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第4章 王都

第23話 再会1

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 ハウル様の下を旅立ち近くの村から馬車を乗り継いだりして約1週間過ぎた頃、「着いた」ようやく王都の入り口に辿り着いた。

 前世では孤児院へ送ってもらうために通り過ぎただけだったのでよく見なかったが、やはり王都への入り口だけあって大きく頑丈な城壁と門によって守られていた。その門をくぐり抜け養成学校のある方へ歩いて行った。

(確か遠方から入学試験を受けに来た人は学校で手続きをした時指定の宿屋を紹介してもらうんだったっけ)

 前世での自分が試験の手続きをした時遠方から来た人に宿屋の紹介をしてるのを聞いていた事を思い出しながら歩いていたら、前方のレストランらしき店から2人の男が吹っ飛ぶ様に出て来たのを目撃した。

 な、何だと思っていたら「くそぅ」「アッシュの奴め!」と言ったのを聞いて、(ア、アッシュって······)と思っていたら同じ店から銀髪の男性が出て来て、「文句があるなら学校の授業で俺を正々堂々と打ち負かすか上を目指すんだな。こんな街中でグチを言ってこねぇでよ!」と言いながら出て来た。「っく、覚えてろよ!」と吐き捨てて男らは遠くへ去った。

 その後また男が2人出て来て「ざまぁみろあいつら」「アッシュさんにイチャもんつけるからこうなるんだ」と言っていた。

 やっぱり目の前の人がアッシュ兄ちゃんだったんだ。「ねぇアッシュさガァ!」ボコッ!

(えっ?)突然男の1人をアッシュ兄ちゃんが殴り倒した。そして「な、何をゴォ!」ボンッ!

 もう1人も殴り倒し「元はと言えばテメェらが突っかかったのが悪いんだろうが!」と言った。その光景を見て改めてアッシュ兄ちゃんだと確信した。

 さらに今度は女性が1人出て来てアッシュ兄ちゃんの近くに寄って来て「もうそれぐらいで良いでしょ、アッシュ」と優しく言ってアッシュ兄ちゃんも「分かったよ、メリッサ」と答えた。

(だ、誰?)と思いながらそれらの光景を見ていた。何はともあれ目の前の人がアッシュ兄ちゃんなのは確実だ。

 約1年ぶりの再会なのですぐに近くに行きたい気持ちはあったが、周りの人達の事を考えると行くべきか行かざるべきか考えてしまった。

 そして、(······よし!)見て見ぬ振りをしてその場を離れる事にした。

 先ほどのお店から少し離れた所で気持ちを落ち着かせ再び養成学校へ行こうとした時、ガシッ! 急に肩を掴まれた衝撃が伝わった。

 恐る恐る後ろを振り返ると、先ほどの銀髪の男性が肩を掴んで「レックス? レックスか!」と聞いてきた。

 や、やっぱり兄ちゃんだった。「ひ、久しぶり兄ちゃん」「やっぱりレックスか!! 久しぶりだな!」と言って僕を抱きしめた。

「いつ王都に着いたんだ?」「今さっき」「そうか。ん? てことは、もしかしてさっきの?」「うん、見てた」「ハハハッ、だから俺を無視して通り過ぎようとしたのか?」

 うっ、······えーっと「ま、まぁ、ね」「ったくコイツめぇ」と僕達が再会を喜び合っていると先ほどの3人が近くに寄って来た。

「ア、アッシュさん。そちらは?」男性の1人が聞いてきたので「ほら、いつも話している同じ村の"もう1人"だ」

(も、もう1人?)アッシュ兄ちゃんがそう答えたのでもう1人ってことは、ひょっとしてアリスはもう······と思っていたら「じゃあその子が」と女性の方が聞いてきたので「初めまして。レックス・アーノルドです」と答えた。

 するとまず小さくてガリガリの体の男性が「そうだったんですか。初めまして、アッシュ兄貴の子分Aでフレッド・シュテインと申します」と言い、(子分、A?)と思っているともう1人のぽっちゃりした体の男性が「同じく子分Bのボブ・フレッディでーす」と言い、(子分B)と思っているとアッシュ兄ちゃんが、「いつ子分にしたんだ?」と言ったので2人は「「そ、そんなぁーーーっ!」」と嘆いていた。

(てことは······)クイッ! クィッ! ふと僕はある事を思って兄ちゃんの服の裾を引っ張った。

 兄ちゃんがこっちを見てきたので耳打ちして「(ただの取り巻きAとB?)」と聞いた。それを聞いて兄ちゃんは吹き出しそうになって「(その通りだ)」と答えてくれて納得の頷きをした。

 そして、最後に残っていた三つ編みを左右に下げた銀髪の女性が「フフッ、初めまして。アッシュの"彼女"のメリッサ・ローテンって言います」と言った。

 やっぱり彼女だったかと思いながら兄ちゃんを見た。兄ちゃんは恥ずかしがりながら「まぁ、そういう事だ」と答えた。

 そういう関係ね、と納得したところで「ところで、もう学校で試験の手続きはしてきたのか?」兄ちゃんが聞いてきたので「まだこれからだよ」と答えた。

 すると「じゃあそれが終わって宿屋に行ったら夕飯はそこの下の食堂でアリスとメリッサと4人で食べようぜ」「うんいいよ」と答えた。

「ところで、アリスを見掛けても驚くなよ。村にいた時と大分変わっているからな」「う、うん。分かった。じゃあまた後で」「おう、またな」と答えて学校に向かった。


 アッシュが学校に向かっていくレックスを懐かしさと嬉しさのあまりいつまでも見続けていると、メリッサがアッシュの手を握って「やっぱりアリスちゃんと再会出来た時よりも感慨深かった?」と尋ねた。

「あぁ、そうだな。何たって男同士だから、村でも一番付き合ってた事もあったし」と答え「······そっか」メリッサがそう呟き、「そろそろ行こっか」「あぁ」と答えてその場を離れた。

 ······取り巻きAとBであるフレッドとボブを残して。
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