犬くんの話

有箱

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やっぱり犬だった【1】

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 まぁ、なんとなくそんな気はしていた。していたけども。

 見舞いに行ったら、犬飼さんはやっぱり仕事をしていた。ノートパソコンを持ち込み、何やら打ち込んでいる。

「あ、お疲れさまです。大丈夫でした?」

 飄々とした態度で尋ねられ、さすがに手が出た。電源ボタンを指で突く。ポカンとする犬飼さんへ、院内であることも忘れ叫んでいた。

「それはこっちの台詞です! て言うかやっぱりおかしいです! 昔に何があったか知らないですけど、抵抗しましょうよ! 僕も一緒に戦うんで!」
「……何の話ですか?」
「社長に仕事を無理強いされてるんでしょ! とにかく、こんなに痛い目にあうってのはおかしいんです! あのね犬飼さん、過去に何があったとしても、犬になんかならなくていいんですよ!」

 事実、犬飼さんの働きにより、今回の件は早い幕引きとなった。現行犯逮捕に加え、証拠の音声や映像が法律違反を立証したのだ。
 素早い解決があったのは、彼が素早く、且つ危険を省みず行動したからにすぎない。

 なぜ怒鳴られているのだか――犬飼さんの顔が言う。
 この様子だと、状況に違和感すら感じていないのだろう。思考力の奪われた人間は、理不尽が当然だと錯覚してしまうから。

「なぜ、そんな話になっているのでしょうか。私は自ら選択して仕事をしていますし、その分の報酬だって頂いています」
「でも、“社長の犬”だって皆さんが!」
「ああ、それ。猫山さん、恐らく誤解してます」
「えっ」

 直接的な言葉で、誤解と言い渡され混乱する。いいように使われている人間だと、長く思い込んでいたのだ。今さら、別の解釈を見付けられない。
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