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生贄の覚悟
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貴族に生まれたのなら、女性は家の為に嫁ぐのが当たり前。そう教わってきた。
女性はみんな生贄になる運命(さだめ)。
生贄だからといって、不幸になるとは限らない。運が良ければ結婚相手と恋に落ちることがある。更に運が良ければ、好きになった人が家にとって重要な相手で、婚約者になることもある。
でも、フェルナンドの場合は違う。フェルナンドが惹かれているのはお姉様だ。クリフトン卿が言うようにわたしを罵倒して、エスコートもおざなりにして軽んじてきた。
恋をするどころか、好きにさえなれない。
あんな扱いをしてくる相手を好きになれるだろうか?
虐げられる前に好きにならないと、我慢できそうにない。
わたしがフェルナンドを好きになれないのは、虐げてくる前に好きにならなかったから。
だから、耐えられない。
そう。耐えられない。
それでも耐えろ?
お父様とお母様とお姉様に惨めな思いをさせられてきて、今度はフェルナンドに虐げられろ、と?
なんで、わたしがこんな目に遭わないといけないの?
見知らぬ悪魔より知ってる悪魔の方がまし、ともいうように、未婚のまま家に残ったほうが良いかもしれない。
その場合、領地にある小さな家で暮らすことになっても構わない。
フェルナンドと結婚するよりはましだろう。
お父様とお母様と同居していないだけで、今よりも幸せになるかもしれない。
「そうね、生贄だわ。生贄としか言いようがないわ」
婚約を解消して小さな家で暮らすことを考えながら、ぼんやりと言った。
フェルナンドと婚約解消したのなら、別の人物と婚約させられるかもしれない。
いや、きっと、婚約させられるだろう。
見知らぬ悪魔より知ってる悪魔の方がまし。だけど、フェルナンドより酷い人じゃない確率もある。
「だが、知識があれば別だ。領地経営の知識でなくともいい。教養で身に付けた刺繍の技(うで)があれば、それだけで生きていける。料理や掃除・洗濯はできなくても、知識があれば貴族を辞めて生きていける」
生贄にならない為に貴族を辞める!
想像だにもしていなかった発想に息を飲んだ。
「そんなこと、許されてない」
「許す許さないの問題ではないんだ。好きでもないどころか、虐げられるとわかっている相手に嫁ぐんだ。自ら生贄になる覚悟ができないのなら、日頃の扱いが悪かった証拠だ。和平の名の下に嫁いでいく王女たちは、母国に残した誰かの為に命の危険を覚悟している。守りたい誰かが家族か、それとも民なのかはわからない。しかし、守りたい相手がいないなら、嫁がずに逃げてもおかしくはない」
「・・・」
生贄になる覚悟。
スカートを握りしめた。
わたしには生贄になる覚悟なんてない。
ドレス一着すら作ってくれないお父様とお母様。
話を聞いてくれないお父様とお母様、お姉様。
それどころか、自分たちの間違いすらわたしのせいにするお父様とお母様、お姉様。
使用人からの扱いが悪くても、気付かないお父様とお母様、お姉様。
お父様とお母様の仕打ちを見ていて気にも留めないお姉様。
お父様とお母様、お姉様の為に生贄になんてなれない。
領民の為?
ミラー家との結婚はダヴェンフィールド家だけでなく、領民の為にはなるだろう。
でも、領民はわたしの存在なんて頭にない。『領主様とお嬢様のおかげ』と言って、領地を視察するお父様とお姉様しか見ていない。
領民の為にも生贄になんてなれない。
守りたいものなんか、何もなかった。お父様もお母様もお姉様も使用人も、領民も。
わたし、逃げても、いいよね。
女性はみんな生贄になる運命(さだめ)。
生贄だからといって、不幸になるとは限らない。運が良ければ結婚相手と恋に落ちることがある。更に運が良ければ、好きになった人が家にとって重要な相手で、婚約者になることもある。
でも、フェルナンドの場合は違う。フェルナンドが惹かれているのはお姉様だ。クリフトン卿が言うようにわたしを罵倒して、エスコートもおざなりにして軽んじてきた。
恋をするどころか、好きにさえなれない。
あんな扱いをしてくる相手を好きになれるだろうか?
虐げられる前に好きにならないと、我慢できそうにない。
わたしがフェルナンドを好きになれないのは、虐げてくる前に好きにならなかったから。
だから、耐えられない。
そう。耐えられない。
それでも耐えろ?
お父様とお母様とお姉様に惨めな思いをさせられてきて、今度はフェルナンドに虐げられろ、と?
なんで、わたしがこんな目に遭わないといけないの?
見知らぬ悪魔より知ってる悪魔の方がまし、ともいうように、未婚のまま家に残ったほうが良いかもしれない。
その場合、領地にある小さな家で暮らすことになっても構わない。
フェルナンドと結婚するよりはましだろう。
お父様とお母様と同居していないだけで、今よりも幸せになるかもしれない。
「そうね、生贄だわ。生贄としか言いようがないわ」
婚約を解消して小さな家で暮らすことを考えながら、ぼんやりと言った。
フェルナンドと婚約解消したのなら、別の人物と婚約させられるかもしれない。
いや、きっと、婚約させられるだろう。
見知らぬ悪魔より知ってる悪魔の方がまし。だけど、フェルナンドより酷い人じゃない確率もある。
「だが、知識があれば別だ。領地経営の知識でなくともいい。教養で身に付けた刺繍の技(うで)があれば、それだけで生きていける。料理や掃除・洗濯はできなくても、知識があれば貴族を辞めて生きていける」
生贄にならない為に貴族を辞める!
想像だにもしていなかった発想に息を飲んだ。
「そんなこと、許されてない」
「許す許さないの問題ではないんだ。好きでもないどころか、虐げられるとわかっている相手に嫁ぐんだ。自ら生贄になる覚悟ができないのなら、日頃の扱いが悪かった証拠だ。和平の名の下に嫁いでいく王女たちは、母国に残した誰かの為に命の危険を覚悟している。守りたい誰かが家族か、それとも民なのかはわからない。しかし、守りたい相手がいないなら、嫁がずに逃げてもおかしくはない」
「・・・」
生贄になる覚悟。
スカートを握りしめた。
わたしには生贄になる覚悟なんてない。
ドレス一着すら作ってくれないお父様とお母様。
話を聞いてくれないお父様とお母様、お姉様。
それどころか、自分たちの間違いすらわたしのせいにするお父様とお母様、お姉様。
使用人からの扱いが悪くても、気付かないお父様とお母様、お姉様。
お父様とお母様の仕打ちを見ていて気にも留めないお姉様。
お父様とお母様、お姉様の為に生贄になんてなれない。
領民の為?
ミラー家との結婚はダヴェンフィールド家だけでなく、領民の為にはなるだろう。
でも、領民はわたしの存在なんて頭にない。『領主様とお嬢様のおかげ』と言って、領地を視察するお父様とお姉様しか見ていない。
領民の為にも生贄になんてなれない。
守りたいものなんか、何もなかった。お父様もお母様もお姉様も使用人も、領民も。
わたし、逃げても、いいよね。
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