浮気した彼氏のせいでNTRれた私

プラネットプラント

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過ぎいく夏

私、怒ってんだけど?

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 楽しそうに話すお母さんと夏川先輩にふてくされたお父さんは不機嫌な顔でビールを飲み始めた。

 うぬぬぬ。私たちを無視してお母さんに取り入るとは、夏川先輩め。
 おかげでお父さんがいじけちゃったじゃないか。

「夏川先輩。本題(・・)に戻りましょうか。週末は時間が取れるってことでしたよね?」

 お母さんたちを巻き込まないでよ。まったく。

「そうそう。実花ちゃんのお母さんと話しているのが楽しくて、また忘れそうになったけど、それなんだよ。金曜日は17時に終わるし、土日は15時までだからそれ以降は一緒に過ごせるんだよ」

 土日は知らないけど、17時は学校の最終下校チャイムの鳴る時間だ。
 体育会系の部活もその時間帯までしか残ることが許されていない。
 忘れてたのならそのまま帰せばよかったと思いながら、自己申告してくる内容の意味を理解しようとしたけどわからなくて諦めた。

「? なんでそんなことを言ってくるんですか?」
「いくら忙しいからって、一緒にいられる昼休みには他の奴もいるんだよ? それだけだったら、付き合っているって言えないよね」
「・・・」

 さっきまであまりに幸せすぎて忘れてた。全部、花金のグラタンのせいだ。あの幸福感のおかげで、知り合うのを後悔したくなるような夏川先輩の本性を忘れてしまっていた。
 こいつは相性良いからってだけで付き合いたいと言い出す生物だった。

 そんな生物が一緒にいたいなんてもっともらしいこと言ってるけど、ヤりたいから付き合えってことでしょ?
 そんなこと、親の前で言えるか!
 わからないように言ってんのかわからないけど、堂々と言いに来るその神経も信じられない!
 彼女に割く時間を何だと思ってんだろ?!

 呆れと怒りが混じった目で夏川先輩を見ていると笑いかけられた。
 何故?
 私、怒ってんだけど?

「聞いてたら、部活が忙しいからって、実花を放ったらかしすぎにしてないかしら? 亮くんはもっと付き合っていたわよ」

 テニスを愛しすぎたテニス馬鹿がその外見に惑わされたDQN女としか付き合えないなんてことを知らないお母さんが、あいつとの違いの疑問を口にする。

「それは春原がレギュラーを目指してないからです。レギュラーやそれを目指していたりすると、どうしても練習時間が増えてしまって、最終下校時間まで残っても足りないくらいなんです。一年だからまだ役職にも付かなくてもよくて、拘束時間も少なくていいですし」

 夏川先輩はレギュラーをやっていて、部長もやっているから彼女に使える時間はあいつより少ない。けど、夏川先輩は私に練習を見に来て欲しいとか、部活が終わるまで待っていて欲しいと言われたことがない。
 夏川先輩が言ったのは、彼女に割ける時間は少しだけで、それが原因で振られるということだけ。
 部長にしても、一年の時から部長なんてできないから、部長になるまでに別れた彼女は夏川先輩のテニス馬鹿が原因だろうし。
 結論。忙しいからと彼女にかまわな過ぎて振られたんじゃなくて、夏川先輩が彼女に興味がなさ過ぎて振られたのだ。

「役職?」

 お父さんが役職と聞いて反応する。

「はい。部長なんかしていると部員が退去した後の見回りとか色々ありますから」
「なっ?! 部長?!」

 顔色を変えるお父さん。
 私は取り繕った。
 だって、学校のことなんだから。会社なんかとは違うし。

「部長と言っても、学校の部活の部長レベルだから。お父さんの会社みたいなもんじゃないから」

 でも、お父さんにとっては違ったらしい。

「だがな、実花。仮にも部長なんだぞ? まとめ役を任せられているんだぞ? 学生の部活動でも体育会系なら、備品の購入や練習試合、合宿などで予算の管理とか申請とかあってだな、学校側とのやり取りまでしなきゃいけないんだぞ」

 備品の購入?
 予算の管理?
 申請?
 学校とのやり取り?
 中学でも部活に入っていなかった私には聞き慣れない言葉を次々に言ってくるお父さん。

「ええと、それは・・・?」
「わからないなら、わからなくてもいいが、部員たちが部活で不自由しないように環境を整える仕事をしなきゃいけないってことだ」
「そういうもんなの?」

 部活をしていない私にはさっぱりわからない。
 部活に入ったことがあれば、多少はわかることなんだろうか?

「そういうもんだ」

 夏川先輩にも聞いてみる。

「そういうもんなの?」
「そう言われると恥ずかしいな」

 夏川先輩は何故か照れた。

「部員たちに最高の環境を与えたいと思っているだけだから、苦労らしい苦労もないよ。ただ、一日がもっと長ければとは思うけど。おかげで時間がなくて、実花ちゃんに付き合くないとか言われるし」
「いやいやいやいや――」

 そんなこと聞いてないから!
 聞いてないもんを聞いて、付き合くないと言ったとか勝手に言わないでよ!

 私が否定しようとするのを、お父さんが遮る。

「実花。時間がないからって、付き合うのを拒否するのは駄目だ。時間がなければ作ればいいし、夏川くんも時間を作ってくれているから、一度付き合ってみなさい」

 お父さん、どうして急に夏川先輩との付き合いを推し進めてくるの?!
 部長ってだけで、いいの?!
 お父さんは味方だって思ったのに!

「えーー?! お父さん、どうしちゃったの?! 私が嫁に行かなくてもいいって言ってくれたじゃない!」
「付き合うのと嫁に行くのは別だ。付き合って、嫌だったら、すぐに別れられるだろ?」

 付き合うのと嫁に行くのは別なのはいいけど、別れることが前提って、どうなの?!

「えーー!」
「色々頑張っている好青年のようだし、夏川くんなら良いと思うぞ」

 お父さーん!!

「じゃあ、よろしくね。実花ちゃん」
「ハイ・・・」

 お父さんまで味方に付けた夏川先輩にこれ以外の何を言っていいのか、もうわからない。

「明日は梅木町駅の中央改札に16時だから」

 梅木町駅は私のうちのから見て隣の駅だ。学校の最寄り駅も梅木町駅だったりする。
 つまり、部活が終わって一回帰宅した夏川先輩は、わざわざ隣の駅の我が家まで来てくれたってこと。

「ハイ・・・」

 抵抗しようにも、どうしたらいいのかわからない私とは違って、お母さんにはまだ言いたいことがあったらしい。

「ところで、夏川くんはどうしてここまで来たの? 実花のケータイを知っていたら、電話ですんだんじゃないの?」
「いつも昼食を一緒にとっていたから、ケータイ番号を交換していなかったんです」

 交換する必要もなかったから、知らなかっただけでしょうーが!

「あら、そうなんだ。じゃあ、実花のついでに私の番号も教えておくわね」

 お母さんの裏切り者ーー!!

 夏川先輩はそれはそれはいい笑顔でお礼を言った。

「ありがとうございます」

 こうして、私はお母さんに勝手にケータイ番号を夏川先輩に教えられてしまったのだ。


「じゃあ、お食事のお邪魔をしてしまってすみませんでした。僕はこれで失礼します」

 夏川先輩は殊勝な別れの挨拶をする。

「ご飯を一緒に食べて行ったらいいのに」

 初めは帰れと言った癖に、食べていくことを勧めるお父さん。

「父の留守中、母を一人で食事させるわけにはいきませんから」

 夏川先輩が母親想いの孝行息子のようなセリフで辞退したので、お父さんもこれ以上強く勧められなかった。

「実花。送ってあげなさい」
「ハーイ」

 夏川先輩に好き勝手されて腹が立った私は投げやりな返事をお父さんに返して、夏川先輩を玄関へと追い立てる。

「ごめんね、実花ちゃん」

 全然、反省の色が見られない笑顔で夏川先輩は言う。

 こいつは・・・!

「最低ですよ、夏川先輩。明日は行きませんからね」
「来なかったら、実花ちゃんのお母さんに連絡するから」

 行かなかったら、お母さんに言うってなんて真似を!!

「・・・。さっさと帰れ!!」
「じゃあ、明日」

 夏川先輩は手をヒラヒラと振って、帰って行った。

 あとでお父さんに聞いてみると、流行りで始めただけだと思っていたから、夏川先輩と付き合うのを賛成していなかったらしい。
 夏川先輩が義務や責任を持っていて、それで時間をとられていて、私が付き合おうとしなかったのは悪いと思ったとか。
 時間がないのは知っていたけど、夏川先輩がどんな本心で付き合いたいといって来たのか、夏川先輩を信頼してしまったお父さんに言えなくなってしまった・・・。
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