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31. それぞれの再会
しおりを挟むスージーは 口を一文字にキュッと結び、リンジーを車椅子に乗せたままテーブルまで押していく。
ワゴンの所へ行き、お茶を淹れると皆の前に置いた。
「お嬢様、彼は砦に居た時に世話になった、キース・バルトロイです。キース、以前護衛していた、カスペラード辺境伯令嬢のリンジー・カスペラード様だ。」
「ご紹介に与りました、リンジー・カスペラードです。ローランドがお世話になりありがとうございました。」
「キース・バルトロイです。元傭兵だっただけで平民なので、お気になさらず。」
「お気遣いありがとうございます。それと、失礼を承知でバルトロイ様にお願いしたい事があるのですが…。」
「何でも言って下さい。私が出来る事なら叶えて差し上げます。」
「それでは、お言葉に甘えて…。ローランドと話たい事があるのですが…。申し訳ないのですが、暫く彼と二人だけにして頂きたいのです。」
「お嬢様!!」
「スージー、…後は、二人だけにして、下がってちょうだい。お願い。」
「それでは、私は暫くそちらの侍女とここから離れますので、ごゆっくり…。」
「すみません。ありがとうございます。」
椅子から立ち上がり、小さく頷いたスージーの手を取ってここから離れていった。
途中、スージーが何度も振り返っていたが、大丈夫だと言うように、ニッコリ笑って小さく手を挙げた。
~~~~~
今日はお嬢様が、元婚約者であるローランド様と会う約束をした日でした。
朝から緊張して不安に思っているお嬢様は、ずっとそわそわしている。
何度も彼の到着を確認するみたいに、窓の外を見る彼女に呆れて言った。
「お嬢様、本日は午後二時にお約束でしたよね。常識的に考えて朝から来られる事は無いと思いますが。」
「分かってるわ。分かってるけど…。」
小さな子供のように頬を膨らませて、口を尖らせているのを見て笑うと、 お嬢様も笑った。
やっと、ここまで元気になった事に、ホッと胸を撫で下ろした。けれど、まだまだ気を抜けない。
そして、お嬢様が着替えて等を済ませて仕度が整って暫くすると、侍女が来客を知らせに来たから、先にテラスに案内しておくように伝えた。
お嬢様は、益々緊張しているみたいに見えた。無理も無い。ローランドが罪悪感を抱え、傷付いている事に心を痛めていたから…。
そして、ローランドが待つテラスへ向かった。すると、彼一人だと思っていたら、もう一人いた事に驚いた。でも、ローランド一人で来るように。とは手紙に書いていなかったから。とお嬢様が言うので、不問に付す事にした。
が、私はローランドと一緒にいる人物を見て驚いたけど、顔に出さないように無表情を装った。
何故、彼が…?!
そう思った。
私が彼に会うのは十年ぶりだった。
彼は、私と結婚の約束を交わした恋人だった。アンジェリーナ様が隣国へ嫁ぎ、リンジー様の専属侍女になってすぐ、彼も新しい任務に就く事になり、私と彼は別れたのだ。
彼の方も、私に気付いたような感じだったが、気不味くて俯いたままでいた。
けれど、彼の視線は痛いほど感じていた。でも、彼の顔を見る事が出来なかった。
そして、お嬢様がローランドと二人だけにして欲しい。と言うので、仕方なくその場から離れた。勿論、キースも…。
お嬢様の事が気になり、何度も振り返った。けれど、どれ程私が心配しても、後は二人がどんな答えを出すか?その事について、私が口を挟む事など出来ないから。
「まさか君がお嬢様に付き添ってこんな所に居るとは思わなかった。」
不意に聞こえてきた言葉に、彼の方へ振り返った。
立ち止まりかけた私の二の腕を掴んで、どんどん歩くキース。その顔は横顔でも分かるぐらい険しかった。
私達が別れた理由。それは、お互いに仕事が忙しくて、会える時間がなくなった事が原因で、世間一般ではよくある理由だった。
しかも、別れを切り出したのは私から…。
彼からは、何度もやり直したい。と何度か手紙が送られてきていた。
けれど、彼の仕事が更に忙しくなった。と、書かれた手紙を最後に、突然何も送られて来なくなり、それ以降、彼の事は何も知らなかった。その生死すらも…。
そして、あの事件が起こり、私はお嬢様と共にこの別荘に移ったのだった。
~~~~~
スージーと俺は、彼女がカスペラード辺境伯に雇われ、邸で働くようになってから知り合った。
彼女は令嬢のアンジェリーナ様の部屋付き侍女で、俺はお館様個人の草だった。
辺境伯家の草もいるが、お館様は親の跡を継ぐ前、若い頃から町に出たり、領内を飛び回ったりするのが好きな方で、その時に自分の眼に留まった者を、自分だけの草として雇っていた。
辺境の町には隣国のスパイが入り込んで、諜報活動をしている事が多い。
そして、俺達は辺境伯家の草に比べて、潜入したり、情報を集めたりし易かった。
というのも、騎士になってから訓練を受けた者達よりも、若いうちからそういう所に居た事で、場所に馴染み易かったからだ。
だから、養成所で剣や武術を習ってなどいない。
俺達の殆どは、剣も武術も我流である。が、皆、腕っ節は強い。
そんな訳で、スージーと知り合って交際していたが、お互いに忙しくて会える時間は少なかった。
アンジェリーナ様が隣国に嫁いだ後、彼女から別れを切り出された。
俺はてっきり彼女が、アンジェリーナ様に付いて隣国に行ったと思っていた。
だから彼女を追いかけて、隣国に潜入して情報を集める任務に就いたのに、彼女はいなかった。
妹のリンジー様の専属侍女になったと分かった時には、北国との国境にある砦に配属になり、忙しくて手紙を出す事も出来なくなった。
リンジー様の専属侍女なら、行方が分からなくなる事なんて無いから大丈夫だと思っていたが甘かった。
砦に事件の話が伝わった時には、リンジー様と共に彼女の行方は分からなくなっていた。
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