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ガルシェバルVSガルマ=ガレクト
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紅蓮の支配圏《熾烈の王座》――その深部にある王座の間は、常に熱を孕んでいた。
床の大理石は赤く脈打ち、空気は甘く焦げた匂いを帯びて揺らめく。
玉座には、ガルシェバル=ヴォル=カデスが座していた。
二八二センチの巨躯を赤黒の法衣に包み、胸元の焦げた紋章が静かに光を放つ。背後に広がる翼は灰を散らし、かすかに震えている。琥珀と血が溶け合った双眸――一方は氷のように冷ややかで、もう一方は狂おしいほど燃え盛っていた。
扉が開く。
現れたのは、白髪を乱し、黒と群青に裂けた外套を纏う男――ガルマ=ガレクト。
感情を欠いた白色の瞳。指先の金属質のリングが、微かな音を立てる。コートの裂け目から覗く歯車状のネックレスが、低く軋んだ。
二人は、言葉もなく視線を交わす。
最初に沈黙を破ったのはガルシェバルだった。低く、静かで、それでいて芯に熱を宿した声。
「……来たか、虚理の暴君よ」
ガルマは薄く笑う。歪んだのは唇の端だけだ。
「熾烈王。愛を罰と呼ぶ者。君の王座は相変わらずだな――息苦しいほどに熱い」
ガルシェバルはゆっくりと立ち上がる。
腕の鎖が鳴り、幻の熱が室内をさらに灼いた。近くにいるだけで心拍が早まる錯覚。ガルマの表情は変わらないが、白い瞳の奥にわずかな揺らぎが走る。
「熱い? これは愛の温度だ。君のような冷たい知の亡者に、理解できるものか」
ガルマは一歩、前に出る。ブーツの音が大理石に乾いた余韻を残した。
「理解? 僕はすべてを理解する。君の情念も、支配も、破滅的な抱擁も。――ただ、それを嗤うだけだ。愛などという甘い幻想で世界を縛り、焼き尽くす。愚かしい」
ガルシェバルの冷たい片眼が細められ、もう一方の眼は激しく燃え上がる。
「愚かしいのは君だ、ガルマ=ガレクト。知を暴へと堕とし、理を歪めて悦に入る。その支配は空虚だ。そこに熱はない。愛もない」
ガルマは首を傾げ、指先で虚空をなぞった。
金属質の記号が一瞬、宙に浮かんでは消える。
「熱も愛も、ただの認識の歪みだ。僕はそれを正しく書き換える。君の“愛”も、いずれ僕の《認識侵触》で崩壊するだろう。罰を愛と呼び、愛を罰と呼ぶその倒錯――美しいが、無意味だ」
ガルシェバルの翼が大きく広がり、灰が舞い散る。
室温は急激に上昇し、空気そのものが歪んだ。
「無意味だと? ならば試してみろ。君の虚理の冠で、僕の情念を崩してみせろ」
右手を掲げると、白金の拳銃《ガル=ガボス》が虚空から実体化する。
静かな銃口が、真っ直ぐにガルマを捉えた。
ガルマは微動だにしない。
代わりに、外套の裂け目から歯車が音を立てて回転を始める。白色の瞳の半分が、歯車の文様に侵食されていった。
「試すか。いいだろう。だが熾烈王――君は僕を愛する。僕の理が君を焼き、僕の暴が君を抱く。そして君は、それを罰と呼ぶ」
ガルシェバルは、わずかに微笑んだ。
恋人に向けるように甘く、それでいて灼けつくほど熱を帯びて。
「違う。僕はそれを愛と呼ぶ。君を焼き尽くし、灰にしても――なお、君を抱くだろう」
二人の間で、紅蓮の炎と崩壊の残響が交錯する。
ガルシェバルは静かに呟いた。
「愛とは、己を燃やし、他者を照らすことだ。影を恐れるな、ガルマ」
ガルマは答える。冷たく、しかしどこか愉悦を含んだ声で。
「知は暴に堕ち、暴は理を語る。そして――愛は、ただの歪みに過ぎない」
王座の間は、灼熱と崩壊の狭間で震えていた。
二人は互いを焼き、互いを歪め、互いを支配しようと――永遠に抱き合い続ける運命にあった。
翌日、二人の遺体がゴミ収集車に回収されました。
「ウザイから消えろ」――ケプラー
「何書いてるか分かんねぇなこの文章な」――ヴェルム
床の大理石は赤く脈打ち、空気は甘く焦げた匂いを帯びて揺らめく。
玉座には、ガルシェバル=ヴォル=カデスが座していた。
二八二センチの巨躯を赤黒の法衣に包み、胸元の焦げた紋章が静かに光を放つ。背後に広がる翼は灰を散らし、かすかに震えている。琥珀と血が溶け合った双眸――一方は氷のように冷ややかで、もう一方は狂おしいほど燃え盛っていた。
扉が開く。
現れたのは、白髪を乱し、黒と群青に裂けた外套を纏う男――ガルマ=ガレクト。
感情を欠いた白色の瞳。指先の金属質のリングが、微かな音を立てる。コートの裂け目から覗く歯車状のネックレスが、低く軋んだ。
二人は、言葉もなく視線を交わす。
最初に沈黙を破ったのはガルシェバルだった。低く、静かで、それでいて芯に熱を宿した声。
「……来たか、虚理の暴君よ」
ガルマは薄く笑う。歪んだのは唇の端だけだ。
「熾烈王。愛を罰と呼ぶ者。君の王座は相変わらずだな――息苦しいほどに熱い」
ガルシェバルはゆっくりと立ち上がる。
腕の鎖が鳴り、幻の熱が室内をさらに灼いた。近くにいるだけで心拍が早まる錯覚。ガルマの表情は変わらないが、白い瞳の奥にわずかな揺らぎが走る。
「熱い? これは愛の温度だ。君のような冷たい知の亡者に、理解できるものか」
ガルマは一歩、前に出る。ブーツの音が大理石に乾いた余韻を残した。
「理解? 僕はすべてを理解する。君の情念も、支配も、破滅的な抱擁も。――ただ、それを嗤うだけだ。愛などという甘い幻想で世界を縛り、焼き尽くす。愚かしい」
ガルシェバルの冷たい片眼が細められ、もう一方の眼は激しく燃え上がる。
「愚かしいのは君だ、ガルマ=ガレクト。知を暴へと堕とし、理を歪めて悦に入る。その支配は空虚だ。そこに熱はない。愛もない」
ガルマは首を傾げ、指先で虚空をなぞった。
金属質の記号が一瞬、宙に浮かんでは消える。
「熱も愛も、ただの認識の歪みだ。僕はそれを正しく書き換える。君の“愛”も、いずれ僕の《認識侵触》で崩壊するだろう。罰を愛と呼び、愛を罰と呼ぶその倒錯――美しいが、無意味だ」
ガルシェバルの翼が大きく広がり、灰が舞い散る。
室温は急激に上昇し、空気そのものが歪んだ。
「無意味だと? ならば試してみろ。君の虚理の冠で、僕の情念を崩してみせろ」
右手を掲げると、白金の拳銃《ガル=ガボス》が虚空から実体化する。
静かな銃口が、真っ直ぐにガルマを捉えた。
ガルマは微動だにしない。
代わりに、外套の裂け目から歯車が音を立てて回転を始める。白色の瞳の半分が、歯車の文様に侵食されていった。
「試すか。いいだろう。だが熾烈王――君は僕を愛する。僕の理が君を焼き、僕の暴が君を抱く。そして君は、それを罰と呼ぶ」
ガルシェバルは、わずかに微笑んだ。
恋人に向けるように甘く、それでいて灼けつくほど熱を帯びて。
「違う。僕はそれを愛と呼ぶ。君を焼き尽くし、灰にしても――なお、君を抱くだろう」
二人の間で、紅蓮の炎と崩壊の残響が交錯する。
ガルシェバルは静かに呟いた。
「愛とは、己を燃やし、他者を照らすことだ。影を恐れるな、ガルマ」
ガルマは答える。冷たく、しかしどこか愉悦を含んだ声で。
「知は暴に堕ち、暴は理を語る。そして――愛は、ただの歪みに過ぎない」
王座の間は、灼熱と崩壊の狭間で震えていた。
二人は互いを焼き、互いを歪め、互いを支配しようと――永遠に抱き合い続ける運命にあった。
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