飛騨はこの際放置でいいでしょうね」
「ああ、後でどうとでもなる」

 だいたい東へ向かうのは織田と徳川なので、北畠には今のところ関係ない。

 ただ、今の織田と徳川では、今川と北条は難しいと源太郎は考えていた。


 それに源太郎としては九州の統一が先だ。

 その前に四国が残ってはいるが、石山城を拠点として四国を制圧し、姫路城を拠点に九州へ向かう。

 四国には野心家の長曾我部元親が居る。土佐国司の一条兼定はこのまま押されて土佐を失うだろう。同じ公卿家でもあり、京の一条家辺りに援助を頼まれると面倒だが、土佐一条家は残す価値はないだろう。

「九州征伐には毛利が先鋒をと願い出ています」
「まあ、毛利は大きくなろうとすると、九州しかないからな」
「はい。大友家は潰さねばなりませんしね」

 そう、大友宗麟が有名な九州の雄大友家は確実に潰す。

 大友家として、家を残すかもしれないが、キリシタン大名としての大友家は要らない。

 これは源太郎、半兵衛、十兵衛共通の認識だった。

 あろう事か、大友宗麟は硝石などを日ノ本の民を売る事で買っている。

 大友宗麟だけじゃないだろうが、たまたまそれを掴んだ北畠第一艦隊の小浜景隆が南蛮船を拿捕して奴隷となった民を救出している。

 南蛮人には悪いが魚の餌になって貰った。

 その後、北畠水軍の訓練として、倭寇や南蛮船の拿捕を取り入れている。

 勿論、ただ交易品のみを積む船には手を出してはいない。

「本格的に九州征伐が動くのは、姫路城が完成してからですね」
「ああ、それと殿、大友家から書状が来てましたな」
「ああ、無視だ、無視」

 半兵衛が暫くは内政に専念だと言うと、十兵衛が思い出したように、大友宗麟からの書状の話をした。

 大友宗麟も毛利家が北畠家に臣従して焦ったんだろうな。

 九州の大名とはいえ、畿内の様子に無頓着ではいられない。

 同盟関係にある織田家の尾張と美濃を除く、日ノ本の中央をほぼ抑え、西へと勢力を伸ばしたかと思えば、毛利家まで臣従させた北畠を警戒しない訳がない。

「内容は?」
「茶々か茜が欲しいんだと。今更、同盟などあり得んな」
「それはまた、時世が読めないとは、大友宗麟、耄碌しましたかな」

 茶々と茜はまだ幼い子供なので、直ぐに婚姻とはならないのは当たり前だが、それでも大友家と婚約はあり得ない。

 源太郎から見る大友宗麟は、イスパニアの先兵に等しいのだから。

「まあ、九州はまだ分かりやすいからいいな。東北の事を考えたら憂鬱になる」
「主上さえ許して頂ければ、本当に一度更地にした方がいいかもしれませんな」
「ああ、だけど公卿家にも繋がりがある家が多いからな」

 本当に面倒なので、臣従をしないで敵対した場合、迷わず潰すほうが後の統治も楽だろう。

「まっ、暫くは義兄上と徳川殿のお手並み拝見かな」
「ですな。その間、領内統治と軍備に努めましょう」

 源太郎が、織田と徳川の様子を見ながら、暫くは内政に集中すると言うと、半兵衛もそれに賛成し、十兵衛も頷く。

 それぞれ久しぶりに家族との時間も過ごせるとあって、仕事を早く終わらせようと没頭していった。



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