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神聖な墓地を思わせる、神殿のような造り。
眼前には長い大理石の廊下があり、左右の壁際に歴代の王族を象った石像が等間隔で配置されている。実体の凡そ三倍はある大きさで、畏敬の念を抱かずにはいられない壮麗たる姿だ。
カール殿下が手を差し伸べ、私はその手を取った。
大理石の廊下を進みながら扉が閉まる音を聞き、振り向くと少し後ろからチチェスター伯爵がついてくる。灯りがともされているのを見るに、彼は事前に準備をしていたらしい。
緊張と高揚感は私の胸を弾ませる。
幾つもの室に扉があった。代々伝わる宝が其々管理されているのだ。
奥へ進むにつれて石像は古くなり、やがて途絶える。そして最奥に辿り着く。
左右に並ぶ扉はそれそのものが揃いの証に見え、私の予想は当たった。
カール殿下が足を止め私を見つめる。
視界の中でチチェスター伯爵が片方の扉を開け、内部を顕わにする。
煌びやかな冠や宝石が収められていた。
その中からカール殿下が手に取ったのは、美しい宝石の鏤められた白亜の短剣。
「キャタモールは君を首謀者に仕立て上げ、全ての罪を擦り付けるつもりだ。偽物の娘を餌に話を持ち掛け囮にし、宮廷で教育係として地盤を固め、王子を誘惑しシャーロットを消したと言っている」
「嘘です」
「ああ、わかっている」
カール殿下が微笑んだ。
「君は無実だ。だが万が一、また窮地に立たされた時、君を確実に守る手段がある」
「……」
「妃になってくれ」
呟きにも近い声だった。
冷静な伏目がちの目にはこれまで見せてきた甘さの欠片もなく、これが愛の告白ではないとわかる。交渉だ。
そう判断した瞬間にカール殿下は私の目を覗き込んだ。強く気高い獣の深い眼差しが私を貫いた。
「防衛策の為だけに言ったわけではないよ。私の人生は私の為だけにあるのではない。国王として国を治める時、私が誰よりも信頼でき、私の背中を預けるに値する人だから、君にこれを持っていてもらいたい」
胸の前でカール殿下がゆっくりと短剣を抜く。
紋章さながらに装飾の施された柄はカール殿下の手には酷く小さく、確かに女の持ち物だ。
「私が国王として道を踏み外した時、君に終わらせてほしい」
「殿下」
「君に命を預ける。そして、夫として至らなかった時は……ひっぱたいてくれ」
緊張感に耐えられなかったのか、カール殿下の顔には少し冗談を言おうとした気まずい笑みが浮かんでいる。
だが私は笑い飛ばしたりしない。
カール殿下と視線を絡めたまま間近まで距離を詰め、柄を握る大きな手に私は手を添えた。
「お任せください。必ず、完璧にこなしてみせます」
囁き、刀身に誓いの口づけを。
カール殿下はびくりと手を震わせ歓喜を示した。私が長い口づけの後で唇を離してから、震える手で納刀し、恭しく差し出してくる。
完璧なカーテシーと同時に手を掲げ、私は王妃の短剣を授かった。
身を起こし胸元に抱えた時、カール殿下が跪いた。
「イデア」
天鵞絨の小箱が口を開ける。
「愛している。どうか妻に……私と、結婚してください」
私は微笑み、手を伸ばす。
「謹んでお受けいたします」
「!」
気が変わらない内にと焦っているのか、カール殿下が忙しなく私の指に指輪を填めた。それから両手で私の手を包み、祈るように額を寄せ無心に愛を囁いた。
眼前には長い大理石の廊下があり、左右の壁際に歴代の王族を象った石像が等間隔で配置されている。実体の凡そ三倍はある大きさで、畏敬の念を抱かずにはいられない壮麗たる姿だ。
カール殿下が手を差し伸べ、私はその手を取った。
大理石の廊下を進みながら扉が閉まる音を聞き、振り向くと少し後ろからチチェスター伯爵がついてくる。灯りがともされているのを見るに、彼は事前に準備をしていたらしい。
緊張と高揚感は私の胸を弾ませる。
幾つもの室に扉があった。代々伝わる宝が其々管理されているのだ。
奥へ進むにつれて石像は古くなり、やがて途絶える。そして最奥に辿り着く。
左右に並ぶ扉はそれそのものが揃いの証に見え、私の予想は当たった。
カール殿下が足を止め私を見つめる。
視界の中でチチェスター伯爵が片方の扉を開け、内部を顕わにする。
煌びやかな冠や宝石が収められていた。
その中からカール殿下が手に取ったのは、美しい宝石の鏤められた白亜の短剣。
「キャタモールは君を首謀者に仕立て上げ、全ての罪を擦り付けるつもりだ。偽物の娘を餌に話を持ち掛け囮にし、宮廷で教育係として地盤を固め、王子を誘惑しシャーロットを消したと言っている」
「嘘です」
「ああ、わかっている」
カール殿下が微笑んだ。
「君は無実だ。だが万が一、また窮地に立たされた時、君を確実に守る手段がある」
「……」
「妃になってくれ」
呟きにも近い声だった。
冷静な伏目がちの目にはこれまで見せてきた甘さの欠片もなく、これが愛の告白ではないとわかる。交渉だ。
そう判断した瞬間にカール殿下は私の目を覗き込んだ。強く気高い獣の深い眼差しが私を貫いた。
「防衛策の為だけに言ったわけではないよ。私の人生は私の為だけにあるのではない。国王として国を治める時、私が誰よりも信頼でき、私の背中を預けるに値する人だから、君にこれを持っていてもらいたい」
胸の前でカール殿下がゆっくりと短剣を抜く。
紋章さながらに装飾の施された柄はカール殿下の手には酷く小さく、確かに女の持ち物だ。
「私が国王として道を踏み外した時、君に終わらせてほしい」
「殿下」
「君に命を預ける。そして、夫として至らなかった時は……ひっぱたいてくれ」
緊張感に耐えられなかったのか、カール殿下の顔には少し冗談を言おうとした気まずい笑みが浮かんでいる。
だが私は笑い飛ばしたりしない。
カール殿下と視線を絡めたまま間近まで距離を詰め、柄を握る大きな手に私は手を添えた。
「お任せください。必ず、完璧にこなしてみせます」
囁き、刀身に誓いの口づけを。
カール殿下はびくりと手を震わせ歓喜を示した。私が長い口づけの後で唇を離してから、震える手で納刀し、恭しく差し出してくる。
完璧なカーテシーと同時に手を掲げ、私は王妃の短剣を授かった。
身を起こし胸元に抱えた時、カール殿下が跪いた。
「イデア」
天鵞絨の小箱が口を開ける。
「愛している。どうか妻に……私と、結婚してください」
私は微笑み、手を伸ばす。
「謹んでお受けいたします」
「!」
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