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過ぎいく夏
【秋山夫婦の会話】
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俺は実花があいつと付き合うことは賛成したが、美奈子が俺や実花のことを無視してあいつと実花が付き合っていることを認めたことには腹を立てている。
だから、実花が夕食の後片付けを手伝って自分の部屋に引きあげた後、食後のお茶を美奈子と飲んでいる時に美奈子がそんなことをした意図を問いただすことにした。
「なんであいつの味方なんかしたんだ? 実花は付き合ってないって言っただろ?」
「ねえ、一馬は実花が亮くんといつ別れたか気付いた?」
「どういうこと?」
俺には美奈子が何を言いたいのかはじめはわからなかった。
娘が彼氏と別れたということを夕食の時に聞いた。それまで娘が付き合っている彼氏のことは知っていても、別れたなんて聞いていない。
勿論、新しい彼氏ができたというのも聞いていない。本人もそう言ってたし。
「この前から実花の様子がおかしくなったのに気付かなかった?」
妻に言われて、娘に変わった様子があったかどうか思い出してみる。
朝は俺が起きてきて朝食を食べる頃には実花が台所でお弁当を作っている。朝食を食べ終わった俺と入れ替わりに弁当を作り終わった実花が朝食を食べ始めるので、俺は出かけることを告げて出社する。
それはいつものことで、何も変わったところはなかったはずだ。
夜は、今日はノー残業デーだったから帰って来られたが、いつもはこんなに早く帰宅できない。だから、遅い夕食を食べている時に飲み物を取りに来たか風呂に入りに来た実花と顔を合わせるぐらいだ。
それはいつもの実花で変わったところは何もなかった。
前の金曜日に夕食を一緒に食べた時の実花も変わりはなかった。
その前も変わりがなかったような気がする。
俺の目から見て、娘に変化はなかったように見える。
だが、美奈子の目から見たらそうじゃなかったらしい。
「悪い。思いつかない。実花の様子がおかしくなっていたのか?」
娘の変化に気付かなかった俺が聞いたら、美奈子は眉を寄せて思い出すように言う。
「うん、そう。二週間以上前から・・・、多分、三週間前の土曜日から実花がイライラしているように見えたから。そうしたら、急にお弁当をもう一人分作るって言い出すし、不気味に笑いながらお弁当を作っているし。なんか、もう、怖くって・・・」
「不気味に笑いながらお弁当を作るって、そりゃあ、怖いな」
どう考えても、何かあったとしか思えない。
朝は顔をちゃんと会わしていなかったから気付かなかったが、そんなに色々あったんなら、美奈子が言うのもわかる。
こりゃ、完全に父親失格だ。
ついつい、溜め息を吐いてしまう。
「さっき実花が亮くんと別れたって言っていたから、それで実花の様子が変わったのかなって思ったんだけど、別れたにしては様子がおかしかったのよ。落ち込んでもいないし、次の彼氏を見つけていてそっちに夢中ってわけでもなくて、お弁当が増えた謎もわからなかったから、訪ねてきた夏川くんを家に上げてみたの。もう一つのお弁当は夏川くんのだったみたいだけど、実花は迷惑そうにしていたから夏川くんが言っているように付き合っているようには見えないし・・・」
ああ。別れたから様子が変わったのか。
失恋してたら、しばらく落ち込むだろうし、何があったんだ?
どんな理由で別れたのかは美奈子にもわかっていないみたいだが、美奈子が実花の友達を家に上げた理由と俺や実花のことを無視した理由は実花の変化を探る為だということはわかった。
それはわかるが、実花が迷惑そうに見えたのに、手助けするなんて、わけわからん。
「迷惑そうに見えたなら、どうして、あいつの手助けしてんだよ?!」
「夏川くんのほうが亮くんより顔がいいからっていうのは冗談だけど、別れた理由は実花の心変わりじゃないようだから、しばらくチヤホヤされているほうがいいと思うの」
手助けする理由が顔だけじゃなくて良かった・・・。
まともな理由があってって、チヤホヤ?
「は? チヤホヤされているほうがいい?」
「実花が亮くんのことをどうでもいいって思えるくらいだったら、別れても何も感じないでしょ? イライラしているってことは、何か思うことがあるからだと思うの。だけど、何が理由で別れたかなんて聞いて、実花を傷付けたらなんて思ったら、そんなこと聞けないでしょ? それに追いかけまわされていたり、チヤホヤされて失恋の痛手を感じている時間がないほうがつらくないかなって」
失恋に効く薬は新しい恋ってのは昔から聞くことだからなあ。
「そうか」
「で、一馬はどんな理由で夏川くんと付き合うことを許したの?」
美奈子があいつの味方をしたことに俺が納得したら、今度は美奈子が俺があいつとの付き合いを許した理由が気になったらしい。
「あいつは前のとは違って真面目で責任感が強そうだから、実花のことを傷付けることはないと思ったんだよ。進学とか何かですぐに自然消滅しそうだし」
流行りで始めたなら、部長なんかする気も起きないだろうし、やらせてもらえないだろうし。
それに三年なら、一年以内に卒業するから学校が違うってことで自然消滅するのも時間の問題だ。
「・・・。別れること前提なのね」
「当たり前だ。実花は嫁にやらん!」
「まったく、もう!」
大袈裟に美奈子が溜め息を吐くが、娘を嫁に出す気がないのは変わらない。
誰が可愛い娘を嫁に出すか。
だから、実花が夕食の後片付けを手伝って自分の部屋に引きあげた後、食後のお茶を美奈子と飲んでいる時に美奈子がそんなことをした意図を問いただすことにした。
「なんであいつの味方なんかしたんだ? 実花は付き合ってないって言っただろ?」
「ねえ、一馬は実花が亮くんといつ別れたか気付いた?」
「どういうこと?」
俺には美奈子が何を言いたいのかはじめはわからなかった。
娘が彼氏と別れたということを夕食の時に聞いた。それまで娘が付き合っている彼氏のことは知っていても、別れたなんて聞いていない。
勿論、新しい彼氏ができたというのも聞いていない。本人もそう言ってたし。
「この前から実花の様子がおかしくなったのに気付かなかった?」
妻に言われて、娘に変わった様子があったかどうか思い出してみる。
朝は俺が起きてきて朝食を食べる頃には実花が台所でお弁当を作っている。朝食を食べ終わった俺と入れ替わりに弁当を作り終わった実花が朝食を食べ始めるので、俺は出かけることを告げて出社する。
それはいつものことで、何も変わったところはなかったはずだ。
夜は、今日はノー残業デーだったから帰って来られたが、いつもはこんなに早く帰宅できない。だから、遅い夕食を食べている時に飲み物を取りに来たか風呂に入りに来た実花と顔を合わせるぐらいだ。
それはいつもの実花で変わったところは何もなかった。
前の金曜日に夕食を一緒に食べた時の実花も変わりはなかった。
その前も変わりがなかったような気がする。
俺の目から見て、娘に変化はなかったように見える。
だが、美奈子の目から見たらそうじゃなかったらしい。
「悪い。思いつかない。実花の様子がおかしくなっていたのか?」
娘の変化に気付かなかった俺が聞いたら、美奈子は眉を寄せて思い出すように言う。
「うん、そう。二週間以上前から・・・、多分、三週間前の土曜日から実花がイライラしているように見えたから。そうしたら、急にお弁当をもう一人分作るって言い出すし、不気味に笑いながらお弁当を作っているし。なんか、もう、怖くって・・・」
「不気味に笑いながらお弁当を作るって、そりゃあ、怖いな」
どう考えても、何かあったとしか思えない。
朝は顔をちゃんと会わしていなかったから気付かなかったが、そんなに色々あったんなら、美奈子が言うのもわかる。
こりゃ、完全に父親失格だ。
ついつい、溜め息を吐いてしまう。
「さっき実花が亮くんと別れたって言っていたから、それで実花の様子が変わったのかなって思ったんだけど、別れたにしては様子がおかしかったのよ。落ち込んでもいないし、次の彼氏を見つけていてそっちに夢中ってわけでもなくて、お弁当が増えた謎もわからなかったから、訪ねてきた夏川くんを家に上げてみたの。もう一つのお弁当は夏川くんのだったみたいだけど、実花は迷惑そうにしていたから夏川くんが言っているように付き合っているようには見えないし・・・」
ああ。別れたから様子が変わったのか。
失恋してたら、しばらく落ち込むだろうし、何があったんだ?
どんな理由で別れたのかは美奈子にもわかっていないみたいだが、美奈子が実花の友達を家に上げた理由と俺や実花のことを無視した理由は実花の変化を探る為だということはわかった。
それはわかるが、実花が迷惑そうに見えたのに、手助けするなんて、わけわからん。
「迷惑そうに見えたなら、どうして、あいつの手助けしてんだよ?!」
「夏川くんのほうが亮くんより顔がいいからっていうのは冗談だけど、別れた理由は実花の心変わりじゃないようだから、しばらくチヤホヤされているほうがいいと思うの」
手助けする理由が顔だけじゃなくて良かった・・・。
まともな理由があってって、チヤホヤ?
「は? チヤホヤされているほうがいい?」
「実花が亮くんのことをどうでもいいって思えるくらいだったら、別れても何も感じないでしょ? イライラしているってことは、何か思うことがあるからだと思うの。だけど、何が理由で別れたかなんて聞いて、実花を傷付けたらなんて思ったら、そんなこと聞けないでしょ? それに追いかけまわされていたり、チヤホヤされて失恋の痛手を感じている時間がないほうがつらくないかなって」
失恋に効く薬は新しい恋ってのは昔から聞くことだからなあ。
「そうか」
「で、一馬はどんな理由で夏川くんと付き合うことを許したの?」
美奈子があいつの味方をしたことに俺が納得したら、今度は美奈子が俺があいつとの付き合いを許した理由が気になったらしい。
「あいつは前のとは違って真面目で責任感が強そうだから、実花のことを傷付けることはないと思ったんだよ。進学とか何かですぐに自然消滅しそうだし」
流行りで始めたなら、部長なんかする気も起きないだろうし、やらせてもらえないだろうし。
それに三年なら、一年以内に卒業するから学校が違うってことで自然消滅するのも時間の問題だ。
「・・・。別れること前提なのね」
「当たり前だ。実花は嫁にやらん!」
「まったく、もう!」
大袈裟に美奈子が溜め息を吐くが、娘を嫁に出す気がないのは変わらない。
誰が可愛い娘を嫁に出すか。
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