幸せを見付けたので、お姉様に婚約者を差し上げます。

プラネットプラント

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ダンスカードが示す不都合な真実【上】

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「取り入るって、人聞き悪いこと言わないで」
「じゃあ、ゴマすり」
「それも良くないわよ」
「懐に入り込む」
「・・・」

 ブライアンの言い方があまりにも酷いので、クラレンスなんか瞑目してしまっている。
 わたしも他人事だったら、関わりたくない。
 けれど、言われた張本人だから、関わらざるを得ない。

 わたしたちを見ていたユージェニーが噴き出して笑う。

「プハハハ・・・」

 クスクスと笑うのは良いけど、ユージェニーの笑い方はマナー違反だ。

「そんなふうに笑っちゃダメよ、ユージェニー」

 窘めるマーゴの声も震えてる。

「だって、アリスたちが面白すぎるんだもん」
「二人が面白いからって、笑いすぎよ」

 ユージェニーが淑女らしくなく笑うので、周囲の注意を引いてしまった。

「ユージェニー、声を抑えて。いくらアリスとブライアンが仲が良いからって、そこまで笑うことないじゃない」
「ごめんなさい、ヒック・・・。ムリ・・・」
「婚約者の家族と仲が良いってことは良いことじゃない」

 婚家と仲が良いのは政略結婚しても居心地が良い。ブライアンが言っていたように、姑に好かれているだけで良い結婚をスタートできるといえる。
 ブライアンとはミラー夫人よりも会う機会が少なかったけど、この通りだ。
 口は悪いがブライアンは本当に良い人だ。フェルナンドに放ったらかしにされているわたしに話に付いていけるように、こうして知識が手に入るようにお膳立てしてくれる。
 結婚してもフェルナンドがお姉様ばかり見ていても、きっと気を遣ってくれるから、そう不幸にはならないだろう。
 それに、わたし自身ブライアンと話すのが楽しい。

 周囲の目があるから、取り澄ました様子でブライアンが右手を出してくる。

「アリス嬢、兄の代わりにダンスにお誘いしても?」
「ええ、いいわ」

 わたしは手を預けてダンスフロアに出る。
 ブライアンのエスコートには安心して身を任せていられるから、周りの様子を観察することができた。

 ああ、ブライアンがダンスを申し込んだのはこの為か。

 ユージェニーの笑い声で耳目を集めてしまったからではなく、お姉様とフェルナンドがダンスフロアにいたからだ。顔繋ぎだけでなく、わたしを放ったらかしにしてダンスまですることはミラー家にとっても醜聞に繋がる。
 この夜会が舞踏会のようにファーストダンスの概念がある夜会ではないとしても、お姉様やわたしのダンスカードを見れば一目瞭然だ。
 わたしのダンスカードは真っ白だけど、お姉様のダンスカードはいつもいっぱいだ。その全員と踊る為には踊り始める曲も早くなる。
 最初の一曲はエスコートしてきた相手やエスコートしてきた相手に代理を許された者で、ブライアンがお姉様と踊ることも妹の婚約者の弟だから許されている。
 だけど、わたしという婚約者をエスコートしてきながらお姉様とフェルナンドが勝手にダンスフロアに出てしまうのは、婚約者を蔑ろにしていると見られる行為だ。
 婚約者の姉と一番に踊るフェルナンドと妹の婚約者と一番に踊るお姉様。顔繋ぎの時から二人の関係を邪推する者もいるだろうし、ミラー家にとっては婚約者を蔑ろにする息子を容認していると思われる。
 ミラー家が礼儀知らずで信用ならないと判断されない為には、わたしたちもダンスフロアに出て、曲の途中でパートナーの入れ替えをしなければいけない。曲が始まった時にパートナーが遠くにいたから、と。

 わたしもミラー家に醜聞が立つことは望まない。フェルナンドがいくらお姉様を優先しようとも、そのままにしていたら、わたしによくしてくれているブライアンにも迷惑がかかる。

 ダンスの姿勢をとって、曲が始まるのを待つ。この体勢だと距離が近いので、誰にも聞かれないように囁いていても、不審に思われない。

「よし、行動開始だ」

 わたしはブライアンに頷いて見せた。
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