トップアスリートはセフレを可愛がりたくてたまらない

鶴れり

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乗り越えて(6)

 今電話中なのに……! と修哉を睨めつけようと首を捻ると、スマホを当てていない方の耳を喰まれて、慌てて口元を押さえた。

「──……っ?!」
「頑張って大仕事終えてきたのに、男と電話なんてひどいよ、愛ちゃん」

 愛の身体のラインを確かめるような淫らな手の動きは止まってくれない。耳を犯されるように舌を這わされて、ぞくぞくと甘い刺激が駆け上っていく。

『何かあったら遠慮なく言えよ。事情を知ってる人は少ないだろうし……俺もできる限りサポートするから』
「うん、ありがとう……」
『まぁ……あと気が変わったらいつでも連絡して。待ってるから』
「うん、じゃあまたねっ……」

 大井に変な声を聞かれてしまいそうで、慌てて電話を切る。

「はぁっ、修哉のばかっ! 電話中にこんなこと……!」
「へぇ? 大井さんに連絡するの?」
「しないよ……っ!」
「ふーん?」

 やっと耳を解放されて、はぁと息が乱れる。

「今日一日中、弁護士の話を聞かされてさ、堅苦しい書類たくさん読まされてさ。いつも使わない脳みそ使ってすっごい疲れた。愛ちゃんに癒してもらおうと思ってたのに……」
「記事のこと、ありがとう。さっき広報担当から連絡があって、無事に記事を取り下げるって……」
「愛ちゃんを守るって言ったでしょう? 前々からあの週刊誌を訴えるつもりで準備してたから」

 そんなことより、とさっさと会話を切り上げて、ソファに愛を座らせるとその上に覆い被される。
 修哉の背景がなぜか黒く澱んでいるように見えて、愛は慌てて愛想笑いを作った。

「だから今日はスーツなんだね。髪も上げてるから、なんだかいつもと雰囲気違う……」
「ねぇ、愛ちゃん。俺、今日トレーニングしてないから、体力あり余ってるんだよね」
「へ、へぇー?」

 愛が逃げられないように、修哉は体で退路を塞ぎながら、器用にジャケットを脱ぎ、ネクタイを外す。

 あれ。記事の差し止めができたことを喜び合うのではなかったの……? と思いながら、不穏な空気を一新しようと明るい声を出す。

「一件落着したら、お腹空いちゃったね! 修哉はなにか食べた? 私まだ食べてなくて……」
「久しぶりに愛ちゃんと焼き鳥食べたいと思って、テイクアウトしてきたよ。キッチンに置いてある」
「本当に!? 嬉しい! 冷めないうちに食べようよ」

 そろそろと修哉の腕をすり抜けようとしたけれど、やはり拒まれてしまって動けない。

「あの、修哉……?」
「ご飯は後で温め直せばいいよ。ね?」
「え……」
「先に頑張った俺を慰めてほしいな? 他の男と電話して、俺を嫉妬させて、愛ちゃんは意地悪だなぁ。優先順は当然俺が先、だよね?」
「うぅ……」

 有無を言わさない圧にたじたじだ。正直お腹は空いているけれど、目の前の修哉に触れたい欲もある。

 今回は私の完敗かな……。
 愛は修哉の両頬に手を添えて、そっと唇を重ねた。

「いいよ。修哉がしてほしいこと、全部してあげる」
「そんなこと言っていいの? 言質は取ったよ?」
「たまには私が修哉を可愛がってもいいでしょ?」
「もちろん。いつでも大歓迎」

 見つめ合って、もう一度口づけを交わす。シャツの上から無意識のうちに修哉の肩の筋肉を撫でていた。

「明日、足腰立たなくなっても大丈夫?」
「……歩けなくなるのは、困る、かも……」
「んー、抑えられるかな。善処はする、ね?」

 愛を見つめる視線が甘やかで、熱で蕩けてしまいそうだ。そんな紅茶色の瞳をじっと見つめていると、自然と口が動いた。

「修哉、だいすき」

 修哉は一瞬驚いた顔をしたかと思ったら、どんどん肌の赤みが増していった。

「──っ、だからいきなりは反則だって……」
「言われるのいや?」
「ううん。そういうわけじゃないけど……なんというかさ……」

 もごもごと言葉を濁す修哉の口を塞ぐように、強く唇に吸いついた。軽快なリップ音が響く。

「修哉、早くしてほしいこと言って?」

 濃厚に舌を絡ませながら、硬い胸板を包んでいるシャツのボタンを外していった。

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