34 / 35
第十一章
③
しおりを挟む
「僕ね、日本に行くことにした」
帰ってくるなり口を開いたザークに、リグは唖然とした。
なんだ、ザークに何が起こったんだ?
きっと疲れて、憔悴しているだろうと、思ったのに。
晴れやかに言い切ったザークはすがすがしいほど笑顔だ。
「唐突だな」
いつまでも呆けてはいられないので、リグはそう言葉を返す。
本当に、何が起こってるんだ?俺の知らない間に。リグは頭を抱えたくなった。
昔、ザークがリグの家を出ると言った時と同じくらい衝撃だ。
否、まだ居場所がわかっているだけ良いのか?日本は島国で小さいから、世界中を自由に飛び回っていた頃のザークを探すより、手間はないだろう。
が、置いて行かれる気もさらさらないので。
「何でいきなり日本なんだ?」
今まで、日本には行ってなかったと思うのだが。
「あれ、言ったよね?日本人の友人ができたって」
ザークは頓着していないのか、あっけらかんと言う。
お前、アイリスに殺されたのが日本人だと忘れてないか?否、忘れ去ってて良いんだけど。
なんだ、この敗北感は。
「もしかして、またそいつに会ったのか?」
だからこんなに晴れやかなのか、と。
「うん」
すがすがしい笑顔で、ザークは頷いた。
「……」
なんだ、この敗北感は。
今までにない強敵が現れた気分だ。
「リグ?リグ、ねぇ、一緒に行ってくれないの?」
はっとしたら、ザークが泣きそうな不安な顔をしてリグを覗き込んでいた。
どうやら、返事をしなかったことで、不安にさせたらしい。
というか、……。
「今度は一人で行くなんて言わないんだな」
置いて行かれたら、どうしてやろうか、と考えていたのが霧散した。
「僕一人で勝手に行けって言われたら、そうする」
少しスネた口調。
なんだ、この可愛さは。
って、俺は馬鹿か?
「はっ、んなこと言う訳ねぇだろ、いつ行くつもりなんだ?」
自分を取り戻しつつあるリグに、ザークは「早い方が良い」と答えた。
多分、ロイやその友人に会いたくないからだろう。
「早く、ね。荷物どうすんだ?向こうの住所決まってないし、こっちで処分してくしかないぞ」
物には頓着してなさそうだし、日本で落ち着き場所を見付けたら、また買えば良いのだけれど、一応聞いてみる。
「ええーっと、ココが住所」
ポケットを探ったザークが紙を出す。
おい、待て。住所?
「タチナがね、日本に来るならどうぞって。部屋は空いているから気にしないで来て良いって」
なんだ、この敗北感は(三回目)。
タチナ、強敵すぎるぞ。おい。
「あ、それでね、タチナが恋人紹介してくれるって。僕もリグのこと紹介したいし、一緒に行きたい人がいるって言ったから」
タチナ、お前には恋人がいたんだな。良かった。なんてリグが思っているとはつゆ知らず。
「うーん、でもある程度の家具はそろってるって言ってたし……服とかそんなくらいで良いか、持ってくの」
やはり持ち物にはあまり頓着していなかったらしいザークは、なにやら楽しそうに荷造りを始めている。
今から荷造り……徹夜でもしてやりそうだな、ザーク。とリグは思う。
そう言えば、世界中飛び回ってた頃も、唐突な思い付きからかいきなり夜中に荷造りとか、よく有った。
俺は覚えている。この光景を……。
これはもはや、なにを言っても仕方がない。
「まったく。お前はいつも唐突だな」
あの頃を思い返して笑ってしまう。
「そんなこと言ってないで、リグもリグの荷物まとめてよ。僕、リグのはやんないからね」
完全に、固い口調はなくなっている。
それに、あの頃はどこへ行くとも何も教えてもらえなかったし、こんな風にリグに荷造りを一緒にさせることもなかった。
「僕は怖かったんだと思う。リグにすがって生きるだけの僕が、リグにいらないと言われたらって」
「言ったろ。お前に怨まれてでも、お前がいなくなることに耐えられなかったって」
「うん。だからね、僕は本当にこれから先、リグの為だけに生きようかと。リグにいらないなんて、絶対に言わせないから。傍にいてください。僕を傍に居させてください」
「あぁ、離れるなんて許してやんねぇよ。お前の全てが俺のものだ」
帰ってくるなり口を開いたザークに、リグは唖然とした。
なんだ、ザークに何が起こったんだ?
きっと疲れて、憔悴しているだろうと、思ったのに。
晴れやかに言い切ったザークはすがすがしいほど笑顔だ。
「唐突だな」
いつまでも呆けてはいられないので、リグはそう言葉を返す。
本当に、何が起こってるんだ?俺の知らない間に。リグは頭を抱えたくなった。
昔、ザークがリグの家を出ると言った時と同じくらい衝撃だ。
否、まだ居場所がわかっているだけ良いのか?日本は島国で小さいから、世界中を自由に飛び回っていた頃のザークを探すより、手間はないだろう。
が、置いて行かれる気もさらさらないので。
「何でいきなり日本なんだ?」
今まで、日本には行ってなかったと思うのだが。
「あれ、言ったよね?日本人の友人ができたって」
ザークは頓着していないのか、あっけらかんと言う。
お前、アイリスに殺されたのが日本人だと忘れてないか?否、忘れ去ってて良いんだけど。
なんだ、この敗北感は。
「もしかして、またそいつに会ったのか?」
だからこんなに晴れやかなのか、と。
「うん」
すがすがしい笑顔で、ザークは頷いた。
「……」
なんだ、この敗北感は。
今までにない強敵が現れた気分だ。
「リグ?リグ、ねぇ、一緒に行ってくれないの?」
はっとしたら、ザークが泣きそうな不安な顔をしてリグを覗き込んでいた。
どうやら、返事をしなかったことで、不安にさせたらしい。
というか、……。
「今度は一人で行くなんて言わないんだな」
置いて行かれたら、どうしてやろうか、と考えていたのが霧散した。
「僕一人で勝手に行けって言われたら、そうする」
少しスネた口調。
なんだ、この可愛さは。
って、俺は馬鹿か?
「はっ、んなこと言う訳ねぇだろ、いつ行くつもりなんだ?」
自分を取り戻しつつあるリグに、ザークは「早い方が良い」と答えた。
多分、ロイやその友人に会いたくないからだろう。
「早く、ね。荷物どうすんだ?向こうの住所決まってないし、こっちで処分してくしかないぞ」
物には頓着してなさそうだし、日本で落ち着き場所を見付けたら、また買えば良いのだけれど、一応聞いてみる。
「ええーっと、ココが住所」
ポケットを探ったザークが紙を出す。
おい、待て。住所?
「タチナがね、日本に来るならどうぞって。部屋は空いているから気にしないで来て良いって」
なんだ、この敗北感は(三回目)。
タチナ、強敵すぎるぞ。おい。
「あ、それでね、タチナが恋人紹介してくれるって。僕もリグのこと紹介したいし、一緒に行きたい人がいるって言ったから」
タチナ、お前には恋人がいたんだな。良かった。なんてリグが思っているとはつゆ知らず。
「うーん、でもある程度の家具はそろってるって言ってたし……服とかそんなくらいで良いか、持ってくの」
やはり持ち物にはあまり頓着していなかったらしいザークは、なにやら楽しそうに荷造りを始めている。
今から荷造り……徹夜でもしてやりそうだな、ザーク。とリグは思う。
そう言えば、世界中飛び回ってた頃も、唐突な思い付きからかいきなり夜中に荷造りとか、よく有った。
俺は覚えている。この光景を……。
これはもはや、なにを言っても仕方がない。
「まったく。お前はいつも唐突だな」
あの頃を思い返して笑ってしまう。
「そんなこと言ってないで、リグもリグの荷物まとめてよ。僕、リグのはやんないからね」
完全に、固い口調はなくなっている。
それに、あの頃はどこへ行くとも何も教えてもらえなかったし、こんな風にリグに荷造りを一緒にさせることもなかった。
「僕は怖かったんだと思う。リグにすがって生きるだけの僕が、リグにいらないと言われたらって」
「言ったろ。お前に怨まれてでも、お前がいなくなることに耐えられなかったって」
「うん。だからね、僕は本当にこれから先、リグの為だけに生きようかと。リグにいらないなんて、絶対に言わせないから。傍にいてください。僕を傍に居させてください」
「あぁ、離れるなんて許してやんねぇよ。お前の全てが俺のものだ」
0
あなたにおすすめの小説
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる