FULLMOON

藤野 朔夜

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第二章

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「買い物してたら遅くなっちゃったよ」
  本を買ったりしている間に、いつの間にやら時間が経っていたらしく、デパートを出たら既に外は夜の景色へと変貌していた。腕時計を見ると、十九時を過ぎていた。
「あれ?」
  急ぎ足のロイが、ふと立ち止まる。大通りから脇へと逸れる裏道に、見知った人を二人見付けた。
「ザークさんと、昨日の……?」
  二人は何か深刻な話をしているらしい。
  時折漏れてくる会話の中に「吸血鬼」という単語が聞こえた。
  ロイは、知らず知らずのうちに、聞き耳を立てていた。
「……!」
  不意に、ロイの瞳が大きく見開かれる。
  少し後ずさると踵を返し、今来たばかりの道を逆に戻りはじめる。
  二・三歩歩いた後に、一気に走り出した。

「どうして……?」
  二人が話していた場所から充分に離れた。ビルにもたれて、走っていた為に乱れた呼吸を整える。
「あ……れ?ロイか?こんなトコで何してんの?」
  不意に声をかけられて、慌てて下を見ていた目を上に向ける。
「ショウ……」
  昼間に別れた友人の姿がそこにあった。
「ここって確か、お前ん家から遠い気がするけど。……どうした?何かあったのか?とりあえず俺の家すぐそこだからさ、来いよ。狭いけど、泊まってっても平気だからさ」
  息が乱れて言葉の出ないロイは、頷くだけで答える。
「家着いたらさ。お前ん家電話しろよ。心配してるだろうから」
  ゆっくり歩きながら言うショウ。
「うん。ありがとう。ごめん」
  やっと話せるようになったロイは、深く息を吐きながら答える。

「何があったか、聞いても良いか?」
 ショウの家に着き、一息ついた後のショウの質問。
「うん。ショウはさ、……吸血鬼っていると思う?」
  真剣な表情で聞くロイにショウは、
「うーん。俺は見た事ないからな。見た事ないからいない、とは言えないし。かと言って、いるとも断言できない。結論としては、いるかもしれないし、いないかもしれない、かな。ってこれじゃあ返事になってないな。うーん。……今回の騒がれてる事件考えると、吸血鬼いるかなぁ、とも思うけどな」
と答える。
「そかぁ。あのさ、僕さっきすごい会話聞いてさ。そんで驚いてこっちの方まで走ってきちゃったんだ」
「どんな?」
「うん。途中からだったんだけどさ……」

「……としたら、今回の騒ぎは彼が起こしているんですか?」
  ザークがリグへと問う。
「十中八九な。俺もハッキリとわかんねーよ。お前と違って牙の跡見てねぇし。けど、シアンは絶対違うしさ。アイツだったらあり得るんだよ。昔からこういうことよくあったろ?」
  リグの返答。問いにザークは頷きながら、質問する。
「止めることはできないんですか?」
「無理だな。アイツが俺らの話を聞くとは思えん」
  リグの即答。ザークはため息を吐く。
「俺は、アイツの気持ちわかるんだよ。しょうがねぇよな、って思えちまうし。シアンもそう思ってるみたいだけどな。アイリスも……。お前だってわかるだろ?俺らと同じ吸血鬼なんだしよ」
「私は……」

「……ここまでしか聞いてない」
  ロイはそう言うと、うかがうようにショウを見る。
「その二人って、知ってる人なの?」
  ショウの問いにロイは頷くと、
「一人は、丁寧語の方の人がザークさん……昼間言ってた探偵さん。もう一人は、昨日夜中暗い所一人で歩いてたら、危ないだろって怒った人なんだけど……」
  と答える。
「そっかぁ。その人たちがが吸血鬼化どうかは置いといて、だよ。……二人は犯人知ってるみたいだね?」
「あ、うん。僕はザークさんが吸血鬼って言われたことの方に驚いちゃったんだけど、そういえば、そうだね」
  ショウの問いかけに、あーそうか、と答えるロイ。
「おいおい、そっちの方が重要だろ」
  呆れた感じのショウ。
「あはは。僕明日、ザークさんの所に行こうかな」
  考えながら紡がれるロイの言葉。
「あ、俺も行くよ。久々にバイト休みだから。俺も気になるし。一緒に行っても良いか?」
「あ、うん。一人で行くの何かモヤモヤ考えちゃいそうだから、一緒に行ってよ」
「よし、そうと決まったところで寝ようぜ。明日一限からなんだ。電気消すよ」
  ショウの少し明るめな声に「うん」とロイは頷く。
「おやすみ」


  夜空は月と星を綺麗に浮かび上がらせていた。
  明日はきっと晴れるだろう。


  優しい月の光が、夜の闇を静かに照らしていた――
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