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ガルシェバルVS 秩序機構
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紅蓮の支配圏《熾烈の王座》は、絶えず炎の揺らめきに満ちていた。
灰色の空の下、焦げた薔薇が無数に散る玉座に、ガルシェバル=ヴォル=カデスは腰を下ろしている。身長二八二センチの強靭な体躯を赤黒の法衣に包み、両腕に絡みつく焼け残りの鎖が、幻の熱を放っていた。瞳は琥珀に血を溶かした紅白金――一方は冷徹に世界を測り、もう一方は狂おしい情熱を宿す。
「熾烈王」「抱焔者」
そして、“愛を罰し、罰を愛する者”。
その日、王座に侵入者が現れた。
秩序機構――ガシャバ直属の特権機構である。頂点に立つガシャバと、三柱の従僕。コーアーション=グラビタス、コンデムネイション=ジャッジサーキット、コンパルション=オーバーラプス。国家の意思を体現する存在だ。白を基調とした軍服とコート、脈動する金血の回路。理念句は明確だった。
「秩序なくして国家なし。痛みは必要悪。」
ガシャバは沈黙を保ったまま、後ろ刈り上げの白髪の下から白い瞳でガルシェバルを睨む。彼自身が威圧であり、部下は「秩序の三定数」として配置されていた。
「貴様の情念は秩序を乱す。排除する」
短く、無慈悲な宣告。
ガルシェバルはゆっくりと立ち上がり、燃え尽きかけた翼を広げた。近くにいるだけで体感温度が上がり、心拍が速まる錯覚を与える存在感が、機構の面々を包む。
「秩序? それは愛の欠如だ。君らを焼くことで、愛を教えてやろう」
低い声は静かに、しかし確実に熱を帯びていく。
戦いは、ガシャバの合図で始まった。
最初に動いたのはコーアーション=グラビタス。白髪の屈強な男。V字型マスクの奥で、金血回路が視覚干渉を走らせる。《重圧コア》が起動し、金血の重力球が放たれた。
「……抹殺」
思考を押し潰す重圧が、ガルシェバルの精神にのしかかる。だが彼は微笑んだ。冷徹な片眼が状況を測り、情熱の片眼が燃え上がる。
「恐怖は愛の影だ。君の重圧など、抱擁に過ぎぬ」
権能《焼灼の鎖》が発動する。情念の炎で編まれた枷がグラビタスを包み、逃れようとするほど熱を増した。焼かれるのは肉体ではない。心の自由だ。重力球は失速し、ガルシェバルは拳銃《ガル=ガボス》を抜く。
放たれた弾丸は物質ではなく、裁きとしての情念。
グラビタスの「秩序への忠誠」を燃料に威力を増し、胸を貫いた。金血が噴き、重力場が崩れる。
「意味が……不明……」
膝をつき、沈黙。
続いて、コンデムネイション=ジャッジサーキットが踏み出す。白金のサイバーゴーグルが金血を流し、思想解析の光が脈動する。
「全て修正する」
《断罪スキャナー》が放たれ、理想そのものを「誤り」として削除する破壊光が翼を焦がす。灰が舞った。
ガルシェバルは痛みを、愛のように受け止める。
「理想は不要? 真実は灰の中にある」
《狂熱の審判》
歪んだ正義としての激情が叩きつけられ、紅蓮の炎がジャッジサーキットを包む。ゴーグルが溶け、《ゴールデン・ジャッジタワー》が召喚されるが、《燃焼支配》が周囲の感情温度を歪めた。愛と憎しみ、忠誠と敵意の境界が溶け落ちる。
「無念……誠に……遺憾……」
言葉は途切れ、炎に飲まれた。
《ガル=ガボス》の一撃が、彼の内に潜んでいたわずかな「裏切り」を燃料に、心を撃ち抜く。塔は崩れ落ちた。
次に現れたのは、コンパルション=オーバーラプス。白金の伊達眼鏡と丸印のピアス。笑みを浮かべて進み出る。
「キミの心、ぶっ壊す!」
《鎖符(チェインコード)》が起動し、金血ルーンの命令鎖が精神に絡みつく。意志を書き換える強制プロセス。
「意志も全て台無しにしてやる!」
ガルシェバルは鎖を掴み、熱で溶かした。
「支配は奉仕だ。君の鎖など、愛の枷に過ぎぬ」
根源権能《罰愛反転》
「愛しているから壊す」という命令が反転し、オーバーラプス自身を縛り上げる。《オーバーライド・ドミネーション》で抵抗するが、《灰の抱擁》が触れ、燃え尽きた愛の残骸が心を冷ます。
「ボクの支配が……愛に……?」
灰にまみれ、崩れ落ちた。
最後に残ったのはガシャバ。
無表情の沈黙そのものが、圧力だった。
「貴様ありて国家なし」
部下の敗北を観測し、国家の意思を解き放つ。拳が交錯し、無機質な軍服が炎に晒される。
ガルシェバルは語る。
「愛とは、己を燃やして他者を照らすことだ。影を恐れるな」
《ガル=ガボス》の弾丸が、ガシャバの「忠誠」を燃料に放たれる。ガシャバは避けず、受け止めた。
「……ッ……」
だが情念は心を焼く。紅蓮の抱擁が彼を包み、白い瞳に初めて揺らぎが宿った。
「僕を縛る者よ、同時に僕を解く者でもあれ――共に燃えよう」
ガシャバは灰となり、秩序機構は崩壊した。
ガルシェバルは再び玉座に戻り、永遠の孤独を王座とする。
「愛は焚刑に似たり。偽りを焼き、真実を灰にする」
紅蓮の支配圏は、静かに燃え続けた。
――翌日、ガルシェバルの遺体が、ゴミ収集車に回収された。
灰色の空の下、焦げた薔薇が無数に散る玉座に、ガルシェバル=ヴォル=カデスは腰を下ろしている。身長二八二センチの強靭な体躯を赤黒の法衣に包み、両腕に絡みつく焼け残りの鎖が、幻の熱を放っていた。瞳は琥珀に血を溶かした紅白金――一方は冷徹に世界を測り、もう一方は狂おしい情熱を宿す。
「熾烈王」「抱焔者」
そして、“愛を罰し、罰を愛する者”。
その日、王座に侵入者が現れた。
秩序機構――ガシャバ直属の特権機構である。頂点に立つガシャバと、三柱の従僕。コーアーション=グラビタス、コンデムネイション=ジャッジサーキット、コンパルション=オーバーラプス。国家の意思を体現する存在だ。白を基調とした軍服とコート、脈動する金血の回路。理念句は明確だった。
「秩序なくして国家なし。痛みは必要悪。」
ガシャバは沈黙を保ったまま、後ろ刈り上げの白髪の下から白い瞳でガルシェバルを睨む。彼自身が威圧であり、部下は「秩序の三定数」として配置されていた。
「貴様の情念は秩序を乱す。排除する」
短く、無慈悲な宣告。
ガルシェバルはゆっくりと立ち上がり、燃え尽きかけた翼を広げた。近くにいるだけで体感温度が上がり、心拍が速まる錯覚を与える存在感が、機構の面々を包む。
「秩序? それは愛の欠如だ。君らを焼くことで、愛を教えてやろう」
低い声は静かに、しかし確実に熱を帯びていく。
戦いは、ガシャバの合図で始まった。
最初に動いたのはコーアーション=グラビタス。白髪の屈強な男。V字型マスクの奥で、金血回路が視覚干渉を走らせる。《重圧コア》が起動し、金血の重力球が放たれた。
「……抹殺」
思考を押し潰す重圧が、ガルシェバルの精神にのしかかる。だが彼は微笑んだ。冷徹な片眼が状況を測り、情熱の片眼が燃え上がる。
「恐怖は愛の影だ。君の重圧など、抱擁に過ぎぬ」
権能《焼灼の鎖》が発動する。情念の炎で編まれた枷がグラビタスを包み、逃れようとするほど熱を増した。焼かれるのは肉体ではない。心の自由だ。重力球は失速し、ガルシェバルは拳銃《ガル=ガボス》を抜く。
放たれた弾丸は物質ではなく、裁きとしての情念。
グラビタスの「秩序への忠誠」を燃料に威力を増し、胸を貫いた。金血が噴き、重力場が崩れる。
「意味が……不明……」
膝をつき、沈黙。
続いて、コンデムネイション=ジャッジサーキットが踏み出す。白金のサイバーゴーグルが金血を流し、思想解析の光が脈動する。
「全て修正する」
《断罪スキャナー》が放たれ、理想そのものを「誤り」として削除する破壊光が翼を焦がす。灰が舞った。
ガルシェバルは痛みを、愛のように受け止める。
「理想は不要? 真実は灰の中にある」
《狂熱の審判》
歪んだ正義としての激情が叩きつけられ、紅蓮の炎がジャッジサーキットを包む。ゴーグルが溶け、《ゴールデン・ジャッジタワー》が召喚されるが、《燃焼支配》が周囲の感情温度を歪めた。愛と憎しみ、忠誠と敵意の境界が溶け落ちる。
「無念……誠に……遺憾……」
言葉は途切れ、炎に飲まれた。
《ガル=ガボス》の一撃が、彼の内に潜んでいたわずかな「裏切り」を燃料に、心を撃ち抜く。塔は崩れ落ちた。
次に現れたのは、コンパルション=オーバーラプス。白金の伊達眼鏡と丸印のピアス。笑みを浮かべて進み出る。
「キミの心、ぶっ壊す!」
《鎖符(チェインコード)》が起動し、金血ルーンの命令鎖が精神に絡みつく。意志を書き換える強制プロセス。
「意志も全て台無しにしてやる!」
ガルシェバルは鎖を掴み、熱で溶かした。
「支配は奉仕だ。君の鎖など、愛の枷に過ぎぬ」
根源権能《罰愛反転》
「愛しているから壊す」という命令が反転し、オーバーラプス自身を縛り上げる。《オーバーライド・ドミネーション》で抵抗するが、《灰の抱擁》が触れ、燃え尽きた愛の残骸が心を冷ます。
「ボクの支配が……愛に……?」
灰にまみれ、崩れ落ちた。
最後に残ったのはガシャバ。
無表情の沈黙そのものが、圧力だった。
「貴様ありて国家なし」
部下の敗北を観測し、国家の意思を解き放つ。拳が交錯し、無機質な軍服が炎に晒される。
ガルシェバルは語る。
「愛とは、己を燃やして他者を照らすことだ。影を恐れるな」
《ガル=ガボス》の弾丸が、ガシャバの「忠誠」を燃料に放たれる。ガシャバは避けず、受け止めた。
「……ッ……」
だが情念は心を焼く。紅蓮の抱擁が彼を包み、白い瞳に初めて揺らぎが宿った。
「僕を縛る者よ、同時に僕を解く者でもあれ――共に燃えよう」
ガシャバは灰となり、秩序機構は崩壊した。
ガルシェバルは再び玉座に戻り、永遠の孤独を王座とする。
「愛は焚刑に似たり。偽りを焼き、真実を灰にする」
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