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第3章 入団までの1年間(2)、帝国の陰謀とグラナダ迷宮
76:神官見習いジャックの諦観<閑話>
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やぁ!オレの名前はジャック。迷宮都市アッシドで神官見習いをしている将来有望な男である。
いまは彼女ができる気配は全くないけど、そう、きっと・・・近い将来、可愛い彼女が出来る予定の男でもある。
なぜなら実は・・・・今夜、なんと友人が開催する男女混合飲み会(いわゆる合コン)があるから!
まぁ、そんなオレだが、今日はちょっと困った事態に直面している。
オレの勤め先である中央神殿。
そこで一番偉いのは、高位神官である<エリアス>様だ。
彼は若干12歳にしてその座に就いたいわゆる天才児。
いつも彼は、彼が大好きなクラーラという女性神官見習いを補佐役に仕事をしているんだけど、今日に限って・・・なぜか、わざわざ彼女を別の神官の補佐役に指名した(正確には昨日かららしいけど)。
そして・・・・オレを自分付きの補佐役に指名したんだ。
なにやら面倒な事態に巻き込まれそうな気配を感じているオレ。
だって、エリアス様はクラーラ関連で不機嫌になると、すごい量の残業を部下にさせるから・・・!
今日はすでにオレ自身が1回クラーラに話しかけられているから、もうすでに残業確定の大ピンチだ。
しかし、仕事を放棄するわけにはいかない。
イヤな予感を感じつつも、エリアス様の後ろについていく。
きょう最初の仕事は、朝の回診だ。
高位神官であるエリアス様の担当する部屋は、重症患者のいる病室。
この部屋には、イェルクというB級冒険者と、一昨日の夕方、瀕死で運び込まれたアルフレッドというA級冒険者が入院している。
オレは、ノックをして「朝の回診です」と声をかけてから、扉をあける。
そして、扉を開けて・・・納得した。
扉を開けた先には、普通のひげ面男と・・・・もう1人・・・・とんでもない美形の青年がいたのだ。
「あ”?もうそんな時間か・・・・」
美形の青年が声を発する。少し口は悪い気もするが、重低音に響く声音。
男のオレでも大人の色香満載だと感じる。
エリアス様もとんでもない美形ではあるのだが、いかんせん12歳の少年だ。
観察していると、肝心のクラーラからは、アプローチしているのに全く相手にされず弟扱いをされている。完全に恋愛対象として見られていない。
そんな中・・・・こんなとんでもない美形が目の前に現れたら・・・エリアス様なら強敵だと思って、警戒するのは当然だ。
(もしクラーラが惚れでもしたら、大変だもんな)
原因が分かってホッとする。
昨日からクラーラの担当を変えたということは、この美形男は、イェルクではなく、一昨日来たばかりのアルフレッドの方だろうと当たりをつける。
朝からエリアス様は不機嫌だったが・・・・クラーラをこの美形男・アルフレッドにさえ近付けなければ、これ以上不機嫌になることはないだろう、とオレは結論付けた。
ちょっとの残業なら、男女混合飲み会(いわゆる合コン)になんとか間に合うが・・・深夜まで及ぶ残業は、さすがに間に合わない!
(不機嫌になって、仕事を増やされたんじゃ・・・たまらない。どうにかご機嫌をとって、早く仕事を終える方向にしなくては・・・・!)
内心でそうオレが決意していると、エリアス様が病室を見回しつぶやいた。
「あなたたち2人だけですか?」
「あ”あ、見たらわかんだろ?」
「アル!治してくださる神官様になんて口を・・・・!!ほ、本当、すみません!!」
美形の青年の言動を、なぜか同室のひげ面の男が、謝る。
同じ冒険者だし、元々知り合いなのかもしれない・・・・・・・。
「それより、オレは今日、退院したいんだ。治ってると思うから、早く見てくれ」
(いやいやいや、そんなわけないだろう!!)
「いやいや、アル・・・お前なぁ!」
美形男がとんでもないことを言いだした。
一昨日瀕死の重傷を負っていた人がそんな早く治るはずがない。
同室のひげ面さんも呆れ顔じゃないか。
エリアス様は確かに素晴らしい高位の回復魔法の使い手だ。だけど・・・・それでも瀕死の重傷からハイポーションを併用しても、退院できるレベルになるのには・・・・・いままでの最短記録でさえ10日。完全に治るまでには1か月はかかった。
ありえない。・・・なのに、エリアス様はなぜか目をキラキラさせて、アルフレッドの方にずんずんと近づいていった。
「本当ですか・・!?信じられない!あのエアロとかいう風魔法!昨日、見た限りでも強力な治癒効果があると思ったが・・・・予想以上の効果が?
すぐ見せてください?・・・・失礼!」
そう興奮しながら、エリアス様はサッと美形青年・アルフレッドのシャツをめくった。
「我は天の理の声に重ねる魔の力・・・アープラ。
信じられない・・・!本当に治ってる!!!しかも、退院レベルまでの回復じゃなく・・・・完全に回復している・・・・・!!
これは・・・すごい!!!」
(はぁ?そんなバカな)
エリアス様の魔法による診断を疑うわけではないが、そんな超回復させられる存在なんて、過去にこの世界に召喚されたという伝説の勇者様や聖女様くらいしか聞いたことがない。
「え・・・ぇえええええ!?でも、オレもフレデリックさ・・・・いやフレドくんにエアロをかけてもらいましたけど、治った感じはありませんよ?まぁ、多少良くなった気はしますが・・・!!」
「ん~、<我は天の理の声に重ねる魔の力・・・アープラ>。確かにイェルクさんも少し回復してますが、いつもより早い程度の回復ですね。
人によって効果が違うんでしょうか?それとも、病状や魔法をかける回数によって・・・・?
興味深いですね・・・・ここに長居をさせたくはないですが・・・・魔法を使ったフレデリックさんに何度か協力をしてもらって効果を検証しましょうか・・・・」
なんだかエリアス様が真剣にぶつぶつと考察しているが、話がよく見えない。
とりあえず、フレデリックという人の魔法がこの奇跡の様な事態を巻き起こしたということなのだろうか・・・・・・・?
「あ”あ?まぁ、とにかくオレは治ったから退院できるんだな?」
「ああ、そうですね。ジャック、退院許可証を」
「あっ、はい」
エリアス様に声をかけられて、慌てて持っていた書類の束から退院許可証を引っ張り出す。担当神官であるエリアス様のサインつきのこの書類があれば、神殿の受付で退院手続きができるのだ。
「じゃあな、イェルク。神官サマたちも世話になったな」
「えっ、おい!・・・アルッ!!!」
サインした書類を受け取ると、ベッドわきにあった大量の荷物と剣を抱え、颯爽と病室を出ていく美形青年。
さすがA級冒険者というべきか、すさまじい速さだ。もう足音も聞こえないくらい遠くに行っていた。
エリアス様もその素早い行動を予見できなかったのか、目を見開いている。
「あなた・・・・フレデリックさんは、いまどこにいるか知ってますか?」
「え?ああ・・・朝食を食べに神殿の食堂に行くと言ってましたよ・・・・」
「なら、まだ間に合いそうですね。彼には、風魔法エアロの治癒効果について調査協力依頼をしなくては。ジャック!」
「は・・・はい!」
そうして、フレデリックという人物を探しに行こうとする、エリアス様に続いて、急いでオレは病室を出る。
しかし、そのフレデリックがいるという食堂へ行く途中にある神殿の回廊。
そこで、エリアス様はピタッと、足を止めた。
いぶかしげに、エリアス様の目線の先を見る・・・・・。
目の前には、先ほどの美形青年以上の・・・思春期特有の危うげな美貌を持った少年が歩いていた。
なんというか背丈から少年だというのは分かるのだが、エリアス様と違って、雰囲気がものすごく大人っぽい。
・・・・同性にもかかわらず、思わず目を奪われてしまうほどだ。
そして、その10メートルほど離れた別の回廊から、オーディン様と一緒にいる<クラーラ>が、その少年を・・・・頬を染めて見つめていた。
その光景を見た瞬間・・・・・・・オレは悟ったね。
あっ今日、深夜残業確定だって。
目の前を歩いていたエリアス様は不機嫌な顔を隠さず、少年のいる食堂へと続く回廊ではなく、クラーラのいる回廊の方へと方向を変え、もう然と歩き出した。
どうやらオレに彼女が出来るのは・・・・もう少し先らしい。
-----------------------------
<補足メモ>アルフレッドが全回復したのは、エアロのせいじゃなく、光輝の回復魔法のおかげ・・・。
いまは彼女ができる気配は全くないけど、そう、きっと・・・近い将来、可愛い彼女が出来る予定の男でもある。
なぜなら実は・・・・今夜、なんと友人が開催する男女混合飲み会(いわゆる合コン)があるから!
まぁ、そんなオレだが、今日はちょっと困った事態に直面している。
オレの勤め先である中央神殿。
そこで一番偉いのは、高位神官である<エリアス>様だ。
彼は若干12歳にしてその座に就いたいわゆる天才児。
いつも彼は、彼が大好きなクラーラという女性神官見習いを補佐役に仕事をしているんだけど、今日に限って・・・なぜか、わざわざ彼女を別の神官の補佐役に指名した(正確には昨日かららしいけど)。
そして・・・・オレを自分付きの補佐役に指名したんだ。
なにやら面倒な事態に巻き込まれそうな気配を感じているオレ。
だって、エリアス様はクラーラ関連で不機嫌になると、すごい量の残業を部下にさせるから・・・!
今日はすでにオレ自身が1回クラーラに話しかけられているから、もうすでに残業確定の大ピンチだ。
しかし、仕事を放棄するわけにはいかない。
イヤな予感を感じつつも、エリアス様の後ろについていく。
きょう最初の仕事は、朝の回診だ。
高位神官であるエリアス様の担当する部屋は、重症患者のいる病室。
この部屋には、イェルクというB級冒険者と、一昨日の夕方、瀕死で運び込まれたアルフレッドというA級冒険者が入院している。
オレは、ノックをして「朝の回診です」と声をかけてから、扉をあける。
そして、扉を開けて・・・納得した。
扉を開けた先には、普通のひげ面男と・・・・もう1人・・・・とんでもない美形の青年がいたのだ。
「あ”?もうそんな時間か・・・・」
美形の青年が声を発する。少し口は悪い気もするが、重低音に響く声音。
男のオレでも大人の色香満載だと感じる。
エリアス様もとんでもない美形ではあるのだが、いかんせん12歳の少年だ。
観察していると、肝心のクラーラからは、アプローチしているのに全く相手にされず弟扱いをされている。完全に恋愛対象として見られていない。
そんな中・・・・こんなとんでもない美形が目の前に現れたら・・・エリアス様なら強敵だと思って、警戒するのは当然だ。
(もしクラーラが惚れでもしたら、大変だもんな)
原因が分かってホッとする。
昨日からクラーラの担当を変えたということは、この美形男は、イェルクではなく、一昨日来たばかりのアルフレッドの方だろうと当たりをつける。
朝からエリアス様は不機嫌だったが・・・・クラーラをこの美形男・アルフレッドにさえ近付けなければ、これ以上不機嫌になることはないだろう、とオレは結論付けた。
ちょっとの残業なら、男女混合飲み会(いわゆる合コン)になんとか間に合うが・・・深夜まで及ぶ残業は、さすがに間に合わない!
(不機嫌になって、仕事を増やされたんじゃ・・・たまらない。どうにかご機嫌をとって、早く仕事を終える方向にしなくては・・・・!)
内心でそうオレが決意していると、エリアス様が病室を見回しつぶやいた。
「あなたたち2人だけですか?」
「あ”あ、見たらわかんだろ?」
「アル!治してくださる神官様になんて口を・・・・!!ほ、本当、すみません!!」
美形の青年の言動を、なぜか同室のひげ面の男が、謝る。
同じ冒険者だし、元々知り合いなのかもしれない・・・・・・・。
「それより、オレは今日、退院したいんだ。治ってると思うから、早く見てくれ」
(いやいやいや、そんなわけないだろう!!)
「いやいや、アル・・・お前なぁ!」
美形男がとんでもないことを言いだした。
一昨日瀕死の重傷を負っていた人がそんな早く治るはずがない。
同室のひげ面さんも呆れ顔じゃないか。
エリアス様は確かに素晴らしい高位の回復魔法の使い手だ。だけど・・・・それでも瀕死の重傷からハイポーションを併用しても、退院できるレベルになるのには・・・・・いままでの最短記録でさえ10日。完全に治るまでには1か月はかかった。
ありえない。・・・なのに、エリアス様はなぜか目をキラキラさせて、アルフレッドの方にずんずんと近づいていった。
「本当ですか・・!?信じられない!あのエアロとかいう風魔法!昨日、見た限りでも強力な治癒効果があると思ったが・・・・予想以上の効果が?
すぐ見せてください?・・・・失礼!」
そう興奮しながら、エリアス様はサッと美形青年・アルフレッドのシャツをめくった。
「我は天の理の声に重ねる魔の力・・・アープラ。
信じられない・・・!本当に治ってる!!!しかも、退院レベルまでの回復じゃなく・・・・完全に回復している・・・・・!!
これは・・・すごい!!!」
(はぁ?そんなバカな)
エリアス様の魔法による診断を疑うわけではないが、そんな超回復させられる存在なんて、過去にこの世界に召喚されたという伝説の勇者様や聖女様くらいしか聞いたことがない。
「え・・・ぇえええええ!?でも、オレもフレデリックさ・・・・いやフレドくんにエアロをかけてもらいましたけど、治った感じはありませんよ?まぁ、多少良くなった気はしますが・・・!!」
「ん~、<我は天の理の声に重ねる魔の力・・・アープラ>。確かにイェルクさんも少し回復してますが、いつもより早い程度の回復ですね。
人によって効果が違うんでしょうか?それとも、病状や魔法をかける回数によって・・・・?
興味深いですね・・・・ここに長居をさせたくはないですが・・・・魔法を使ったフレデリックさんに何度か協力をしてもらって効果を検証しましょうか・・・・」
なんだかエリアス様が真剣にぶつぶつと考察しているが、話がよく見えない。
とりあえず、フレデリックという人の魔法がこの奇跡の様な事態を巻き起こしたということなのだろうか・・・・・・・?
「あ”あ?まぁ、とにかくオレは治ったから退院できるんだな?」
「ああ、そうですね。ジャック、退院許可証を」
「あっ、はい」
エリアス様に声をかけられて、慌てて持っていた書類の束から退院許可証を引っ張り出す。担当神官であるエリアス様のサインつきのこの書類があれば、神殿の受付で退院手続きができるのだ。
「じゃあな、イェルク。神官サマたちも世話になったな」
「えっ、おい!・・・アルッ!!!」
サインした書類を受け取ると、ベッドわきにあった大量の荷物と剣を抱え、颯爽と病室を出ていく美形青年。
さすがA級冒険者というべきか、すさまじい速さだ。もう足音も聞こえないくらい遠くに行っていた。
エリアス様もその素早い行動を予見できなかったのか、目を見開いている。
「あなた・・・・フレデリックさんは、いまどこにいるか知ってますか?」
「え?ああ・・・朝食を食べに神殿の食堂に行くと言ってましたよ・・・・」
「なら、まだ間に合いそうですね。彼には、風魔法エアロの治癒効果について調査協力依頼をしなくては。ジャック!」
「は・・・はい!」
そうして、フレデリックという人物を探しに行こうとする、エリアス様に続いて、急いでオレは病室を出る。
しかし、そのフレデリックがいるという食堂へ行く途中にある神殿の回廊。
そこで、エリアス様はピタッと、足を止めた。
いぶかしげに、エリアス様の目線の先を見る・・・・・。
目の前には、先ほどの美形青年以上の・・・思春期特有の危うげな美貌を持った少年が歩いていた。
なんというか背丈から少年だというのは分かるのだが、エリアス様と違って、雰囲気がものすごく大人っぽい。
・・・・同性にもかかわらず、思わず目を奪われてしまうほどだ。
そして、その10メートルほど離れた別の回廊から、オーディン様と一緒にいる<クラーラ>が、その少年を・・・・頬を染めて見つめていた。
その光景を見た瞬間・・・・・・・オレは悟ったね。
あっ今日、深夜残業確定だって。
目の前を歩いていたエリアス様は不機嫌な顔を隠さず、少年のいる食堂へと続く回廊ではなく、クラーラのいる回廊の方へと方向を変え、もう然と歩き出した。
どうやらオレに彼女が出来るのは・・・・もう少し先らしい。
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