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5 失敗談
しおりを挟むまずは、雑談。
クラウディオもアレクレットもお酒は飲める方じゃない。なんだったらお茶やジュースのほうが好きという話をしつつ、当たり障りのない会話から、合コンでは話さなかった話をした。
つまり、クラウディオの恋愛話だ。『今、付き合ってる人はいる?』『最後に付き合ったのはいつ?』『どんな人と付き合っていた?』『好みのタイプは?』これらの質問にクラウディオは時折エピソードを混ぜながら回答し、アレクレットはクラウディオがゲイではないことを確認した。
次は、クラウディオが男も抱けるヘテロなのかを探らなければならないのだが『学生時代に彼氏はいたか?』の質問には『学生時代は彼女がいたから』と言われ、わからないままだ。
直接に『男を抱けるか?』と聞こうかと思ったが、その流れで夜のお誘いを受ける可能性のことを考えると躊躇いが生じて、もう少しクラウディオの人柄を知ってからにすることにした。
「──ってことがあって、僕が飲みに行くって言ったら独身の人が介抱役についてくるようになったんだよ。あんなことしたのは、あれっきりなのにさぁ」
アレクレットが職場の飲み会で泣き上戸になり『寂しいから帰らないで~』と帰ろうとする人の足にしがみついて引き止めた結果、みんなで朝まで店で飲み明かした。という失敗談を話した。
失敗談には人間性が出る。それからクラウディオの本性に迫れないかと考えたのだ。
アレクレットの失敗談を大いに笑ったクラウディオは『なら自分も・・・』と、シャンディガフに口をつけながら語りだした。
クラウディオの人生最大の失敗は7歳の時に起こった。
子どもの頃、クラウディオは魔法が使える自分は特別な人間なのだと驕り高ぶっていたそうだ。それでいて、妖精王伝説が大好きな冒険を夢見る普通の少年でもあった。
妖精王伝説が好きなクラウディオのことを両親は温かく見守り、枯れない泉も見に行ったし、奴隷船が流れ着いたとされる場所にも連れて行ってもらった。本を読んで縁の地を観光するだけなら良いのだが、クラウディオは妖精王が去ったとされる霊界に関心を持ってしまった。
霊界の入口を探すべく、クラウディオは色々な本を読み『妖精は人間を嫌い、清らかな森を好み、住まいとした』という一文を信じて、何の準備もなしに、一人で山に入ってしまったのだ。この先に妖精王がいると信じて突き進み、クラウディオは見事に遭難した。
小川で水を飲み、ポケットの飴玉で飢えをしのぎ、夜は寒さに震えたクラウディオは、総勢100人を超える大捜索がかけられて7日後に発見された。
発見のきっかけは、夜の暗闇でクラウディオが魔法で光らせたSOSの光の点滅だったのだそうだ。
この遭難事件が原因でクラウディオの両親は離婚し、クラウディオは父親に『二度と、妖精王伝説に関わることに手を出しません』と約束させられて引き取られた。
「親父との約束がなければ、本当は歴史学を学びたかったんだ」
「そんなに妖精王伝説好きなんだ」
「好きじゃなくて、信じてる。妖精王は実在したんだ。もし、親父との約束がなくて、無限に金と魔力があったなら、間違いなく妖精王が去ったとされる霊界を探しているね」
「それで、うっかり魔王が封印された次元を開いちゃって、魔王復活とかになったりして?」
「そん時は魔王に科学兵器が通用してくれることを祈るよ」
声を揃えて笑った。
こんな冗談、普段なら絶対に言わない。
現代では、3000年前の『勇者の魔王封印物語り』も『妖精王伝説』も世界史と国史で歴史として学ぶけど、真実だったのかと疑う人も多い。
一般的な感覚で言えば、妖精王の存在を信じてると言い切るクラウディオはかなりの変人だ。
二人がこうやって笑いあえるのは、クラウディオが数少ない魔法使いで、アレクレットが妖精王の存在を証明する祝福持ちというマイノリティ同士ゆえの共感があるからかもしれない。
だが、それだけとも言えない、気を張らなくて済む心地よさをアレクレットは感じていた。
(これなら、彼に身を委ねるのも悪くないかもしれない)
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