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深まりいく秋
『それ、運動部向けの競技ばかりだよね?!』
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「玉入れに参加される方は入場門に集まってください」
交代した放送部のアナウンスで、私ときららは急いで入場門に向かった。運動部向けの100メートル走とその後の実況の暴走で忘れていたけど、次は私たちが出る非運動部向けの競技(女子向け)玉入れだ。
体育祭の競技は運動部女子向け、運動部男子向け、非運動部女子向け(男子の参加もok)、非運動部男子向け(女子の参加もok)、男女問わないイロモノ競技の5種類に分かれている。プログラムはそれを考慮して、イロモノと各学年の催しをアクセントに、運動部女子向け→運動部男子向け→非運動部女子向け→非運動部男子向け→アクセントの順番だ。
女子の100メートル走もあったけど、その後の告白大会と化した男子とは違って何事もなく平凡に終わったから、記憶から抜け落ちてしまっていた。
一巡目の競技は別名・全員参加の一巡目。運動部だろうが、非運動部だろうが、全員が参加できるだけの競技が用意されている。気付いたら終わっていた100メートル走のように10人前後を一度に走らせて一分で終わる競技や、大多数で参加する玉入れや綱引きはそのいい例だ。
代わりに、800メートル走やリレー、二人三脚などは参加人数が限定されている競技で、これらから運動部は一つ以上選ぶ。非運動部も参加人数が決まっている競技から出たい競技を一つ以上選ぶ。
実は夏川先輩が参加する3000メートル走は運動部向け競技のように見えて、イロモノ競技だったりする。理由は3000メートル走も走るのは陸上部の長距離の生徒ぐらいだから、からだ。おかげで、先生だろうが、保護者だろうが、参加者の条件を広げるわ、一位から十位まで点数がもらえたり、かなり特殊だ。
玉入れは赤と白にしか別れていないので、複数のクラスが一つの籠に入れるという変則的なルールでおこなわれ、勝った方の色のクラスは点数をもらえる。どこまでも大多数に優しい競技だった。
次の綱引きは三組が一度におこなわれる。勝てば次の試合に出られ、何回勝ったかで点数が変わるから、ウチのクラスが勝つように祈ったけど、そっちはうまくいかなかった。
でも、綱引きで冬野さんの姿がないことが気になった。冬野さんは非運動部だ。綱引きは非運動部の男子なら、ほぼ強制参加の競技だ。
そこで思い出したのが、バイト先で話していた体育祭の話題。
なんと、冬野さんは運動部向けの競技ばかり出ることになっていたのだ。
『それ、運動部向けの競技ばかりだよね?!』
ツッコミを予想していたのか、冬野さんは頷いた。
『そうだよな。だけど、うちのクラス、運動部がほとんどいないから。ほとんど文化部だし、体育苦手な奴しかいないから、俺が出るしかないんだよ』
諦めてるというか、悟ってるというか、どういったらいいのかわからない様子で言うと、冬野さんは乾いた笑いをあげた。冬野さんが怖いのは外見だけだということをクラスメイトが悟って頼んだのか、先生に言われて仕方なくだったのか・・・。
『冬野さんって、足早いの?』
『うちのクラスの中じゃ、早いほう。四月に体力測定やったじゃん』
『うん』
競い合ったり、安心したり、駄目駄目さ加減に嘆いたり、阿鼻叫喚の体力測定。
『あれで50メートル走、運動部の奴を除いて一位』
『?!』
『だから、100メートル走と800メートル走は出るしかなくて、あとは障害物競争』
『走るもんばっか』
どんだけ、冬野さんのクラスは体育苦手な人しかいないんだろう・・・。
『そうだよ。うちのクラスは優勝なんか諦めて3000メートル走、誰も出ないし。ま、仕方ないけどさ』
その時の冬野さんの乾いた笑みが忘れられない。
催しがあったり、私やきららが出る競技があったり、見ているだけの競技があったり、愛の告白を挟みながら体育祭は進んで、夏川先輩と冬野さんが出る800メートル走になった。
夏川先輩と冬野さんは別々の組だった。
運動部じゃない冬野さんは流石に一位をとることができなかった。一位になったらなったで、その組の他の走者がかわいそうだ。
私の視線に気付いたのか、冬野さんはこっちに小さく手を上げてくれた。
夏川先輩の組になって、夏川先輩は見事、一位をとった。
そして、ノーリアクション。
100メートル走、見てなかったけど、多分、あの時もこうだったんだろう。
「ほらね、言った通りでしょ。夏川先輩は私のことなんかどうでもいいんだって」
「うん・・・」
きららの妄想もこの夏川先輩のノーリアクションで冷めてくれたようだ。
私と夏川先輩が付き合っていると、本当のことを知らずに盛り上がっていたきららに否定はしていたけど、それをこんなふうに知らされると気分が重くなった。
ウチの両親だけじゃなくて、学校中にまで付き合っていると思い込ませたんだから、嘘でも告白して欲しかった。
でも、夏川先輩にとって私はそんなことまで気遣うような相手じゃなくて・・・。
その後も、愛の告白を挟みながら競技は続いた。
私たちはそれが当たり前のように見ていた。
交代した放送部のアナウンスで、私ときららは急いで入場門に向かった。運動部向けの100メートル走とその後の実況の暴走で忘れていたけど、次は私たちが出る非運動部向けの競技(女子向け)玉入れだ。
体育祭の競技は運動部女子向け、運動部男子向け、非運動部女子向け(男子の参加もok)、非運動部男子向け(女子の参加もok)、男女問わないイロモノ競技の5種類に分かれている。プログラムはそれを考慮して、イロモノと各学年の催しをアクセントに、運動部女子向け→運動部男子向け→非運動部女子向け→非運動部男子向け→アクセントの順番だ。
女子の100メートル走もあったけど、その後の告白大会と化した男子とは違って何事もなく平凡に終わったから、記憶から抜け落ちてしまっていた。
一巡目の競技は別名・全員参加の一巡目。運動部だろうが、非運動部だろうが、全員が参加できるだけの競技が用意されている。気付いたら終わっていた100メートル走のように10人前後を一度に走らせて一分で終わる競技や、大多数で参加する玉入れや綱引きはそのいい例だ。
代わりに、800メートル走やリレー、二人三脚などは参加人数が限定されている競技で、これらから運動部は一つ以上選ぶ。非運動部も参加人数が決まっている競技から出たい競技を一つ以上選ぶ。
実は夏川先輩が参加する3000メートル走は運動部向け競技のように見えて、イロモノ競技だったりする。理由は3000メートル走も走るのは陸上部の長距離の生徒ぐらいだから、からだ。おかげで、先生だろうが、保護者だろうが、参加者の条件を広げるわ、一位から十位まで点数がもらえたり、かなり特殊だ。
玉入れは赤と白にしか別れていないので、複数のクラスが一つの籠に入れるという変則的なルールでおこなわれ、勝った方の色のクラスは点数をもらえる。どこまでも大多数に優しい競技だった。
次の綱引きは三組が一度におこなわれる。勝てば次の試合に出られ、何回勝ったかで点数が変わるから、ウチのクラスが勝つように祈ったけど、そっちはうまくいかなかった。
でも、綱引きで冬野さんの姿がないことが気になった。冬野さんは非運動部だ。綱引きは非運動部の男子なら、ほぼ強制参加の競技だ。
そこで思い出したのが、バイト先で話していた体育祭の話題。
なんと、冬野さんは運動部向けの競技ばかり出ることになっていたのだ。
『それ、運動部向けの競技ばかりだよね?!』
ツッコミを予想していたのか、冬野さんは頷いた。
『そうだよな。だけど、うちのクラス、運動部がほとんどいないから。ほとんど文化部だし、体育苦手な奴しかいないから、俺が出るしかないんだよ』
諦めてるというか、悟ってるというか、どういったらいいのかわからない様子で言うと、冬野さんは乾いた笑いをあげた。冬野さんが怖いのは外見だけだということをクラスメイトが悟って頼んだのか、先生に言われて仕方なくだったのか・・・。
『冬野さんって、足早いの?』
『うちのクラスの中じゃ、早いほう。四月に体力測定やったじゃん』
『うん』
競い合ったり、安心したり、駄目駄目さ加減に嘆いたり、阿鼻叫喚の体力測定。
『あれで50メートル走、運動部の奴を除いて一位』
『?!』
『だから、100メートル走と800メートル走は出るしかなくて、あとは障害物競争』
『走るもんばっか』
どんだけ、冬野さんのクラスは体育苦手な人しかいないんだろう・・・。
『そうだよ。うちのクラスは優勝なんか諦めて3000メートル走、誰も出ないし。ま、仕方ないけどさ』
その時の冬野さんの乾いた笑みが忘れられない。
催しがあったり、私やきららが出る競技があったり、見ているだけの競技があったり、愛の告白を挟みながら体育祭は進んで、夏川先輩と冬野さんが出る800メートル走になった。
夏川先輩と冬野さんは別々の組だった。
運動部じゃない冬野さんは流石に一位をとることができなかった。一位になったらなったで、その組の他の走者がかわいそうだ。
私の視線に気付いたのか、冬野さんはこっちに小さく手を上げてくれた。
夏川先輩の組になって、夏川先輩は見事、一位をとった。
そして、ノーリアクション。
100メートル走、見てなかったけど、多分、あの時もこうだったんだろう。
「ほらね、言った通りでしょ。夏川先輩は私のことなんかどうでもいいんだって」
「うん・・・」
きららの妄想もこの夏川先輩のノーリアクションで冷めてくれたようだ。
私と夏川先輩が付き合っていると、本当のことを知らずに盛り上がっていたきららに否定はしていたけど、それをこんなふうに知らされると気分が重くなった。
ウチの両親だけじゃなくて、学校中にまで付き合っていると思い込ませたんだから、嘘でも告白して欲しかった。
でも、夏川先輩にとって私はそんなことまで気遣うような相手じゃなくて・・・。
その後も、愛の告白を挟みながら競技は続いた。
私たちはそれが当たり前のように見ていた。
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