悪役令嬢は男装して、魔法騎士として生きる。

金田のん

文字の大きさ
42 / 103
第3章 入団までの1年間(2)、帝国の陰謀とグラナダ迷宮

42:勇者の過去(3)ルナリア帝国

しおりを挟む
王冠が乗っているということは、この男が・・・この40代くらいの男が、ルナリア帝国の王様ということだろう。

そして、騎士が周りいるということはこの石壁の部屋は、ルナリア帝国のどこか・・・ということだろうか?

それにしても、現在の王様を排除し、<加護持ち>を<玉座>に座らせるように女神から承っている勇者・・・つまり、オレをなぜこんな「待ていました」とばかりに現在の王様が歓待するのか、よく分からない。

だけど、一つ分かっていることがある。

いまの現状では、この場で活かせる能力は<素早さ>しかないという事実だ・・・。

オレはこめかみを押さえたくなるのを必死に抑え込む。
あまり無防備に感情をさらすのは、この状況では得策じゃないだろうから。

さっき女神・カトレアからもらった勇者の能力・・・ゲームの<サムド>の能力の中で有用な能力である<転移>は座標を指定しないと飛べない。この世界の地図・・・いや、それどころかこの場所さえ分からないオレには、いま使用することはできない。

この状況で<素早さ>だけで王様の目の前から消えるには、この世界の騎士の戦闘力が未知数すぎる。
・・・・・・それに、本当に<サムド>の能力が使えるのかもわかっていない・・・。

絶望的すぎる状況にさっきまでのめまいがぶりかえしてくるが、ここで倒れてもいい方向にはいかない気がする。


(それなら、とりあえずは相手が友好的な態度なわけだし、相手から情報を聞き出したほうがいいだろう)


瞬時に目の前の状況をそう判断し、オレは即座に<戸惑いの表情を浮かべる>ことにした。


「はじめまして。・・・あの・・・ここは・・・どこでしょうか?あなた方は・・・一体・・・?」


オレは人から「爽やかな好青年」と言われることが多いが、それは計算して「爽やかな好青年」を、演じているからだ。だから、この状況でも即座にその場にあった演技できた。

ちなみになぜ普段、そんなことをしているかというと、「爽やかな好青年」だとモテるゆえに付きまとう、デメリットを結構防いでくれることに気づいたので、そうしている。

中学時代からの親友には、彼女・理奈に一目ぼれしてからの数年にわたる計画を知られたときに、「お前って本当は全然爽やかじゃないよな・・・・真っ黒だよな」と呆れられた。

・・・まぁ、それはいまはいい。
彼女・理奈に再度、会うためにもこの状況を・・・なんとかしなくてはいけない。

オレのこの言葉と態度を受けて、50代くらいのメガネ男は、その厳めしい顔にある眉を少しよせ、40代くらいの筋肉男は、嘲笑するかのように少し笑んだ。

そして王冠をかぶった男は、笑みを深めて言った。


「おや・・・?今代の勇者様は、女神さまから事情を聞かれていないのですか?
ここはルナリア帝国、というこの世界で一番大きな国の王城の地下です。

それでは、私たちから詳しく説明しますので、場所を移しましょうか・・・
ああ。その前にこちらをお付けください。

リーンハルト、例の物を」

「はっ」


リーンハルトと声をかけられて返事をしたのは、40代くらいの筋肉男のほうだった。
彼は手元から、金色に輝く腕輪を取り出し、私に近づいてそれを見せてきた。

戸惑う演技を続けながら、それを見つめる。

腕輪は、年代物のような雰囲気を漂わせているが、宝石が散りばめられ、美しい。かなり高価なものではないだろうか?


「勇者様、そちらはわが国に代々伝わる<勇者の腕輪>です。
ここは王城ですので身分を示すために、そちらをお付けください」


そう言われたとき、つけることを一瞬躊躇した。

信用できるかも分からない男から貰った・・・しかも異世界の品物だ。
本当に<ただの腕輪>かも分からない装飾品をつけるのはリスクが大きすぎる、と感じたのだ。

だが、その一瞬躊躇した瞬間にリーンハルトと呼ばれた筋肉男に腕を取られ、「カチッ」とその腕輪を左腕につけられてしまった。

目を大きく見開く。


(・・・油断した!)


内心焦ったが、王冠をかぶった男は何でもないことのように、オレの腕を一瞥した後、笑みを浮かべながら話を続けた。


「では、勇者様。私についてきてください」


そのあまりにも変わらない友好的な態度に、オレは少し男たちへの警戒を緩めた。


(いま、この場で攻撃をされることはなさそうだな)


そして、現在の<ルナリア帝国>の王様を「敵」の可能性が高い、と警戒したが・・・・・・。

そもそもその警戒自体が間違っているのではないか・・・という可能性に思い至る。

<加護持ち>を<玉座>に座らせなければ、世界が崩壊する。
なら普通、世界を崩壊させるくらいなら、王様だって、玉座を手放すくらいするだろう。

そうして、警戒をだいぶ緩めてついてきた先の応接間。

そこでは、いままでいた騎士は廃され、メガネ男・筋肉男(リーンハルト)・王様とオレの4人だけになる。

4人だけになった応接間で詳しい内容を聞かされたオレは・・・・・・戦慄した。


「このことは通常、王家と一部の高位貴族にしか伝わっていないのですが、ルナリア帝国・・・いえ、五大国と呼ばれる国はすべて、開国以来<加護の紋章を持つ者を王にいただかないと女神ルナリアの加護を失う>という古い言い伝えがあるんです。

もちろんすべての国はその言い伝えに従い、いままで<加護の紋章を持つ者>を玉座に据えてきました。

<加護持ち>が幼子の場合は、成人してからの即位となりますが・・・」

「なるほど・・・」


<加護持ちの紋章>という新しい言葉以外は、女神から話された内容と乖離していなく、安堵する。つまりそういった<不文律>を作ることで、<加護持ち>を自然と<玉座>に座らせて古代魔道具を起動させ、この世界を保ってきたということだ。

納得して、うなずく。


「今回、<特殊召喚陣>が光り、勇者様が召喚されたのは、十中八九、いま<加護の紋章を持つ者>が我が国の玉座に長らくいなく、このままでは<女神の加護>を失うためでしょう。

<加護の紋章を持つ者>は通常、王家の直系・・・その中でも一番血の濃い者に現れるのですが、現在、一番血の濃い私には、残念ながら現れていないんです」

「・・・・なるほど・・・・・・・」


(王家の直系に現れていないから、加護持ちの場所が分からないって話だろうか?)そう疑問を持って王様を見上げた時に、彼は予想外の言葉を言い放った。


「次に一番、血の強い者は分かっているのです。おそらく彼女が加護持ちでしょう。

ただその者は前王、私の父君が囲っていた妾の子でして・・・・さすがに国として、そやつを玉座に据えることはできないんですよ。

・・・・なので、我が国としては、そやつを殺して、私、もしくは私の息子を<加護の紋章を持つ者>にする予定で動いているんです。

その方が混乱も少ないですし、<加護の紋章を持つ者>は生前なら子供にしか受け継がれない紋章も、死ねば大体、血族の中の<血の濃い者>に受け継がれますからね。

次の<加護の紋章を持つ者>は私や息子になるので殺せば間違いないでしょう。

もちろん、この暗殺自体は我が国主導で行いますが、勇者様にもよろしければ、その協力をお願いしたいんですが、いかがでしょうか?」


人を殺すことを何とも思っていないのか、王様は満面の笑みでオレに視線を向けた。
しおりを挟む
感想 47

あなたにおすすめの小説

公爵家の秘密の愛娘 

ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝🌹グラント公爵家は王家に仕える名門の家柄。 過去の事情により、今だに独身の当主ダリウス。国王から懇願され、ようやく伯爵未亡人との婚姻を決める。 そんな時、グラント公爵ダリウスの元へと現れたのは1人の少女アンジェラ。 「パパ……私はあなたの娘です」 そう名乗り出るアンジェラ。 ◇ アンジェラが現れたことにより、グラント公爵家は一変。伯爵未亡人との再婚もあやふや。しかも、アンジェラが道中に出逢った人物はまさかの王族。 この時からアンジェラの世界も一変。華やかに色付き出す。 初めはよそよそしいグラント公爵ダリウス(パパ)だが、次第に娘アンジェラを気に掛けるように……。 母娘2代のハッピーライフ&淑女達と貴公子達の恋模様💞  ✴️設定などは独自の世界観でご都合主義となります。ハピエン💞 ✴️稚拙ながらもHOTランキング(最高20位)に入れて頂き(2025.5.9)、ありがとうございます🙇‍♀️

村娘になった悪役令嬢

枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。 ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。 村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。 ※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります) アルファポリスのみ後日談投稿しております。

久しぶりに会った婚約者は「明日、婚約破棄するから」と私に言った

五珠 izumi
恋愛
「明日、婚約破棄するから」 8年もの婚約者、マリス王子にそう言われた私は泣き出しそうになるのを堪えてその場を後にした。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

今日も学園食堂はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。

柚ノ木 碧/柚木 彗
恋愛
駄目だこれ。 詰んでる。 そう悟った主人公10歳。 主人公は悟った。実家では無駄な事はしない。搾取父親の元を三男の兄と共に逃れて王都へ行き、乙女ゲームの舞台の学園の厨房に就職!これで予てより念願の世界をこっそりモブ以下らしく観賞しちゃえ!と思って居たのだけど… 何だか知ってる乙女ゲームの内容とは微妙に違う様で。あれ?何だか萎えるんだけど… なろうにも掲載しております。

ヒロイン不在だから悪役令嬢からお飾りの王妃になるのを決めたのに、誓いの場で登場とか聞いてないのですが!?

あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
ヒロインがいない。 もう一度言おう。ヒロインがいない!! 乙女ゲーム《夢見と夜明け前の乙女》のヒロインのキャロル・ガードナーがいないのだ。その結果、王太子ブルーノ・フロレンス・フォード・ゴルウィンとの婚約は継続され、今日私は彼の婚約者から妻になるはずが……。まさかの式の最中に突撃。 ※ざまぁ展開あり

処理中です...