悪役令嬢は男装して、魔法騎士として生きる。

金田のん

文字の大きさ
65 / 103
第3章 入団までの1年間(2)、帝国の陰謀とグラナダ迷宮

65:勇者は深夜、暗躍する

しおりを挟む
F級冒険者フレドと名乗った<レティシア・フランシス>と出会った日の夜。
深夜0時はとうに過ぎ、2時をまわった頃だろうか。

オレ、仲河光輝なかがわこうきが拠点の一軒家から転移した先は・・・・街の中心、中央神殿や冒険者ギルド、迷宮の近くの路地裏だ。

この世界は寝静まるのが早い。娼館街の方は魔道ランプが点灯しているが、それ以外の場所は真っ暗である。

闇夜に紛れながら、かすかな明かりを頼りに、素早く移動する。
目指すは・・・・・・・この街最大の神殿、中央神殿だ。

今日、ベルタに聞いていてからずっと思っていた。
この街に<アルフレッド>がいるなら、<アルフレッド>の愛馬として有名な<白い馬>もその近くにいるんじゃないかと。

<ベルタ>の<命令>のせいで、<白い馬>と喋ることは出来なかったが、昨日の<アルフレッド>襲撃の場所にもいたし、<アルフレッド>は白い馬と一緒にこの迷宮都市アッシドに来たと、<ベルタ>自身が言っていたのだから。

ならきっと・・・・・・いや、いまも確実に近くにいるだろう。

<アルフレッド>は中央神殿にいると、ベルタは言っていた。
つまりは・・・<白い馬>もそこにいる可能性が高いとういことだ。

オレが元の世界に戻るために、女神に課せられた課題は1つだ。
世界の崩壊を防ぐために<ルナリア帝国の玉座であるを起動させる>こと。

そして、その課題達成のために、この世界に来た当初に、オレが・・・・
オレ自身に課した項目は4つだった。


・第一に玉座の位置を正確に把握すること。
・第二に<現在の加護持ち>と<白い馬>を見つけること。
・第三に<白い馬>にこの<一つの案>が問題ないかを聞くこと。
・第四に、問題がなかった場合は、<加護持ち>にこの協力を依頼して玉座を起動すること。

もし問題があった場合は・・・・もう一度、別の方法を検討すること。


いまオレは・・・ルナリア帝国皇帝である<イグナシオ・ルナリア3世>より、3年以内に4人を暗殺しろと言われている。

だが・・・その期限内に女神の課題を達成さえすれば、暗殺をする必要もなくなる。なぜなら理奈のいる<元の世界>に帰れるのだから。

この<隷属の腕輪>の呪縛がどこまで通じるか分からないが、女神の力より強いということはおそらくないだろうし、もしあったとしても<元の世界>で効力を発するとは思えない。

だから・・・・<隷属の腕輪>なんてものに縛り付けられていても、いや、縛り付けられているからこそ、オレの優先項目に変わりはしないということだ。

課題達成の期限が、出来るだけ早くから・・・・3年以内・・・になっただけ。

第一の項目は、もう叶っている。
玉座の場所は<最初の命令>をルナリア帝国皇帝に課されたときに確認した。

次は第二の項目である。

まずは・・・・<現在の加護持ち>について。
これに関しては居場所は分からないが、その人物の名前と・・・どのような人となりかは、ルナリア帝国皇帝から教えられて、知っている。

A級冒険者<アルフレッド・ブラッドレイ>、公爵家長子<フレデリック・フランシス>と同じように、オレの4人の暗殺対象のうちの一人だからだ。むしろルナリア帝国皇帝からしたら<メイン>の暗殺対象者といえる。

そして<白い馬>は・・・・オレの推測が正しければ・・・・・・・この先にいる。

もしこの先で<白い馬>に出会えれば、第三の目的、「白い馬にこの<一つの案>が問題ないかを聞く」もすぐに達成するだろう。

オレをここに送り付けた女神が言っていたのだから。

「<白い馬>は私の力の一部を譲渡している、いわゆる<精霊>と呼ばれる<私の分体>なんだ」

・・・・と。そして、

「<勇者>と<聖女>、それから<加護持ち>なら、<白い馬>と簡単な意思疎通はできるから、詳しくは彼らに聞けば何とかなると思う」

・・・・と。

だから、オレが女神カトレアに召喚された勇者だと分かれば、きっと・・・・オレの質問に答えてくれるはずだ・・・・・・オレが、自分の<主>を斬った男だとしても・・・・・。

そこまで想像して、イヤな汗が頬をつたう。
・・・<アルフレッド>の<白い馬>に、返答を拒否されたときのことを想像してしまったのだ。

<女神の分体>というからには、意識は女神と繋がっているようなものだと、実際目にするまで思っていたが・・・・昨日会った<白い馬>はどうだっただろうか?

昨日、アルフレッドをオレが斬り伏せたときの<白い馬>の表情や<セリフ>は・・・・・オレを召喚した女神とは・・・・・別の個体のような印象を受けた。

だとしたら・・・・・・オレを拒絶する可能性は・・・・否定できないだろう。もしいまから会おうとしている<白い馬>に拒絶をされたら・・・・・と、そこまで考えて、一度右手をこめかみに置き、息を吐きだす。

いろいろな想像が駆け巡るが・・・・それは、後回しにしたほうがいいだろう。
いまやることは決まっているのだから。

中央神殿の近くまで到着すると、正面扉を無視し、人通りがないことをざっと目線で確かめて、側面の壁を駆け上る。


ストッと軽快な音を鳴らしながら、地面に着地する。
難なく中に侵入ができた。

周りに気配がないことを確認し、<馬>というからには厩舎にいるだろう、とあたりをつける。

この世界に来てから、様々な宿屋、王城等を見てきたが、厩舎は「南東側」にあることが多かった。

恐らくここもそうだろうと当たりをつけ、周囲を警戒しながら歩を進める。

出来るだけ、気配を消すよう努める。

サポート特化型のキャラクターである<サムド>の<気配遮断>は本気を出せば、ゲーム世界のランキング上位キャラクターでも見破るのは、難しかった。

だから・・・・大丈夫だろうが・・・・・慢心せずに警戒する。

なぜならこの中には、夕方に会ったオレを殺そうとしている少女である、あの<レティシア・フランシス>がいるから。

そうして、厩舎を目の端にとらえ、安堵の息をついたとき・・・・・・首元からガチャっという音が聞こえた。

・・・・・首元から伝わる金属質な・・・・・感触。

明らかに首元に剣を突き付けられている。

この世界で・・・<チート>とも呼べるようなオレの<サムド>の能力に感づかれずに・・・・こんなことが出来る人物など限られる。

先ほど思い浮かべていた<レティシア・フランシス>の顔が思わず、浮かぶ。

この状態では、転移魔法も使おうとした瞬間に、斬られて終わりだ。

絶体絶命のピンチ・・・・・・。
どう切り抜けるか高速で頭を巡らしながら・・・とりあえず、音がする方向に目線を向けた。

そこには、思わぬ人物がいた・・・・・。


「あ”ぁ?・・・お前・・・・またオレを斬りに来たのかよ?」


そう言って嬉しそうに、にやりと笑うのは、<アルフレッド・ブラッドレイ>。

<白い馬>の主で、昨日・・・いや、一昨日俺によって斬られ、重傷を負ったはずの人物だった。
しおりを挟む
感想 47

あなたにおすすめの小説

公爵家の秘密の愛娘 

ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝🌹グラント公爵家は王家に仕える名門の家柄。 過去の事情により、今だに独身の当主ダリウス。国王から懇願され、ようやく伯爵未亡人との婚姻を決める。 そんな時、グラント公爵ダリウスの元へと現れたのは1人の少女アンジェラ。 「パパ……私はあなたの娘です」 そう名乗り出るアンジェラ。 ◇ アンジェラが現れたことにより、グラント公爵家は一変。伯爵未亡人との再婚もあやふや。しかも、アンジェラが道中に出逢った人物はまさかの王族。 この時からアンジェラの世界も一変。華やかに色付き出す。 初めはよそよそしいグラント公爵ダリウス(パパ)だが、次第に娘アンジェラを気に掛けるように……。 母娘2代のハッピーライフ&淑女達と貴公子達の恋模様💞  ✴️設定などは独自の世界観でご都合主義となります。ハピエン💞 ✴️稚拙ながらもHOTランキング(最高20位)に入れて頂き(2025.5.9)、ありがとうございます🙇‍♀️

村娘になった悪役令嬢

枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。 ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。 村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。 ※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります) アルファポリスのみ後日談投稿しております。

久しぶりに会った婚約者は「明日、婚約破棄するから」と私に言った

五珠 izumi
恋愛
「明日、婚約破棄するから」 8年もの婚約者、マリス王子にそう言われた私は泣き出しそうになるのを堪えてその場を後にした。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

今日も学園食堂はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。

柚ノ木 碧/柚木 彗
恋愛
駄目だこれ。 詰んでる。 そう悟った主人公10歳。 主人公は悟った。実家では無駄な事はしない。搾取父親の元を三男の兄と共に逃れて王都へ行き、乙女ゲームの舞台の学園の厨房に就職!これで予てより念願の世界をこっそりモブ以下らしく観賞しちゃえ!と思って居たのだけど… 何だか知ってる乙女ゲームの内容とは微妙に違う様で。あれ?何だか萎えるんだけど… なろうにも掲載しております。

ヒロイン不在だから悪役令嬢からお飾りの王妃になるのを決めたのに、誓いの場で登場とか聞いてないのですが!?

あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
ヒロインがいない。 もう一度言おう。ヒロインがいない!! 乙女ゲーム《夢見と夜明け前の乙女》のヒロインのキャロル・ガードナーがいないのだ。その結果、王太子ブルーノ・フロレンス・フォード・ゴルウィンとの婚約は継続され、今日私は彼の婚約者から妻になるはずが……。まさかの式の最中に突撃。 ※ざまぁ展開あり

処理中です...