恐ろしい仮面の王妃様 ~妹に婚約者を奪われた私が国王陛下に愛されています~

希猫 ゆうみ

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澄み渡る冬の日の朝。
目覚めを知らせる鳥の声さえが私の為に歌っているかのように聞こえた。
乾いた風の囁きが、締め付けるような冷えた空気が、私を打つ。この善き日に実に身が引き締まるいい気持ち。

「祝福を与え賜え」

国王夫妻の結婚式を執り行うのは、先の王妃の葬儀を任された高齢の大司教。王族の節目に立ち会い続け、今日、私もまたその一人となった。

「カール陛下。誓いの口づけを」

誕生の頃から見守り続けた若き国王に、大司教は優しく声を掛ける。
カール陛下の手が、一秒一秒を記憶しようと時を噛み締めながら私の白いベールを捲った。

ウェディングドレスに合わせ作られた純白のレースのマスクは、目の周辺と鼻、それに左の頬を覆っている。誓いの口づけの為にデザインされた美しい非対称性のマスクを私は気に入っている。結婚式の後、宝物庫の王妃の間に大切に保管するつもりだ。

カール陛下の真剣な眼差しは深く果てしなく透き通り、私の魂ごと飲み込んでしまいそうだった。餌を前に我慢している可愛い獣にしか見えないが、この男が私の夫になるこの国の国王なのだ。

この人の守るべきものを、私も守って生きていきたい。
重責も栄誉も計り知れないが、それは私が体験していけばいいのだ。
決意、覚悟、そして愛。人生に大切なものは全て私たちの手の中にある。
この私の想いはカール陛下に届いている。

私の頬に手が添えられ、私は目を閉じた。

神聖な誓いの口づけを交わす。
私はカールの妻になった。

盛大な祝宴は七日に渡り開かれるが、その全てに私がいる必要はなかった。国民は私個人の結婚を祝うわけではなく、王妃の誕生を祝うのだ。
個人的な祝宴は限られた面子で心から楽しみたい。

その前に特別な夜が待っていた。
私とカール、二人きりの夜が。

「イデア」

親密な目的でベッドに並んで腰かけ見つめ合うというのは初めての経験だが、これは正しい事だと確信できる。

カールが私のマスクを外し、うっすらと残る傷痕に口づける。
笑いが洩れた。少なからず緊張しているせいでもある。

「何?」

カールはうっとりと私を見つめている。

「当初、まだ酷い私の顔に口づけた時、さすがエルズワース3世の息子だと思った」
「正気ではない?」
「ええ」

緊張をほぐす為に冗談で返したのかと思い、優しい心遣いに癒された私はただ笑顔になった。

「深く愛せる人は、幸せも大きな分、悲しみも人より深いのでしょうね」

カールの甘く切実な瞳の奥に怯えが宿る。

「もし、君が先に永遠の眠りに就いてしまったらと思うと……だから、この国の為に長生きしてくれ。君のアレテイトの為に、私より一日でも長く」
「ええ。寂しくさせませんわ、陛下」
「信じるよ」

囁きは甘い口づけになり、私に熱を注ぎ、私を燃やす。

私は今夜、伝えられるだろうか。
同じだけ愛しているなど烏滸がましくて思いもしない。ただ限りなく近く、誰よりも愛していると。
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