浮気した彼氏のせいでNTRれた私

プラネットプラント

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過ぎいく夏

あんたの愛はテニスぐらいでしょうが!

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 イベントのある日や花火のある日について夏川先輩に相談することにした。なんと言っても、夏川先輩は部長だし、責任感がある。こういう時なら喜んでペナルティもかけないと思う。
 二人きりで話すと有耶無耶にされそうなので、昼休みにきららやあいつの前で話すことにした。

「夏川先輩。イベントの時とか出てくれって、店長に言われているんですけど、出ちゃっていいですか? 花火の時なんか21時までって話なんですけど」
「イベント?」

 テニス馬鹿な夏川先輩は冬野さんと違って、なんのことか思い付かないらしい。
 あいつが夏川先輩に説明する。

「ほら、毎月何かやってるじゃないですか。港祭とか、光ネズミ祭りとか」

 このあたりは家族でのお出かけからデートスポットまで幅広くカバーしている地域で、学校のある梅木町駅から隣りの私の最寄り駅にかけて、イベントが目白押しだ。毎年恒例のイベントだけじゃなくて、版権のあるイベントも単発でおこなわれることがある。
 あの国民的アニメのイベントもおこなわれたことがあるのだ。その日は梅木町駅から海側は光るネズミだらけになったのだった・・・。

「ああ。なんかよくやっているね。あれか」

 あいつの説明で夏川先輩も思い当たったみたいで納得したようだ。
 理解したなら、あとは話が早い。私はさっさともう一度本題を切り出した。

「そうなんです。それで夕方まで出て欲しいというのと、花火の時は夜まで出て欲しいって言われたんですよ」
「いいんじゃない? 僕も無理な日はあるから。遠征とかでいないこともあるから、バイトが大変ならそっちを優先してくれてかまわないよ。ただし、ただのイベントならいつものように会う時間もあるだろうし、花火大会の時だけね」

 イベントは駄目だったか・・・。だけど、花火大会はOKが出た!

「わかりました」

 それにしても、遠征とか言っていたけど、そういう時は無理と言っているから、その日は会わなくてもいいみたいだ。そういう日がたくさんあると助かるんだけど。
 と、考えていたら、きららがとんでもないことを言い出した。

「なんかこういうの見てたら、付き合ってるって感じだよね~」
「・・・」

 あいつは驚きすぎて無言だった。

「え?!」

 私は驚きすぎてきららの顔を見てしまった。
 どこが付き合ってるって見えたんだろう?
 意外過ぎてわからない。

「そう? 今まではそう見えなかった?」

 バイトをすると宣言した時も通常運転だった夏川先輩も驚いたようだ。目を丸くしている。
 首を傾げて聞く夏川先輩にきららは首を横に振った。

「ぜんっ然、見えませんでした。なんだかんだ腐れ縁とかそんな感じがして、付き合ってる(仮)みたいでしたよ」

(仮)って、何?
(仮)って?
 確かに嫌々だったから、付き合ってる感じなんかするはずないけど。
 だって、そうでしょ?
 夏川先輩は私にあいつがつきまとうのを止めさせたいと言っていたけど、自分だって初代浮気女に付きまとわれるのが嫌で、二人を諦めさせる兼セフレな彼女が欲しいと考えるような人だ。
 テニス以外には煩わされたくない自己中で、それを甘んじて受け入れてほぼセックスだけの関係を望むような人だ。
 私のことだって、彼女があいつと浮気していなかったら付き合おうとは言い出さなかっただろうし、外堀を埋めまくって、なし崩し的に付き合わせたりしなかったと思う。
 それなのにきららに付き合って見えないなんて、あいつも同じように思っていたことだよね?
 夏川先輩の作戦は完全に間違っているとしか思えない。
 そんなのに巻き込まれた私の気持ちをどう表現したらいいのかわからない。
 骨折り損のくたびれもうけ?
 それでどうして私がセフレなんかにならなきゃいけなかったの!

「う~ん。僕の実花ちゃんへの愛が足りなかったからかな?」

 愛なんてないでしょ、愛なんて。あんたの愛はテニスぐらいでしょうが!

 しれっと落とした夏川先輩の爆弾発言に心の中で突っ込んでいたら、ガタンッて椅子の倒れる音がする。音がした方向を見たら、座っていたはずのあいつが立っていた。
 いきなり立った音だったようだ。
 あいつは慣れない手つきで倒れた椅子を元に戻して座り直す。

「で、でもさ。二人は付き合ってるわけないんだし、夏川先輩が勝手に色々指示しているだけってこともあるんじゃないかって・・・」
「え? まだ気付いていなかったの? バイトのことで相談してたじゃん。付き合ってもいないのに、そんなことで相談すると思ってたの、春原?」

 謝るあいつの心をきららがサラリと抉る。

「・・・」

 脅されてるからです。
 私が脅しに屈したからです。
 脅しを本当にされたくないからです。

 本当のことが言えない私の代わりにきららが言う。

「あのさー。なんで付き合ってもいないのに、夏川先輩が実花に指示しないといけないわけ?」

 あいつもきららからの指摘で戸惑う。

「なんでって?」
「夏川先輩が指示出していいのは、部長やってるテニス部の部員だけだよね? それ、実花と関係ないよね? あんたは実花と別れたんだから、まったく、これっぽっちも関係なくなったんだよね?」

 私とあいつは違う意味で無言だった。

「・・・」
「・・・」

 部員でもないのに指示を出すなんて、他に理由がなかったら、おかしい。
 付き合ってもいないなら、私みたいに弱みを握られたりして脅す脅される関係じゃなければ依存関係でしかないでしょ。

「今は関係はあるよ。僕たち、付き合ってるから」

 夏川先輩の言葉を信じたくない様子のあいつ。

「嘘だ・・・」
「・・・」

 私も嘘だと言いたい。
 全部嘘であって欲しい。

「いつから付き合ってるの?! なんで付き合ってすぐに言ってくれなかったの~! 友達でしょ!」

 きららが話してもらえなかったと私に食ってかかる。

「・・・」

 私はあいまいな笑みを浮かべるしかなかった。
 夏川先輩とは付き合いたくなかった。
 付き合いたくないのを、脅されて嫌々彼女という名のセフレとして付き合うことになってしまった。

 そんなの、きららが友達だからって、本当のことを全部話せない。
 話せたら楽になれると思う。
 だけど、あいつは今も私とよりを戻したいようで、そんなあいつと夏川先輩をきららがどうにかできるとは思えない。
 私だって、あいつと夏川先輩をどうにかしようとして、夏川先輩に外堀を埋められまくって、脅されてどうしようもない状態になって、付き合う羽目になったのだ。
 そこにきららを巻き込みたくない。

「・・・」

 そんな私をあいつは途方に暮れた表情で見ていた。
 その表情に胸の奥が痛んだ。

 元はと言えば、こいつが元凶だ。
 こいつさえ、浮気しなかったら、こんなことにならなかったのに。
 あいつへの怒りをかき集めて胸の痛みを黙殺した。

 夏川先輩は暢気に卵焼きを半分に割って、ご飯の上に載せて食べ、きららは不貞腐れた顔で私を見ている。あいつは私と夏川先輩を何度か見た後、席を立った。

「すみません・・・。俺、ちょっと、飲み物買ってくるの忘れてた」

 気落ちした様子であいつが言う。
 飲み物を買い忘れたと言うけど、机の上にあいつがいつも買うペットボトルが置いてあるし、中身もそれほど減っていないから、ただの口実だろう。

「ああ、行ってきていいよ」

 行ってくる許可なんか必要じゃないのに夏川先輩が気軽に言う。まるで気付かなかったのが悪いとばかりにその態度で追い打ちをかけているようだ。

「そうなの? ふ~ん。じゃあ、わたしのカフェオレもお願い」

 きららが容赦なくパシリに使う。

「きらら?」

 何故、酷使しようと思ったのか教えて欲しいと思ったのに、きららはウィンクしてみせた。
 いや、そんなことされても・・・。

「夏川先輩はいりますか?」

 あいつは夏川先輩を呼ぶ時にいつも通り夏川先輩と呼ぶするから、ここにおかしい点はない。
 だけど、さっきの夏川先輩が許可を出したような発言は、あいつと夏川先輩の間の上下関係がお昼ご飯を食べている時も続いていることを意味しているのかもしれない。

「俺(・)はいい、春原」
「実花は?」

 別れたっていうのに、未だにあいつは私を付き合っている時と同じように呼ぶ。
 一々言うのが、もう面倒臭いから、私はそのままにしておくことにした。だって、あいつは呼び方を変えたらヨリが戻せないとでも思っているらしく、絶対に私の呼び方を変えない。
 私があいつとヨリを戻すなんてありえないことなのに、おめでたい性格をしている。
 友達からやり直して、また付き合いたいんだろうけど、そんなこと100%ありえない。その友達の関係にすらなりたくないし。
 彼女じゃなくなっても、友達になれるなんて甘い考えだ。そんなふうになりたいなら、浮気する前に別れて欲しかった。

「私もいい」

 あいつに頼み事なんかしたくない私の返事を聞いて、あいつの表情が暗くなる。

「そう・・・。じゃ、行ってくる」
「行ってらっしゃ~い」

 一人、きららだけが明るくあいつを見送る。きらら以外はあいつと縁が切りたい私とあいつに彼女をNTRれた夏川先輩だから、仕方がないかもしれないけど。
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