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深まりいく秋
お父さんもお母さんも子離れできないというか、なんというか。
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3000メートル走の結果は陸上部と体育の先生が上位を占め、あとは各運動部の部員が十位までを埋めた。
先生まで本気で参加するなんて・・・と思われるけど、すごくおもしろかった。淡々と自分のペースで走る生徒もいれば、先生の走りに触発されてスタミナ切れを起こした生徒もいて、終わった後に先生に笑われていた。
そんな中で夏川先輩は淡々と走るほうで、ちゃっかり十位までに入って点数をもらっていた。3000メートル走に参加した理由もあいつとの賭けに勝つ為だそうで、「それさえなかったら参加していなかった」と、やる気0だった。
なんで、やる気のない夏川先輩が十位以内に入って、真面目に走った生徒がスタミナ切れを起こして十位以内に入れなかったのか。
納得がいかないまま、お昼休みになったから、私たちは来てくれているお父さんやお母さんに会いに行った。
待ち合わせていた場所にお母さんたちはいた。ただ、周りには他にも待ち合わせている保護者や生徒がいて、ウチの両親はまだ私に気付いていない。
きららも自分の両親の姿を探している。
やっぱり、毎日通っている学校だからか、私やきららのほうがここで両親を探すのも緊張しない。
「お母さん、お父さん!」
呼びかけて手を振って、ようやく気付いてもらえたくらいだ。
「実花」
二人が待ち合わせをしている人たちをかき分けるようにしてやってくるのも、ここが校内校外の人にもわかりやすい場所だからだ。いくらケータイがあるっていっても、待ち合わせはわかりやすいとこじゃないと駄目だし、そうなると、こんなふうに多くの人が同じことをしていて、見つけにくいし、どうにかならないんだろうか?
「玉入れ、頑張ったわね」
「ムカデ競争も、惜しかったな。あと少しで三位になれたじゃないか」
すぐに出場した競技を褒められて、ちょっと居心地悪いけど、悪い気はしない。
でも、妙に照れて、笑って誤魔化すことにした。
「えへへ・・・」
そんな私を笑顔で見ていたお母さんとお父さんは思いついたように口を開いた。
「・・・それにしても、最近の高校の体育祭って、私たちの頃とは変わったわね」
「いきなり、愛を叫び始めるもんな。それを学校も許しているし、ゆとり教育とか、個性を伸ばす教育とか、昔では考えられない」
二人とも首を振って、溜め息交じりに言う。
「それは私も驚いたよ。だって、中学までとは違いすぎるんだもん。他の学校はこんな感じだったんじゃないかって思ったよ」
「それはそうよね」
「高校は中学までとは違うってことか」
「うん、そう」
お父さんの顰めていた顔が柔らかくなった。この学校の体育祭だけがおかしいということに安心したようだ。
「これが普通じゃなくてよかった」
「本当にね。お昼はどうするの? きららちゃんと食べる? それとも、お母さんたちと一緒に食べる? 高校生になったんだから、お母さんたちと食べるのは恥ずかしい?」
「えーと・・・」
もう高校生だし、いつまでも親と一緒なんて子どもみたいだと思った。だけど、きららの両親は共働きで、いつもきららは惣菜かお弁当を温めただけの夕食を早く食べて勉強をしなければいけないから、休日ぐらいしかゆっくり話せる時がない。
さっききららがいたあたりを見たら、きららもちゃんと両親と会えたみたいで、お昼をきららと一緒にとったら久しぶりの親子の交流の邪魔になりそうだった。
「お母さんたちと一緒に食べるよ。きららにメッセージ送っとく」
「実花とお昼が一緒なんて、嬉しいわね」
「そうだな」
「休日はいつも一緒じゃん」
ああ、もう!
お父さんもお母さんも子離れできないというか、なんというか。
・・・嬉しいけどさ。
「じゃあ、行こうか」
「あ。ちょっと待って。きららにメッセージ送る」
お父さんに急かされて、急いできららにメッセージを送った。
そして、運動場の保護者用に作られたスペースに向かう。
・
・
・
が。
運動場に出たところで夏川先輩が両親らしき男女と一緒にいるのが見えた。夏川先輩は二人がいることに驚いているようだ。
宇宙人だろうが、未確認生物(UMA)だろうが、生物だし、親がいない生物のほうが少ない。植物だとしたら、親がいなくても勝手に育つわけだから、いなくてもおかしくはないけど、夏川先輩だって、一応、動物みたいだし、親がいてもおかしくない。
だけど、なんで驚いているのか?
夏川先輩を野放しにしている無責任な親の顔を見た感想よりも、両親と一緒にいる夏川先輩の表情のほうが気になる。
これは一体・・・?
先生まで本気で参加するなんて・・・と思われるけど、すごくおもしろかった。淡々と自分のペースで走る生徒もいれば、先生の走りに触発されてスタミナ切れを起こした生徒もいて、終わった後に先生に笑われていた。
そんな中で夏川先輩は淡々と走るほうで、ちゃっかり十位までに入って点数をもらっていた。3000メートル走に参加した理由もあいつとの賭けに勝つ為だそうで、「それさえなかったら参加していなかった」と、やる気0だった。
なんで、やる気のない夏川先輩が十位以内に入って、真面目に走った生徒がスタミナ切れを起こして十位以内に入れなかったのか。
納得がいかないまま、お昼休みになったから、私たちは来てくれているお父さんやお母さんに会いに行った。
待ち合わせていた場所にお母さんたちはいた。ただ、周りには他にも待ち合わせている保護者や生徒がいて、ウチの両親はまだ私に気付いていない。
きららも自分の両親の姿を探している。
やっぱり、毎日通っている学校だからか、私やきららのほうがここで両親を探すのも緊張しない。
「お母さん、お父さん!」
呼びかけて手を振って、ようやく気付いてもらえたくらいだ。
「実花」
二人が待ち合わせをしている人たちをかき分けるようにしてやってくるのも、ここが校内校外の人にもわかりやすい場所だからだ。いくらケータイがあるっていっても、待ち合わせはわかりやすいとこじゃないと駄目だし、そうなると、こんなふうに多くの人が同じことをしていて、見つけにくいし、どうにかならないんだろうか?
「玉入れ、頑張ったわね」
「ムカデ競争も、惜しかったな。あと少しで三位になれたじゃないか」
すぐに出場した競技を褒められて、ちょっと居心地悪いけど、悪い気はしない。
でも、妙に照れて、笑って誤魔化すことにした。
「えへへ・・・」
そんな私を笑顔で見ていたお母さんとお父さんは思いついたように口を開いた。
「・・・それにしても、最近の高校の体育祭って、私たちの頃とは変わったわね」
「いきなり、愛を叫び始めるもんな。それを学校も許しているし、ゆとり教育とか、個性を伸ばす教育とか、昔では考えられない」
二人とも首を振って、溜め息交じりに言う。
「それは私も驚いたよ。だって、中学までとは違いすぎるんだもん。他の学校はこんな感じだったんじゃないかって思ったよ」
「それはそうよね」
「高校は中学までとは違うってことか」
「うん、そう」
お父さんの顰めていた顔が柔らかくなった。この学校の体育祭だけがおかしいということに安心したようだ。
「これが普通じゃなくてよかった」
「本当にね。お昼はどうするの? きららちゃんと食べる? それとも、お母さんたちと一緒に食べる? 高校生になったんだから、お母さんたちと食べるのは恥ずかしい?」
「えーと・・・」
もう高校生だし、いつまでも親と一緒なんて子どもみたいだと思った。だけど、きららの両親は共働きで、いつもきららは惣菜かお弁当を温めただけの夕食を早く食べて勉強をしなければいけないから、休日ぐらいしかゆっくり話せる時がない。
さっききららがいたあたりを見たら、きららもちゃんと両親と会えたみたいで、お昼をきららと一緒にとったら久しぶりの親子の交流の邪魔になりそうだった。
「お母さんたちと一緒に食べるよ。きららにメッセージ送っとく」
「実花とお昼が一緒なんて、嬉しいわね」
「そうだな」
「休日はいつも一緒じゃん」
ああ、もう!
お父さんもお母さんも子離れできないというか、なんというか。
・・・嬉しいけどさ。
「じゃあ、行こうか」
「あ。ちょっと待って。きららにメッセージ送る」
お父さんに急かされて、急いできららにメッセージを送った。
そして、運動場の保護者用に作られたスペースに向かう。
・
・
・
が。
運動場に出たところで夏川先輩が両親らしき男女と一緒にいるのが見えた。夏川先輩は二人がいることに驚いているようだ。
宇宙人だろうが、未確認生物(UMA)だろうが、生物だし、親がいない生物のほうが少ない。植物だとしたら、親がいなくても勝手に育つわけだから、いなくてもおかしくはないけど、夏川先輩だって、一応、動物みたいだし、親がいてもおかしくない。
だけど、なんで驚いているのか?
夏川先輩を野放しにしている無責任な親の顔を見た感想よりも、両親と一緒にいる夏川先輩の表情のほうが気になる。
これは一体・・・?
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