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どうしたらいいの(2)

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「まさか雪原がクライアントとそういう仲だなんてな」
「──……っ、大井、ちょっとこっち来て」

 こんな話、もし誰かに聞かれてしまったら……!
 愛は慌てて荷物をビニール袋に突っ込んで、大井の腕を引っ張り廊下を進んだ。
 資料室と書かれた扉を開け、中に入る。ここなら、あまり人も寄りつかない。

「大井、あの……このことは……」
「黙っててほしい?」
「うん……!」

 クライアントと親密な仲であることが社内にバレたら、今まで築いてきた仕事に対する愛への信頼を失ってしまう。
 それに修哉は一流アスリートなのだ。女性スキャンダルは面目上よくないだろう。

 愛が力強く答えると、大井は普段の人好きするアイドルのような笑顔で、にっこりと微笑んだ。

「嫌、って言ったら?」
「え?」

 ポカンとする愛を、大井は壁に追いやり、腕で囲う。

「どうして? お世話になるクライアントにそんなことしたら、大井だって仕事がやりづらくなるでしょ……?」
「雪原さ、あの雪川修哉とセフレなんだろ?」
「なっ……」

 なんでそのことを大井が知ってるのか。

「うなじのとこ、よくキスマークついてたの、俺が知らないと思ってた?」
「──……?!」

 慌てて首裏を押さえる。うなじにキスマークをつけられていたなんて、知らなかった。鏡では自分で確認することができない。

「雪原が恋人はいないって言うからさ、きっとセフレでもいるんだろうなとは思ってた。でもまさかその相手がスポーツクライミングの日本代表選手なんてなー。やるじゃん、雪原」
「…………」

 どうしよう。どうしたらいいの。
 しらを切り通す? でもあの写真とキスマークをどう説明したらいいかわからない。
 心臓がバクバクと破裂しそうなほど音を立てている。

「雪川修哉にセフレがいる……なんて。ゴシップ誌に情報を売ったら、いくらもらえるんだろうな? 証拠写真付きなら、結構な額をもらえそうだな」
「ま、まって……」

 立っている足が震えだす。

「お願い、大井、やめて……」
「やめてほしい?」
「うん、うん……」
「じゃあそれなりの誠意を見せてもらいたいね」
「誠意って、どういう……?」

 大井の手が頬を撫で、首にかかる。
 修哉がくれたワンピースのボタンに指がかかり、プツ、と一つ外された。

「こういう、誠意。雪川修哉ともやってるんなら、俺でもいいだろ?」
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