30日後に巨大隕石が衝突すると知らされた世界で、本当に大切なものを見つけた

てるぽに中将

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地球滅亡予定日まで 残り2日

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 戻ってきた北公園には死体と思われる方々が無数に転がっていた。

 とは言え、遺体を処理することができないために「脇の方に寄せておく」又は「無視しておく」ことしかできないのだろう……。

 中には死体を食べるような人間すら現れているようで「人外」になってしまった者もいるようだ。
 加熱処理をしていない肉は病気のリスクすらあるが、今この時の飢えをしのぐことは出来るため「人肉を食う」者も多いようだ……。

 幸いにも僕たちは手持ちの缶詰が3つとは言えあるのだから隕石衝突までは「人外」にならずに生き延びることは出来そうだし、テントで雨風をしのぐことは出来そうだ。

 最後まで人間らしくありたい……と思っているわけだが、逆に“人生が残り2日“と思っていなかったのなら、どういう決断をしたのだろうか? ということで気になった。

 寒さと飢えを凌ぐために由利を売り渡した可能性があったのではないかと……。

 人生80年としたら残りを由利を性的奉仕させて自分は暖かい寝床で眠ることはできるのか……? 

 ――最愛の相手だけを働かせて暮らすなんて鬼かよ。

 もう、その発想をしてしまっただけであり得ないだろ。

 自分で自分を殴りたくなったよ……。

「どうしたの裕司? 自分の拳を見ちゃって……」

 気が付けば由利が起きていた。良かった見られてなくて……。

 流石に突然自分で自分を殴り始めているの見られたら”ヤバい奴”だと思われるだろうからな……。

「ううん。なんでもない。とりあえず、そろそろ配給の列に並ぼうか」

「そうだね。もう並び始めているみたいだし」
 
 布団を被りながら列に並ぶ。
 
 とにかくお腹が減った。育ち盛りの僕達はこの間空木さんのところで満腹まで食べたとしても、すぐにカロリーを消費しきってしまうのだ。

 「お腹と背中がくっついた」って言う歌詞がある童謡があるらしいけど、
 それぐらいお腹が減った。

 ずっと食べていなかったのなら逆に耐えられたのかもしれないのだが、
 なまじ一瞬だけ“楽園”のような空間を味わってしまったのだから、なおさらひもじく思えてしまった……。

 寒い中震えているのも無駄にカロリーを消費してしまっている要因なのかもしれない……。

「由利は食べ物無くて大丈夫?」

「昨日まで太るんじゃないかって言うぐらい食べてたからあと2日ぐらい大丈夫。それよりも、とにかく寒いね……」

 由利は手をひたすらこすっている。

 意外にも老齢の方でも夏の暑さによる熱中症より、冬の寒さによる凍死の方が多いらしい。
 
 病気になる確率も冬の方が圧倒的に高いようだ。外気の低下による免疫力の低下が主な原因らしい。

 このままでは凍死か免疫力の低下で死ぬかの2択になりそうだな……。

「何か今日の配給の量少なくないか?」

 そういった声を先に貰った人たちが口々にしている。

「もう食料は残されていないのかもしれないね……」

「食べ物は最悪いらないから、暖かい飲み物だけでもいいから欲しいね……」

 由利はとにかく寒さに弱かったような気がしたが、痩せてしまってからさらに弱くなってしまったようだ。

「うん……。今年はとにかく冷えるからね……とりあえず待つしかないね……」

 着実に順番は進んでいっている。しかし、あと3人と言うところまで来た時だった。

「おい! 俺によこせよ! 邪魔だ!」

 突如として僕たちの少し後ろぐらいのところから騒ぎが大きくなり出した。

 何だ!? と思って振り返ろうとすると前につんのめってバランスを崩し、そのまま倒れた。

「だ、大丈夫!?」

 由利が柔らかい手でギュッと握って立ち上がるのを助けてくれた。

「あ……うん。ありがとう」

 衝突の衝撃で少しクラッと来たが何とか大丈夫だった。

「困ります! 順番を守っていただかないと!」

「うるせぇ! もう生きるか死ぬかの状況でルールも何もあったもんじゃねぇだろ!」

 身長は185センチ体重は100キロといった感じの山のような大男が
 配っていた担当者の方を殴り、強引に鍋ごと奪い取っていってしまった。

「ハハハハ! こうなってしまったからにはルールも秩序も警察も意味が無い! 力があるものが正義なのだ!」

 そう大笑いしながら去っていった。

 残された僕たちはあまりの力の差を前に悔しさを噛み殺しながらそれを見送るしかなかった……。

 鉢巻を締めておりそこには「男」と書いてあったが、とても男らしさとはかけ離れた立ち振る舞いだった……。

「……酷いよ。皆、順番を守って待っていたのに……」

 由利はすすり泣いた。心臓が鷲掴みになったような痛みを覚える。

「この状況下ではこれまでの日本の“不文律“みたいなルールは通用しないのかもしれない。
 由利もそのことをよく踏まえて、なるべく僕と一緒に行動してね。トイレだけは離れてするしかないだろうけど、何か起きたら必ず大声を出すか逃げてね」

「うん。でも、寒いから抱きしめて……」

「あ、あぁ……」

 由利を抱きしめる。細いが柔らかい。 
 昨日も由利と交わったとはいえ、どうにもまだこの感触に慣れない。

 僕だって腕っぷしは全く自信はない。体育なんて下から数えた方が早い成績だ。
 でも、由利を守るためには今僕に内包されていない力を発揮させるしか無かった。

 僕なんかのために、1人で残りの時間を過ごそうと決めたり、自分の嫌なことをやろうとしてくれたりしてくれたんだから……。

「あれ……配給以外の列があるね? 何を待っている列なんだろ?」

 由利がふと、そんなことを言うので目線を上げると

 配給が事実上終わったのにどうして並んでいるのか確かに気になった。

「僕が話を聞くけど、由利は後ろで見守っていて。さっきも言った通り、ここまで来たらいつ何が起こるか分からないから」

「うん……」

「あの……すみません。この列は一体何なんでしょうか? 配給の列はこっちだと思うんですけど……」

 僕は最後尾に並んでいる服がボロボロではあるが、気の良さそうなおじさんに聞いてみた。

「あぁ、坊や。この列は宗教団体ではあるのだが、食事や寝床を提供してくれるっていうんだ」

「そうなんですか」

「俺も宗教は怖いと思うけど背に腹は代えられねぇ……。
 ここ数日の寒さはハンパねぇからな……」

「へぇ、そんな慈善団体があるんですね」

「ただ、審査を通らなければ入ることが出来ないんだ。人数に限りがあるみたいだからさ」

 僕がチラリと“合格”と思われる人が誘導されているのを観察していると、若い女の子ばかりが選ばれているようだった……。

「教えてくれてありがとうございます。無事に入れるといいですね」

 僕はお辞儀をしてその場を去った。

 呆れた。どこもここも同じようなことばかりを考えている。

 きっとここの“宗教指導者”とやらも由利のような若くて可愛い女の子の身体を狙っているに違いない。

 食べ物や寝床は恐らくはただの“釣り”なのだろう。

 こうなると由利を一人にしておくのは本当に危険だ。倫理観は崩壊し、若い女の子は狙われる。

「どうだったの?」

「空木さんのところと似たような感じだったね……。女の子ばかりを狙っている感じだった」

「ホント、ここぞとばかりに魑魅魍魎(ちみもうりょう)が跋扈(ばっこ)している感じだね。
 世紀末かよって感じ」

「でも地球が隕石のお陰で末期なのは本当にそうじゃない? ただ、地球が無くなっちゃう前に人間の倫理や秩序が終わりそうなだけでね……
 亡くなった人を食べているのを見た時は倒れそうになっちゃったよ……」

「それは僕も全く同じことを思ってたよ。
 同時に“絶望的な終わり”が見えちゃうと警察が機能しなくなって、こんなに酷いことになるんだなって。
 もう捕まらないことが分かると、抑えられていた破壊的衝動が皆で同時に爆発しちゃったんだろうね」

「それで被害を受けるのが私たちのような子供なんだからやってられないよね。
 全ての生活が破壊されていくんだ……」

「それでも僕たちは体力的にも知識的にも限りなく大人に近いから、何とか行動が出来ている方だと思うよ。
  本当に小さい子たちは何も抵抗できなくて親の暴力に潰されているだけだと思う……
  目に見えていないだけで深刻だと思うね……」

 実際に僕と由利は“大人の男女の関係”になったと言ってもいいわけなんだしね……。

「それじゃぁ……大人に近いなら、大人のやることをしよっか?」
 
 気が付けば暗くなっていた。夜になると由利は途端に元気になる……。 

 今日も驚くほど積極的だった……。
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