初恋Returns

二一

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初恋Returns 27

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「本気の相手が早く見つかるといいな」

 なんでそんなこと言うんだよ。そうなったら抱かれてやらないって言ったところだ。俺のこと抱きたいって言ったくせに、簡単に引き下がれるくらいなのかよ。

 俺はおかしい。こんなのまるで、武市に独占されたいって思っているみたいだ。武市の考えていることが俺には分からない。けど、熟考する余裕はすぐになくなった。

 さっき噛まれた痕を今度は丁寧に舐められている。ざらりとした舌のせいでぴりぴりと痛いのに、なぜか腰のあたりがジンと痺れるような感覚が起こる。

 それは止めろって言おうとして止めた。口を開くとまたミスってしまいそうな気がするから。長年ずっとリュウさんって呼んでいたのをいきなり武市に変えるのは難しい。

 手馴れた手管に流されないよう、必死で口を閉じることに集中していた俺は、武市の行為がどんどん進んでいたことに気づくのが遅れた。

 ふと現実に戻されたときには、武市の大きな身体が俺の上に被さって、俺の両足は間抜けなカエルのように広げられていて、一度だけ武市を受け入れたソコは武市の指で充分にかき混ぜられていて。抵抗をしなかったせいか、俺の身体はびっくりするほどスムーズに準備が整ってしまっていたわけで。

 俺の気持ちだけが追いつかない。

「あ……っ」

 当たり前のように武市が入ってくる。やっぱりそれはキツくて、内臓が全部押し退けられていく感覚に俺は息を止めた。

 けれど、予想していた痛みはやってこなかった。逆に熱をもった痺れが生まれる。

「っ武、市……!」

 思わず叫んだ。最初から、まだ考える余裕のあるうちから呼んでいれば大丈夫かも知れない。実際、この間は気づかないうちに武市って言い続けていたんだ。後から思い出して火を吹くほど恥ずかしかったけど。

 武市はなにもしゃべらなかったから、俺はつい薄く目を開けて様子を伺ってしまった。

 見なきゃよかった。

 武市のこんな表情なんか見たことなかったから。ただ優しいだけの顔じゃなくて、なんだか蕩けそうなほど柔らかい顔……。

「……目ぇ閉じてろよ」

 苦笑いみたいな武市の言葉に、大きな手が俺の視界を塞ぐ。まるで恥ずかしがっているみたいな武市に、俺までが恥ずかしくなってしまう。
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