浮気した彼氏のせいでNTRれた私

プラネットプラント

文字の大きさ
10 / 74
昼休みの風景

「残念なのはあんたの性格です」

しおりを挟む
「ねえ、実花ちゃん。容姿以外で僕と付き合うのに必要なことってなんだと思う?」

 夏川先輩は笑みを消して、真顔で私に訊いてきた。

「ヤらしてくれること」

 私にはそれしか考えられない。
 この人はよくわからない。
 わかっているのは、浮気された私をNTRたがっていたところと、相性が良いからと付き合いたがっているところ。浮気されたから浮気し返そうとするところ。テニス馬鹿。
 要はヤれる相手が欲しくて付き合って、浮気された者同士ヤってみて相性良かったから付き合いたいんだから、彼女になるのに必要なことはヤらせてくれればそれでいい。
 言っていて、サイテーだとは思う。
 どんなに気遣ってくれていても、私の中で夏川先輩はサイテーだ。あいつよりは上だけど。

「それ以外には?」
「夏川先輩なら・・・、テニスを優先させてくれること」

 テニスに対する努力の結果が今の夏川先輩だ。
 テニスを大事にする夏川先輩の考え方はそれを優先してくれる人じゃないと受け入れられない。

「そうだよね。実花ちゃんにだってそれくらいはわかるのに、わからない子ばかりが告白してくるんだよ。僕が部長でもなければ、太っていたり、こんな顔じゃなければ相手にもしないくせにね」

 ヤサグレて独り言のように呟く夏川先輩に今までのつかみどころがないものの、明るいところはない。好き嫌いを今まで口にしてきても、あくまで軽口で、内容以外に暗いところはなかったと言うのに。
 あまりに変わってしまった夏川先輩の様子が気になった。
 夏川先輩は太っていたことでもあったんだろうか?
 それとも整形した?
 どうして、王子様と呼ばれるような夏川先輩がそんな風に思うようになったのかわからない。
 傷付いたような目でラケットを眺める夏川先輩は寂しそうだった。
 私は夏川先輩のことを知らない。
 昨日までで知っていることは何人もの彼女に振られる噂とテニス部の王子様だと言うことだけだった。今は部員思いで、テニスを大事にしていて、ヤることが好きで、彼女の浮気が原因で5人以上と別れていることを知っている。
 浮気されて傷付くことも、同じように傷付いた相手を気遣ってくれることもわかっている(ただ、私はその気遣いを遠慮したかったけど)。
 でも、それだけだ。
 夏川先輩が語らないことは何もわからない。
 夏川先輩が語らないことでは私は何も知らない。
 夏川先輩が傷付いた表情をする理由も、寂しそうに見える理由も知らない。

「夏川先輩・・・」
「あれ? もしかして、同情してくれた?」

 私が声をかけると、夏川先輩はニパッとばかりに笑顔になって、またおどけたように言う。

「・・・騙されて同情するところでした」

 心配して損した。

「同情してくれないんだ。残念」

 どこをどうしたら、あんたを同情できるっていうの?
 同情できるような可愛げがあんたのどこにある?
 どこに?

「残念なのはあんたの性格です」
「そうかな?」

 フフフ・・・と楽し気に笑う夏川先輩。
 この人は何を言われても懲りないの?

「テニスを大事にしたいのがわかっている子と付き合えばいいのに、そういう子を選んでないじゃないですか。そういう子を探して自分から告白すればいいのに、してないでしょ?」

 告白されたから付き合ってたって、言っていたしね。
 選り好みしないから、浮気するような彼女ばかりに引っかかるんじゃない?
 自分に合った子と付き合わなきゃいけないのに、テニス以外には興味を向けない夏川先輩は彼女のことも気にしていなかったんだろう。
 この人にとって彼女の存在なんてそんなもの。
 だから、浮気されるわ、振られるわ。自業自得と言えば、自業自得な結末を迎える。

「それを言われると胸が痛いよ」

 夏川先輩は大袈裟に心臓のあたりをつかんで見せる。

「自覚してるんだ」

 彼女のことなんかセフレ感覚だと思っていたから、自覚していないかと思った。

「自覚してるよ。だから、実花ちゃんに付き合わないかって言ったんだよ」

 そこで何故、私と付き合うことになる?!
 その考えになる根拠がわからない。
 レギュラーじゃないあいつとは普通にデートに出かけられたし、彼氏の都合優先にしたつもりなんかないんだけど?
 あと考えられるのは、夏川先輩も言っていた相性ぐらい。
 それが根拠か?!
 やっぱりそれが決め手か?!
 そんなもんで決めないでよ!
 夏川先輩の彼女なんかデメリットしか思いつかないし、好きでもない夏川先輩の為にそれを耐えるなんて遠慮したい。
 それに、あいつの彼女だったんだよ?
 私、ビッチだって思われるじゃない!
 あいつを騙して付き合って、別の男に接近して乗り換えたなんて思われたくない!!

「そんなこと言って、後輩の彼女を横取りしたって言われることまで考えているんですか?」
「僕と付き合うために彼氏を踏み台にしたって言われるのは嫌?」

 それも嫌だけど、夏川先輩のおかげで受ける嫌がらせは勘弁。
 立ち向かう気なんか起きない。
 それくらいなら初めから付き合わない。

「夏川先輩を狙っている子から嫌がらせされるのが嫌なんです」
「嫌がらせされたら、慰めてあげるから遠慮なく嫌がらせされてきて」

 守る気なしかい!!
 慰めるってまたヤりたいだけでしょ?!

「いやいやいやいや。そこは傷付けさせないとか言って下さいよ」
「お弁当作ってくれるなら考えるよ」

 なんで、そこでお弁当?!
 そりゃあ、嫌がらせから守りきることなんてできないのはわかってる。
 でも、守るって言って欲しい気持ち、わからないのかな?
 無理か。女の子の気持ちなんか考えない夏川先輩だし。
 だったら、守れないことは言いたくないって言えばいいのに。
 なんで、お弁当の話になるのよ?!

「考えるんじゃなくて、守るって言ってくださいよ」
「ソーセージは茹でてね、実花ちゃん」

 嘘でも守るって言えばいいのに。
 お弁当を作って欲しいから、付き合って欲しいと言えば考えたかもしれない。
 そんな可愛げがあれば、少しくらい考えるでしょ?
 でも、夏川先輩は言わない。
 身体の相性とか、そう言うのばかり口にする。
 だから、ヤりたいだけだとしか思えない。

「私、セフレは嫌ですから」

 大事なことだから言っておいた。
 セフレはお断りです!

「茹でたソーセージを入れてくれたら、普通に付き合うのも考えてもいいよ」

 好きでもないから付き合う気はないし、お弁当を作る気もない。
 勿論、愛のないセックスなんて問題外。
 そこのとこをちゃんと伝えておかなきゃ。

「考えるくらいなら、付き合ってくれなくていいです。愛あるセックス以外したくありませんから」
「もう、外も暗いし、危ないから送って行くよ」

 夏川先輩は私の言うことを無視した。
 もう19時近くだから夏でも薄暗い。冬なら真っ暗だ。

「送ってくれるのは嬉しいですけど、セフレだけは嫌ですから」
「実花ちゃんて、素直じゃないな~。付き合いたいなら、そう言ってよ」

 素直にセフレは嫌だって言ってるじゃない?!
 私のどこが素直じゃないって言うの?!
 それに付き合わないと言っているでしょ?!

「私は素直ですよ! それに夏川先輩と付き合いたいなんて思ってません! しばらく、誰とも付き合いたくないわよ!」
「本当に素直じゃないな~」

 好きでもない相手と付き合いたいと思っていないことのどこが素直じゃないって言うのよ?!
しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

【R18】深層のご令嬢は、婚約破棄して愛しのお兄様に花弁を散らされる

奏音 美都
恋愛
バトワール財閥の令嬢であるクリスティーナは血の繋がらない兄、ウィンストンを密かに慕っていた。だが、貴族院議員であり、ノルウェールズ侯爵家の三男であるコンラッドとの婚姻話が持ち上がり、バトワール財閥、ひいては会社の経営に携わる兄のために、お見合いを受ける覚悟をする。 だが、今目の前では兄のウィンストンに迫られていた。 「ノルウェールズ侯爵の御曹司とのお見合いが決まったって聞いたんだが、本当なのか?」」  どう尋ねる兄の真意は……

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

夫が運命の番と出会いました

重田いの
恋愛
幼馴染のいいなづけとして育ってきた銀狼族の族長エーリヒと、妻ローゼマリー。 だがエーリヒに運命の番が現れたことにより、二人は離別する。 しかし二年後、修道院に暮らすローゼマリーの元へエーリヒが現れ――!?

処理中です...