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しおりを挟む『まだ若王子の家にいる...』
「ごめんごめん、明日は帰るから」
『じゃあ、明日一緒に夜ご飯食べよ?こんなに放置プレイされたんだ、寂しすぎて死ぬと言っても過言じゃない』
いや、過言だ。
何だかんだ言っても、彼はまだ高校生。
親元を離れての一人暮らしだからな...やはり寂しいのだろう。
「わかった」
「ダメですよ、あんな獣と夜にご飯を食べるだなんて。貴方が食べられます」
『俺はお前みたいに万年発情している訳じゃないから?会ってすぐセックスって考えにはならないんだよ。なんて言ったって、先生のことを大事にしてるからな』
いやぁ、何だかまずい流れになってきたぞ。
「あ...?僕が主任を大事にしてないって言いたいのか...?」
声を低くした若王子が、本を閉じて私の身体を抱き寄せる。
お願いします、喧嘩になりませんように...。
『少なくともお前より、俺の方が大事にしてるし労わってる、ね?せんせ?』
「えっ、と...」
「僕がどれだけ貴方を大事にしてるか、貴方が1番分かってますよね...?」
「あの...」
「『どっちが大事にしてる?』」
もう23時だし、長引きそうな話はやめようよ~...。
「まあまあ、神崎も若王子くんも落ち着いて。どっちも同じくらい大事にしてくれてると思うよ、いつもありがとう」
「『...』」
ぎゅう、と私にしがみつきながらスマホを睨む若王子と、電話越しにも関わらず威圧を感じさせる神崎。
「主任、神崎の前だからって恥ずかしがらなくてもいいよ...2人きりの時みたいに「亮くん」って呼んで」
呼んだことないだろ。
『政宗、あっ...ごめん。ついいつもの癖で名前呼んじゃった』
いやだから呼んだことないだろ。
「お互いマウントを取り合うのは止めなさい。喧嘩するから切るね...おやすみ、神崎」
悪いと思ったが埒が明かないので、こちらから一方的に電話を切る。
一気に疲れてしまった。
閉じた本を開いた若王子が眼鏡を掛け直すと、再び無言で読書を初めた。
...それにしても、「亮くん」って呼んで欲しいのだろうか。
確かに、歳下だからと言って「亮介」なんて呼び捨てにするのは性格上気が引ける。
神崎の場合は七王だから「なおくん」か?
うーん...ちょっと可愛いな。
「...2人の時、本当に政宗って呼ばせてるんですか」
「えっ、いや!?初めて呼ばれたから驚いたよ」
「そう...、僕は呼んでもいい...?」
顔を近付けられ、心臓が高鳴る。
眼鏡姿...カッコイイ...。
「ひ、姫...以外であれば...なんでも...」
「政宗さん」
「っ...」
うわ、なにこれ...超恥ずかしい。
名前呼ばれることってこんなに恥ずかしかったっけ。
しかもさん付けだなんて、何だか歯痒い。
「りょ、亮くん...」
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