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ガルシェバルVSリベリオン
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紅蓮の支配圏《熾烈の王座》
玉座の間は、常に熱を孕んだ静寂に満ちていた。床の大理石は微かに赤く脈打ち、空気には甘く焦げた匂いが漂う。
玉座に座すガルシェバル=ヴォル=カデスは、赤黒の法衣をまとい、焼け残った鎖を両腕に絡めたまま、静かに来訪者を見据えていた。
扉が、重い音を立てて開く。
現れたのは白髪の青年――リベリオン=ヴァイス。
黒いコートを翻し、腰の拳銃を指で軽く叩きながら、彼は口角を吊り上げる。
「よお、熾烈王。相変わらず暑苦しい部屋だな。ここにいると、心臓が勝手に高鳴っちまう」
ガルシェバルの、琥珀に血を溶かしたような瞳が青年を測る。片眼は冷え切り、もう片眼には、すでに熱が宿り始めていた。
「リベリオン=ヴァイス。元・銀警察副隊長。規則を破り、秩序を嘲笑う者」
低く、平坦な声。感情の起伏は、ほとんど感じられない。
「我が領域に、何の用だ」
リベリオンは肩をすくめ、玉座の前に立つ。距離は十メートル。だが、その間はすでに灼熱の鎖で満たされているかのようだった。
「用ってほどじゃない。ただ、噂を聞きに来ただけさ。『愛を罰し、罰を愛する者』が、最近また誰かを焼き払ったってね。銀警察の残党らしい。……僕の知り合いだった」
ガルシェバルの表情は動かない。だが、背後の燃え尽きかけた翼が、わずかに灰を散らした。
「裏切りは、愛の欠如だ。それを正すのが、我が務め」
「へえ。正す、ね」
リベリオンは一歩、前へ出る。体感温度が跳ね上がり、心拍が速まる錯覚に襲われる。それでも、彼の笑みは崩れない。
「僕は支配ってやつが嫌いでさ。誰かが誰かを縛って、『これが正しい』って押し付けるのが。特に――愛の名を借りた支配は、最悪だ」
ガルシェバルの声に、かすかな熱が混じる。
「支配は奉仕だ。愛とは、破壊を含む抱擁。君には理解できまい」
「理解できるさ。だって僕も、愛したいんだ。死ぬほど、誰かを。死ぬほど、人を」
リベリオンはコートのポケットから煙草を取り出し、火を点けぬまま唇に挟む。
「でも僕は縛らない。壊さない。守りたいものは、自由にさせたい。それが僕の愛だ」
ガルシェバルが、ゆっくりと立ち上がる。
身長二八二センチの巨躯が動いた瞬間、部屋の熱がさらに濃くなる。鎖が、かすかに鳴った。
「自由とは、愛の欠如。君の言う愛は、ただの放任だ。やがて灰になる」
「灰か。いいね、それ」
リベリオンは煙草を指で弾き、床に落として踏み潰す。
「僕も灰になりたい。誰かと一緒に燃え尽きて。でもそれは、僕が決める。他人に強制されてじゃない」
沈黙が、二人の間に落ちる。
ガルシェバルの右手が、ゆっくりと持ち上がる。白金製の拳銃《ガル=ガボス》が姿を現す。銃口は、まだ向けられていない。
「君の執着は、何だ」
リベリオンは、愉快そうに笑いながら自分の拳銃に手を伸ばす。
「僕の執着? 簡単だよ。誰も僕の愛を汚さないでほしい。それだけ」
ガルシェバルの瞳に、狂おしいほどの情熱が灯る。
「ならば、君は僕を愛せぬか」
唐突な言葉に、リベリオンは目を見開く。
「僕を縛る者よ。同時に、僕を解く者でもあれ――共に燃えよう」
詩のように、熱を帯びた声。
一瞬、リベリオンは言葉を失い――そして、吹き出した。
「ははっ! まじかよ。君、僕に惚れた?」
ガルシェバルは答えない。ただ、銃口をわずかに下げる。
「愛とは、己を燃やして他者を照らすことだ。影を恐れるな」
リベリオンはコートを脱ぎ捨てる。白いシャツが熱に濡れ、肌に張りついていた。
「悪いな、熾烈王。僕は影のままでいい。照らされるのも、照らすのも――僕が決める」
二人の拳銃が、同時に上がる。
部屋の温度が、臨界に達する。
紅蓮の玉座の間で、愛と自由が激しく衝突しようとしていた。
「愛は焚刑に似たり。偽りを焼き、真実を灰にする」
「じゃあ、僕の真実は――」
リベリオンは笑う。
「――君が決めるなよ」
銃声が、重なった。
熱と硝煙と灰が舞い上がる。
二人の物語は、まだ始まったばかりだった。
翌日、二人の遺体がゴミ収集車に回収されました。
「テメェ等に真実もクソも無ェ」――レギウス
「元から灰な奴等が何言ってんだ?」――レイモンド
玉座の間は、常に熱を孕んだ静寂に満ちていた。床の大理石は微かに赤く脈打ち、空気には甘く焦げた匂いが漂う。
玉座に座すガルシェバル=ヴォル=カデスは、赤黒の法衣をまとい、焼け残った鎖を両腕に絡めたまま、静かに来訪者を見据えていた。
扉が、重い音を立てて開く。
現れたのは白髪の青年――リベリオン=ヴァイス。
黒いコートを翻し、腰の拳銃を指で軽く叩きながら、彼は口角を吊り上げる。
「よお、熾烈王。相変わらず暑苦しい部屋だな。ここにいると、心臓が勝手に高鳴っちまう」
ガルシェバルの、琥珀に血を溶かしたような瞳が青年を測る。片眼は冷え切り、もう片眼には、すでに熱が宿り始めていた。
「リベリオン=ヴァイス。元・銀警察副隊長。規則を破り、秩序を嘲笑う者」
低く、平坦な声。感情の起伏は、ほとんど感じられない。
「我が領域に、何の用だ」
リベリオンは肩をすくめ、玉座の前に立つ。距離は十メートル。だが、その間はすでに灼熱の鎖で満たされているかのようだった。
「用ってほどじゃない。ただ、噂を聞きに来ただけさ。『愛を罰し、罰を愛する者』が、最近また誰かを焼き払ったってね。銀警察の残党らしい。……僕の知り合いだった」
ガルシェバルの表情は動かない。だが、背後の燃え尽きかけた翼が、わずかに灰を散らした。
「裏切りは、愛の欠如だ。それを正すのが、我が務め」
「へえ。正す、ね」
リベリオンは一歩、前へ出る。体感温度が跳ね上がり、心拍が速まる錯覚に襲われる。それでも、彼の笑みは崩れない。
「僕は支配ってやつが嫌いでさ。誰かが誰かを縛って、『これが正しい』って押し付けるのが。特に――愛の名を借りた支配は、最悪だ」
ガルシェバルの声に、かすかな熱が混じる。
「支配は奉仕だ。愛とは、破壊を含む抱擁。君には理解できまい」
「理解できるさ。だって僕も、愛したいんだ。死ぬほど、誰かを。死ぬほど、人を」
リベリオンはコートのポケットから煙草を取り出し、火を点けぬまま唇に挟む。
「でも僕は縛らない。壊さない。守りたいものは、自由にさせたい。それが僕の愛だ」
ガルシェバルが、ゆっくりと立ち上がる。
身長二八二センチの巨躯が動いた瞬間、部屋の熱がさらに濃くなる。鎖が、かすかに鳴った。
「自由とは、愛の欠如。君の言う愛は、ただの放任だ。やがて灰になる」
「灰か。いいね、それ」
リベリオンは煙草を指で弾き、床に落として踏み潰す。
「僕も灰になりたい。誰かと一緒に燃え尽きて。でもそれは、僕が決める。他人に強制されてじゃない」
沈黙が、二人の間に落ちる。
ガルシェバルの右手が、ゆっくりと持ち上がる。白金製の拳銃《ガル=ガボス》が姿を現す。銃口は、まだ向けられていない。
「君の執着は、何だ」
リベリオンは、愉快そうに笑いながら自分の拳銃に手を伸ばす。
「僕の執着? 簡単だよ。誰も僕の愛を汚さないでほしい。それだけ」
ガルシェバルの瞳に、狂おしいほどの情熱が灯る。
「ならば、君は僕を愛せぬか」
唐突な言葉に、リベリオンは目を見開く。
「僕を縛る者よ。同時に、僕を解く者でもあれ――共に燃えよう」
詩のように、熱を帯びた声。
一瞬、リベリオンは言葉を失い――そして、吹き出した。
「ははっ! まじかよ。君、僕に惚れた?」
ガルシェバルは答えない。ただ、銃口をわずかに下げる。
「愛とは、己を燃やして他者を照らすことだ。影を恐れるな」
リベリオンはコートを脱ぎ捨てる。白いシャツが熱に濡れ、肌に張りついていた。
「悪いな、熾烈王。僕は影のままでいい。照らされるのも、照らすのも――僕が決める」
二人の拳銃が、同時に上がる。
部屋の温度が、臨界に達する。
紅蓮の玉座の間で、愛と自由が激しく衝突しようとしていた。
「愛は焚刑に似たり。偽りを焼き、真実を灰にする」
「じゃあ、僕の真実は――」
リベリオンは笑う。
「――君が決めるなよ」
銃声が、重なった。
熱と硝煙と灰が舞い上がる。
二人の物語は、まだ始まったばかりだった。
翌日、二人の遺体がゴミ収集車に回収されました。
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