浮気した彼氏のせいでNTRれた私

プラネットプラント

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初恋は・・・

「順番おかしいですよ。なんで交際する前にヤるんですか?!」

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「辞退させてください」

 拒否が駄目なら、これはどうだ。

「拒否は駄目だって言ったよね?」

 良い笑顔で却下されました。
 でも、ここで引き下がれない。
 引き下がったら、合意と見なされて美味しく頂かれてしまう。
 夏川先輩は部長を務める気質から、合意するように説得しようとしているようだ。
 ここに勝機がある。
 合意をしていなければ手を出せないなら、合意しなければいいのだ。
 NTR属性の変態はあいつだけで充分。
 まともな彼氏と付き合って、まともな愛情表現でセックスがしたい。
 恋愛していたと思っていた初カレとの経験しかない私に愛情表現じゃないセックスはまだ無理。
 それなのに、人生で二人目が慰謝料代わりにヤることになったNTR属性の変態って、どんだけハードモードなのよ!
 絶対、何がなんでも合意なんかしない。

「これは拒否じゃないです。辞退です」

 拒否と辞退は違います!と、きっぱり言ってやった。

「それって、拒否とどう違うのかな?」

 私のはったりに真面目に返してくる夏川先輩。
 変態だけど、まだ良い人だ。
 同じ変態でもあいつよりマシなのは、話し合いができるという点かもしれない。
 浮気しといて、あいつは私の意志を無視して差し出して逃げて行った。
 ・・・。
 差し出せって、最初に言ったのは夏川先輩だから二人とも変わらないか。
 これって、ドングリの背比べってこと? それとも、目クソ鼻クソを笑う?
 彼氏がドングリでも、目クソ鼻クソのどっちかでも嫌だ。どっちにたとえてもいい生き物だけど、初カレがそんなんじゃ嫌だ。
 できることなら、あいつと付き合ったことを記憶から抹消したい。
 って、今は夏川先輩に私を諦めてくれるように説得しないと。

「テニス部の王子様だなんて私には荷が重すぎです。緊張してそんなこと考えられません。そもそも夏川先輩と釣り合うと思っていたら、あいつなんかと付き合いません」

 イケメンだし。
 変態の巣窟でもそこの部長さんだし。
 人気ある人だし。
 付き合っていた彼女はみんな美人だし。
 美人だから羨ましいかと言うと、そうでもない人たちだけど、そう言う子が集まるし。
 付き合ったら嫉妬とか色々大変そうだし。
 私くらいの顔じゃ、相手にもされないだろうし。
 付き合うのは無理だと思える理由が簡単に思いつく。
 だけど、夏川先輩は疲れたように溜め息を吐いた。

「部員と付き合っていても、ことあるごとにモーションかけてきたり、アピールしてくる子もいるけど?」

 二股?
 いや、これはキープ兼接近利用ってこと?
 キープだけの私より扱い悪い人もいるの?
 テニス部員の彼女って美人や可愛い子が多いと思っていたけど、こういう風に言われてみれば、夏川先輩の彼女と似たタイプの子が多かった。
 可哀想なテニス部員。
 他人事のような気がしない。
 それどころか、私以下の価値しか認められていないなんて・・・。

「私が夏川先輩と付き合いたいなら、直接言いますよ。そんな純情を弄ぶ真似はしません」

 夏川先輩は溜め息を吐いて、今度は前髪を手でかき上げる。イケメンだから様になる仕草。
 だけど、溜め息はさっきより深い。疲れ切っているような感じがする。

「それが純情ばかりとは言えないんだよね、これが。喜んで足掛かり役になりたい年頃だから仕方がないんだけど」
「どういうことですか?」

 ヤりたいだけってことですか?

「ああ。気にしなくていいよ。で、選べる答えは抱き潰されるか裸で抱き締められるかだけど、どちらかな? それ以外はなしだよ」

 私のことをお子ちゃまだと思っているのか、夏川先輩ははぐらかした。
 お子ちゃまだと思っているなら、あいつの浮気の責任を私に求めないで欲しい。お子ちゃまはお子ちゃまのままでいさせて欲しい。
 お子ちゃまにセフレを求めないで!

「そのどっちもなしです。私、合意してないんですよ」

 合意していないと言ってやりました。
 合意していないんだろうなとは、夏川先輩もわかっているだろうけど、重要なことだから言いました。

「合意してないの? なら、裸で抱き締めるほうか」
「だから、どうしてそうなるんですか?! 私はどっちも嫌だって言いましたよね?!」

 裸で抱き締められるのが決定ですか?!
 勝手に決めないでください!
 夏川先輩、自己中心的すぎます!
 私の話を聞いてくださいよ!
 さっきからどっちも嫌だって言ってるでしょ?!

「経験から言えば、浮気に一々目くじら立てて、ショックで落ち込んでいたら人生損するよ。そういう相手とは付き合う時間がもったいないからさっさと別れて、自分の大切なことに時間を費やすのが一番賢い方法だよ」

 経験って・・・。
 そんな何人にも浮気されたって重い過去語られたら、どう言っていいのかわからない。
 忙しくて彼女を放ったらかしにしていて振られるとは聞いていたけど、そのうち何人に浮気されたのか聞くのが怖い。
 前向きなことを言っているのに、そこに諦めや後ろ向きなものを感じるのは何故だろう?
 浮気されたらさっさと別れる。それはわかるが、どうしてそこから浮気された者同士ヤろうという発想になるのかわからない。
 もしかして、浮気された者同士の仕返し? 同じ傷の舐めあい?
 後ろ向きすぎる。
 前向きに見えて後ろ向きすぎる。
 二次元に救いを求めようとした私が人の事言えた義理じゃないけど、後ろ向きすぎるよ、夏川先輩。

「・・・。それが浮気された者同士でヤるってことですか?」
「まあね。メンタルとフィジカルの両方を回復させるのに最適だからね」

 ヤるのはフィジカルを満たすためで、ヤり返すことで得られるのは復讐(メンタル)?
 自傷行為に似ている。
 夏川先輩ってNTR属性じゃなくてM?

「それって、悲しくないですか?」
「5人以上、浮気されたり、振られたりしていればそういう風に思えてくるって」

 5人も?!
 イケメンで部長までしているのに、浮気されやすいってどうなの?!
 どうして、そうなるのかわからない。
 既製服である学校の制服を着ていても、雑誌のモデルみたいに見えるのに、どうして浮気されやすいんだろう?
 夏川先輩は俗に言う残念なイケメンなんだろうか?
 だからって、浮気されるスペシャリストみたいな感覚を共感できるようになると言われたくない。
 そんな感覚――

「わかりたくありません」

 今のままで充分です。
 浮気男は一人で充分。

「経験者だから言えることだけど、春原の浮気はマグロちゃんに非はないんだよ。浮気ってのは、するかしないか自分で決められるからね。する前にマグロちゃんと別れるって選択肢もあったし、浮気しないという選択肢もあった。それなのに春原は浮気をした。関係が冷めていてそれを温め直す努力があればそれをするべきだし、浮気をしてマグロちゃんが傷付くとも考えていない身勝手な行動じゃないか。それなのに、マグロちゃんはどうして春原を責めないの?」

 だからその経験が重いんだって。
 でも、今はあいつの浮気の原因よりもあんたの目には目を歯には歯を、と浮気する連中には痛くも痒くもない仕返しに私を巻き込まないで欲しいんだけど。
 それさえなきゃ、私は夏川先輩の言い分を支持する。
 だって、浮気されて傷付いた同士だし。

「あいつを責めないんじゃないです。私は付き合っている好きな相手としかヤらない主義なんで、夏川先輩とはできないんです」

 ヤるなら付き合って、そういう気分になってからでいいじゃない。
 ほとんど話したこともない状態で、浮気し返そうだなんて、私も夏川先輩も浮気者たちと別れる気なんだから意味はないのに。
 それでも気が治まらないんだろう。復讐でメンタルをどうにかしないと。

「じゃあ、付き合う? 付き合うかどうかのお試しはどう?」

 付き合いたいかどうかわからないまま付き合おうと?
 付き合うって、好きだから付き合うもんだよね?
 互いに好意を持っているから付き合うんだよね?
 ヤることを前提に付き合うって、なんかおかしくない?

「それって・・・」

 おかしいと言おうとしたけど――

「抱かれるか、裸で抱き締められるか」

 そっちか!!
 またその選択に戻るのか?!
 どうしてその選択に戻るの?!
 もう、やだ。この人。
 ジト目になっちゃうのも仕方ないよね。

「選択肢変わってないんですけど・・・」
「付き合う前に試すか、試してみて付き合わないか」

 それ、おかしいから。
 私はセックスは愛情表現だと思っているのに、どうしてお試しでできると思ってんの?!

「順番おかしいですよ。なんで、交際する前にヤるんですか?!」
「付き合ってみて、なんか違うと思うより、ヤってみて恋人なのか友達なのか判断したほうが簡単明瞭じゃないか」
「・・・」

 ドライすぎる。
 流石、相手を知らなくてもヤりたがるだけある。
 ドライすぎてお子ちゃまな私は付いて行けない。
 遠い目で夏川先輩を眺めていたら、夏川先輩は笑って言った。

「それに裸で抱き締められるのはマグロちゃんの主義に反していないと思うよ」
「どうしてですか?」

 私の主義とは180度違うと思う。
 もしかしたら90度かもしれないけど、その場合は私は二次元座標で夏川先輩は三次元座標のような気がする。同じ三次元座標だとすれば、Y軸の座標が異なっているに違いない。

「だって、ヤってないじゃないか。本番も性的興奮もない、R15だよ」

 疑わしい。
 裸で抱き締められるのって、R15だっけ?

「・・・。本当にR15ですか? 何もしませんか?」
「誓って何もしない」

 疑わしい。
 でも、ここまで夏川先輩が拘るって言うことは、浮気されて傷付くのは何回経験しても変わらないんだろうな。
 私の浮気されたショックなんか、夏川先輩の申し出ですっかり吹き飛んじゃってるけど。
 ぶっ飛びすぎた夏川先輩の申し出で私はあいつに浮気されたショックなんか気にもならなくなっていた。それより、自分の貞操のほうが大事だって、こんなに言い合いしている。
 本当だったら、浮気されたって泣き叫んでいる筈なのに、夏川先輩の申し出に合意しないように頭をフル回転させている。
 私があいつの浮気にショックを感じていないのも、よく考えれば夏川先輩のおかげなんだよね。

「なんかしたら反撃していいですか?」

 何もしないなら許そう。
 夏川先輩だって、ショックなんだから。
 夏川先輩の気がすんで、私が嫌がるような実害さえなければ抱き枕の代用だと思えばなんとか耐えられるかも。これはただし、イケメンに限る、だけど。
 大丈夫。
 私の精神力はゴリゴリ削られるけど人助けだ。

「いいよ。殴られても蹴られても甘んじて受けるよ」

 浮気されすぎた夏川先輩がここまで言うからには、裸で抱き締められるのも何か理由があってのことなんだろう。
 馬鹿な人だな。
 ヤらせろ、じゃなくて浮気し返そうって言えばいいのに。
 自分と同じように傷付いている相手だからって、気を遣わなくていいのに。
 自分だって辛いだろうに、どうして自分を悪人扱いさせるんだろう?
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