トップアスリートはセフレを可愛がりたくてたまらない

鶴れり

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どうしたらいいの(1)



 無事に出社時間に間に合った愛は、デザイン課のデスクへ向かう。

 まさか自分がこんなことをする日がくるとはね……。

 男性の家へ泊まってそのまま出社して。コンビニで化粧用品を一通り揃えて、会社の化粧室で顔を作る。一年前の自分じゃ想像もできなかった事態だ。

 パソコンの電源を入れ、起動待ちしている間に上着を脱ぎ、鞄から資料を取り出す。

「雪原先輩、おはようございます。その服……もしかしてミリートパーズの新作じゃないですかぁ!?」
「蘭木さん、おはよう。そう、なの?」
「ボタンにブランドロゴ入ってるじゃないですか! すっごくカワイイ~!! 雪原先輩にお似合いです!」
「あ、ありがとう……」

 前のめりにワンピースをじろじろと観察されて、一歩後ずさる。
 同性にファッションを褒められたことがないので、なんて反応したらいいかわからない。素直な蘭木の言うことだから、修哉の見立てはバッチリだったということなのだろう。

「今日は金曜日ですものね! 終業後はデートですかぁ?」
「ううん、私恋人いないし。服は友達からもらったの」
「そうなんですね。そのお友達、センスいいですね~!」

 朝からニコニコと元気な蘭木は、手に持っていたカフェラテのストローを咥えながら、自席へ行ってしまった。

 いつもの地味な服装でない愛が新鮮なのか、同じ課の他の社員からも視線を感じる。

 今度から、デスクに着替え一式を置いておこう……。
 そう心に留めておいた。


 いつものように仕事をこなし、昼休憩の時間になった。一旦社外へ出て、近くのパン屋でサンドウィッチを購入する。財布とスマホと買ったパンだけを持って、会社内にある飲食スペースへ向かう。
 テーブルと椅子がある飲食スペースは、いつもこの時間は賑わっている。
 愛は観葉植物が置かれている端の席に座り、買ってきたサンドウィッチを小袋から取り出した。

 はぁ、これからどうしよう……。

 修哉のこと、好き……かもしれない。いや、悩んで考えている時点で、きっと好きなのだと思う。
 でもまさかセフレがクライアントとしてやって来て、さらに世界的トップアスリートだなんて。地味に静かに、荒波立てず生きてきた愛にとって、この爆弾案件を上手く取り扱える自信がない。

 とりあえず、クライアントの仕事が落ち着くまでは"修哉と焼き鳥"は控えよう。仕事とプライベートを混合させたくないし、万が一バレるようなことがあっては困る。
 あとで連絡しておかなくっちゃ、と頭の整理をしながら黙々とサンドウィッチを食べ進める。

「雪原、ちょっといい?」

 隣の席に大井が座る。ここは人目につくし、できれば女性社員から人気の大井とはあまり接点を持ちたくない。

「私、考え事してて……一人になりたいから向こう行ってくれる?」
「考え事って、これだろ?」

 大井がポケットからスマホを取り出し、愛の目の前に置いた。
 そこに写し出されているのは、昨日のタクシーに乗り込む愛の姿。

「これ……っ!」

 パッと大井のスマホを持ち上げ、周囲の人から見えないようにする。

「他にもあるよ。横にスワイプしてみ」

 そう言われておそるおそる画面を左に指を滑らせる。
 タクシーの中で談笑する愛と修哉の姿が、いろんな角度から写真におさめられていた。

「まさか雪原がクライアントとそういう仲だなんてな」
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